お兄さんの家は裏通りの公園に面した年季の入った2階建アパートの2階の1室で、部屋に入って行った後も僕は公園のベンチに座って玄関横の曇りガラスの小窓を眺めながら悶々としていた。ふとドアが開き、顔を出したお兄さんはTシャツにハーパン姿で、玄関脇の洗濯機に衣類を投げ入れた。薄暗くて何を入れたのかは分からなかったけど、もしかしたらと思うと僕はいてもたってもいられなかった。
足音を立てないように階段を登り廊下を進み、窓の曇りガラスの向こうの気配を伺いながらそっと洗濯機の蓋を開ける。あった。シャツや靴下と共にしわくちゃのトランクスが無造作に放り込まれていた。僕はそれを掴むと一目散に階段を駆け下り、公園の公衆トイレの個室に駆け込んだのだった。