Page 3311 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 通常モードに戻る ┃ INDEX ┃ ≪前へ │ 次へ≫ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ▼後輩との関係29 優 06/12/6(水) 20:43 ┣Re(1):後輩との関係29 シンヤ 06/12/7(木) 2:05 ┣後輩との関係30 優 06/12/7(木) 19:52 ┃ ┣Re(1):後輩との関係30 空也 06/12/8(金) 3:26 ┃ ┗Re(1):後輩との関係30 みかど 06/12/8(金) 4:25 ┣後輩との関係31 優 06/12/9(土) 9:56 ┣後輩との関係31-2 優 06/12/9(土) 9:59 ┣後輩との関係32 優 06/12/10(日) 1:00 ┃ ┗Re(1):後輩との関係32 みかど 06/12/10(日) 5:45 ┣後輩との関係33 優 06/12/10(日) 17:23 ┃ ┗Re(1):後輩との関係33 空也 06/12/10(日) 20:09 ┣後輩との関係34 優 06/12/10(日) 23:47 ┃ ┣Re:後輩との関係34 空也 06/12/11(月) 2:43 ┃ ┗Re(1):後輩との関係34 みかど 06/12/11(月) 3:46 ┣Re(1):後輩との関係29 ひろ 06/12/11(月) 1:45 ┣後輩との関係35−1 優 06/12/11(月) 19:18 ┃ ┗後輩との関係35−2 優 06/12/11(月) 19:34 ┃ ┣Re(1):後輩との関係35−2 空也 06/12/12(火) 1:43 ┃ ┗Re(1):後輩との関係35−2 みかど 06/12/12(火) 2:13 ┣Re(1):後輩との関係29 とも 06/12/12(火) 1:55 ┣コメントへの返信です。 優 06/12/12(火) 20:17 ┃ ┣Re(1):コメントへの返信です。 エイト 06/12/12(火) 23:00 ┃ ┣Re(1):コメントへの返信です。 みかど 06/12/13(水) 14:35 ┃ ┗Re(1):コメントへの返信です。 優 06/12/13(水) 20:02 ┣後輩との関係36 優 06/12/12(火) 20:27 ┣後輩との関係37 優 06/12/13(水) 19:58 ┃ ┗Re(1):後輩との関係37 みかど 06/12/14(木) 3:43 ┣後輩との関係38 優 06/12/14(木) 18:22 ┃ ┣Re(1):後輩との関係38 空也 06/12/14(木) 20:37 ┃ ┣Re(1):後輩との関係38 そら 06/12/15(金) 1:42 ┃ ┣Re(1):後輩との関係38 とも 06/12/15(金) 2:08 ┃ ┣Re(1):後輩との関係38 みかど 06/12/16(土) 4:24 ┃ ┗Re(1):後輩との関係38 あつし 06/12/16(土) 19:27 ┣後輩との関係39 優 06/12/16(土) 20:35 ┃ ┗Re(1):後輩との関係39 たっつん 06/12/16(土) 22:40 ┣後輩との関係40 優 06/12/16(土) 23:18 ┃ ┣Re(1):後輩との関係40 空也 06/12/17(日) 15:38 ┃ ┗Re(1):後輩との関係40 リビドー 06/12/17(日) 16:03 ┗後輩との関係41 優 06/12/17(日) 16:31 ┣Re(1):後輩との関係41 あつし 06/12/18(月) 20:50 ┣Re(1):後輩との関係41 みかど 06/12/18(月) 21:10 ┣Re(1):後輩との関係41 空也 06/12/19(火) 3:06 ┗Re(1):後輩との関係41 りょーた 06/12/19(火) 16:45 ─────────────────────────────────────── ■題名 : 後輩との関係29 ■名前 : 優 ■日付 : 06/12/6(水) 20:43 -------------------------------------------------------------------------
| 遅くなって申し訳ないです・・・。もし、まだ読んでやるよというかたがいらっしゃいましたら読んでやってください><えっと、これからは毎日1話ずつアップしていこうと思っています。多分今年中に終われると思います。では、続きです。 恍惚とした元晴を見下ろし快楽の余韻に浸っていると、カツンカツンと乾いたアスファルトの上を駆ける音がした。 とろけていた元晴がハッと息を飲むのがわかる。 俺は、別に人に見られたって構わない、むしろ見せ付けてやりたいと思う一方で、何者にも元晴を晒したくないというキリキリとした独占欲が胸を回遊しているのを感じた。 その音は段々と小さくなり、やがて、消えた。 やや冷えた互いの躰を、柔らかい春の夜風が優しく包み込む。 俺は元晴の傍に膝まづくと、そっと手を伸ばしてその背中を抱きしめた。まるで綿菓子でも抱くように、優しく優しく自身の胸に元晴の体をくるみこむ。 「好きだぜ・・・・・・。」 静かに、だがしっかりと告げた。 ゆっくりと、だけど確かに、元晴がコクンと頷くのが俺の胸を通して伝わった。 俺は、その思いを包み込むように温かなその躰を抱きしめた。 しばらく抱き合った後、俺と元晴は身なりを整え、その場を後にした。 途中、今にも落ちて来そうな星空を見上げた俺は何故だか空っぽの手がどうしようもないほどに心寂しく感じられ、横に並んで歩いている元晴の手を取った。その温かさに不意に目頭が熱くなったが、俺は唇を噛み締め何とかそれをやり過ごした。 どこか切なげな星空が僕を見下ろしていた。暗闇という深淵とともに。 翌日は待ちに待った入学式だった。 新一年生は新たに始まる生活に胸を弾ませていることだろう。二年前は俺もその一人だったんだから驚きだ。時が経つのは速い。 ただ、去年と違っていたのは、柄にも無く俺までワクワクしていることだった。玄関をくぐるときセンコーが何人か立っていたけれど、ついつい朗らかに挨拶しちまったほどだ。すこぶる気分がいい。 何故そんなに気分が良いかというと、前にも話したが今年元晴の弟がこの学校に入学するからである。 何度か元晴の家に行ったことはあるが、一度も弟と逢うことがなかったのだ。元晴にどんな奴なのか訊いても、「そのうちわかりますよ」と気のない答えが返ってくるだけだった。 それじゃあ逢ってもわからないじゃないか、と思った俺は好き勝手に元晴の弟を想像することにした。元晴の弟なんだから、ちょうど一年前、つまり入学した頃の元晴がもっと小さく可愛くなった感じなんじゃないかと安直に考えた。しかし、兄弟っていうモンは片方が容姿に優れていると、もう片方の容姿はあまりよろしくないことが多い。アイドルの兄弟なんかを見れば大半はそうなんじゃないだろうか。でも、元晴の弟なんだから必ず可愛いはずだ!!と何の根拠も無しにそう思うことにした。 そんな呑気な俺は、脳天気に今朝聴いた洋楽を口笛で吹き、小さくスキップしながら教室に飛び込んだ。 「おはよーっ。机に突っ伏してどうしたんだよー?」 自分の席に荷物を置き、俺は隣の机に突っ伏している夏姫にこれまた朗らかに挨拶した、が、顔を上げた夏姫の眼を見てギョッとした。 「おい!どうしたんだよその眼?!」 「・・・・・・」 だが、夏姫は何も答えず、明らかに昨晩大泣きしたことがわかるその真っ赤に染まった眼でキリッと俺を睨み付けてきた。思わず後退りしそうになる。夏姫のそんな眼を見たのは久しぶりだった。こいつは昔から俺が泣くようなことでも滅多に泣かなかった。 「なんだよ、なんか俺がしたのか?なんか答えてくれよ」いっこうに答えようとしない夏姫の沈黙が非常に居心地が悪く、馬鹿な俺は要らぬ軽薄な言葉を発した。 「ああ、俺の顔に見惚れてんのか?」 じわっと夏姫の眼が濡れゆらゆらと揺れ始めた、その時。夏姫がガタッと立ち上がり、唇を真っ直ぐに結び、再び俺をキリッと睨みつけた。 「バカッ!!」 言い放つが早いか教室を飛び出すが早いか、夏姫は手で眼を抑えながら教室を飛び出していった。 俺はその震える背中を当惑しながらただ呆然と見つめているだけだった。 シーンとなった教室に登校してきた直樹のバカみたいに明るい声が響き渡った。 「はよーっ、さっきさ・・・ぁ・・・」 直樹は敏感に教室の異様な雰囲気を感じ取り口を閉じた。そして、呆然と出入り口を見つめている俺に気付き、俺のもとに来て嘆息を漏らした。 「もしかして、夏姫と関係あんの?なんか泣いてたけど。」 入学式は各クラス横並びで整列して行われた。 俺は、入場してくる新入生を見たいがためにクラスで一番背の低い後藤に頼んで特等席を譲ってもらった。本来なら絶対座りたくない場所なんだけど。 一人じっくりと元晴の弟を探そうと思ったのに、俺をいつも弄くってくるウザったい奴がドスンと隣に座った。 「なんだなんだ、かわい子ちゃんチェックか?」と、しつこくストーキング行為をする直樹が俺を探るように見て言った。 俺はそんな直樹をシカトして新入生が入場してくるのを待った。頭の中で先程の出来事を反芻する。 (なんで俺が馬鹿呼ばわりされなきゃいけないんだろう。そもそも夏姫を怒らせるようなことをした覚えが全くない。ったく、意味わかんねぇーよ。まぁそっとしとくのが一番か、理由もわからないことを考えても仕方がないし。) しばらくすると、あれこいつ誰だっけ?と皆が思うほど影の薄い教頭の司会で新入生が入場してきた。 本当は拍手をしなければならなかったらしいが、そんなことは忘却のかなただった。一人一人の顔を真剣に見ていった。 新たな生活に期待を抱く晴々とした奴。緊張からかわずかに顔を強張らせてる奴。数百人の上級生に見つめられるのが恥ずかしいのか俯いて体育館の木目を見ている奴。ほんと様々だ。 しかし、いっこうに元晴の弟らしき奴は見つからなかった。 (はぁ、もしかして全然可愛くないのかな・・・) と、半分諦めてがっくりと項垂れている俺の肩を直樹がバシバシと叩いた。 「おい、ちょっと見てみろよっ」 俺が顔を上げると、向かい側に列を作る女子達が騒々しく色めき立っていた。 何事かと思い、膝立ちになり直樹が見るほうに目を走らせた。 俺は、上級生に挟まれた通路を胸を張って歩く奴を見て愕然とした。 そいつは、周りの新入生から頭一つ抜け出すスラリとした長身、遠くからでもわかる綺麗な二重なのだが、ちょっときつい目をした、気の強そうな顔つき。無造作に切りそろえられた長めのさらりとした髪。つんと尖ったスラリとした鼻。きりっと結んだ形の良い唇。 新一年生とは到底思えない雰囲気を醸し出しながらゆっくりと歩いてくる。15m、10m・・・・・・。距離が縮まるにつれてその端正な姿に釘付けになる。 そいつは、三年男子のほうを流し見ていた。そして、俺のところでピタッと止まり、鋭い眼差しで真っ直ぐ見つめてきた。 視線と視線とが絡み合う。鎖で縛られたかのようにこいつから眼が離せない。 その線の間には静かで不思議な空間が出来上がる。 だが、突然その鎖は断ち切られた。 あいつは、俺を見つめながらその気の強そうな顔を満面の笑みで破顔した。 それはただの笑顔ではなく、親しい友人や彼女に送るような、そんな類の特別な笑顔だった。 俺は通り過ぎたそいつの背中を呆然と見つめながら、耽美の美少年って言葉はあいつのためにあるのかもしれないと恍惚として思った。 キャーキャーと言っている女子のキーンとするはずの声が、俺の知らないどこか遠く離れた地から聞こえているかのようにぼやけていた。 「・・・・・・おい、聞いてんのか?」 直樹に再度肩を叩かれ我に返り振り返った。 「・・・え、あぁごめん。なに?」 「すっげぇーかっこいいなあいつって言ったんだよ」と直樹はそこで言葉を区切り、心底不思議そうな顔をして訊ねてきた。「お前のこと見てたけど知り合いか?」 俺は、知らないとだけ答えた。だが、咽喉で何か引っ掛かる異物感を感じた———そう、もうここまで出かかっているのだが。 |
| 待ってましたっ!! 毎日楽しみにしてますねっ☆ がんばってくださいっヽ(^▽^)ノ |
| シンヤさんコメントありがとうございます!毎日更新出来るように頑張ります!!エッチまで気長に待っててください>< 『あいつは誰なんだろう?』 俺とあいつとの間で断ち切られた鎖の断片が、未だ俺の身体に付着しているような気分だった。 授業の内容なんてすっかり頭に入ってこなかった。そもそも俺は授業を受けていたんだろうか・・・・・・。 クラスの奴と話していても、心ここに在らずと言った感じでぼーっとしていたら何度も頭を叩かれるはめになってしまった。 脳裏に焼きついたあいつの鋭い眼が浮かぶ、あのきりっとした端正な顔が浮かぶ。 だが、何よりも強烈な印象を残したのはあの艶然だった。 そう、あれはどこかで見たことがある。柔らかな春風が心を包み込むような、そんな心地よさを持っていた。 だが、それは恋愛感情とかそんなんじゃない。“何か”近いものを感じた。ただそれだけだった。 いい加減馬鹿らしくなって、俺はそこで考えるのを止めにした。 『なんで一年坊主にここまで掻き乱されなきゃいけないんだっ。ったく、いい加減にしやがれ。』 それよりも俺を悩ませたのは夏姫だった。というか、夏姫のことがあったからあんな一年坊主のことを考えている暇がなかったのだ。 入学式が終わり、教室に帰っても以前夏姫はプイッとして話し掛けられる雰囲気じゃなかった。 何をどうすればこんなに怒るのかわからなかった。というか、何に対して怒っているのかすらわからないんだから。 困り果てた俺は昼休みに直樹に相談することにした。 何に対して怒っているのかすらわからないと言った俺に対し直樹は、 「それならしゃーないじゃん、夏姫から何か言ってくるまで待つしかないだろ」ともっともなことを言い、続けてナンセンスなことを聞いてきた。 「つか、お前らって付き合ってんの?」そして、眼を三日月のように垂れ下げて言った。「お前が無理矢理変なプレイしたんじゃねーの?お前って何気に鈍感だからな。」 「バカかよ、付き合ってたらお前に隠してるはずないだろ?つーか、そんなんだったらとっくにどうにかしてるさ・・・」 俺はしゅんとして力無く答えた。 だが、次の日も、また次の日も夏姫は態度を変えることなく、また俺に話し掛けることなく、その瞳を赤く染めていた。 (毎晩何をそんなに泣いているのだろう、それと俺が一体全体何の関係があると言うんだ・・・さっぱりわからない。) そして、その時が来た。 金曜日の夜8時30分、つまり待ちに待った練習試合の前夜。 俺は夕飯を食い終わり、ガンガンとロックを掛けてこの休み分のカレーをコトコトと弱火で煮込んでいた。 ここだけの話、ロックを掛けながら作るカレーはめちゃくちゃ弾けた味になる————というのは嘘だが。 実を言うと俺はあまり邦楽は聴かない。邦楽で聴くのはこの2人組と他2組くらいだ。今掛けてるグループの二人は男として憧れる。俺も年を取ってもこんな弾けたかっこいい人になっていたい。 ゆっくりと木ベラでカレーを切るように混ぜる。どこかの本にカレーのおいしさは混ぜる回数に比例すると書いてあったような気がする。 もういい加減いいだろう、とカチッと火を止めた。 と、その時、玄関のチャイムの音が甲高く鳴り響いた。 (こんな時間に誰だろう、セールスだったらぶっ飛ばそうかな) 俺は、ガンガン弾け歌うその声をピッと消し玄関に向かった。 覗き穴を覗いてぶったまげた。そこに、俯く夏姫が佇んでいた。 でも、何となくわかっていた。もし彼女が俺に話をするとしたら絶対俺の家に訪ねてくるだろうと。 小3の夏以来、どちらかが悩み事とか何か辛いことがあったときは相手の家を訪ねるのが決まり事のようになっていたのだ。 だが、中学に入った頃からお互い行き来がなかったし、こんな時間に来たことは今までに一度もなかった。それだけ、何か大切な話なのだろうか。 一度深呼吸をしてから俺はドアを開け、殊更やさしく言った。 「・・・・・・入れよ。」 キッチンに立ち、夏姫のためにカフェオレ、自分のためにコーヒーを入れる。芳しい香りが鼻をくすぐる。夏姫が訪ねて来ると決まってすることだった。 それを大掛のソファに座っている彼女の前に置き、俺はその斜め前にある一人掛けのソファに座った。 彼女は、そのカップを見つめていっこうに口を開こうとしない。 何を言われるのかと内心ビクビクしていた。昔からバカバカと言われてきたけれど、入学式の日に『バカ』と言った彼女の怒りと苦悶に満ちた顔は異常だった。 その沈黙に耐え切れず、カップを手に取ろうとした、その時、夏姫は俯いたまま口を開いた。 「・・・優って彼女いるんだよね?」 その声は、どこか質問や確認というよりかは疑念をぶつける感じだった。 「あぁ、いるよ。それがどうしたんだよ」と、俺は言った。 彼女は顔を上げ、真っ直ぐとその瞳で俺を見た。 「ねぇ、その人どこの誰?」 「・・・・・・お前の知らない奴だよ」俺はカップに目を落とした。「それがどうしたんだよ?」 「・・・嘘・・・・つかないでよ!」 急に発せられた叫び声に近い大声にびっくりして彼女を見ると、その眼の奥が揺れ、涙が溢れていた。 「ねぇ、なんで嘘つくのよっ。その彼女って本当に彼女なの?!それなら何か話してよ!お願いだから・・なんでも、いいから・・・」 呆然と膝に突っ伏して泣いている彼女を愕然として見つめた。 静かにすすり泣く悲痛の声とカチカチと時を刻む音が室内を満たしていた。 「な、なにいって・・・・・・」 動揺した俺の言葉を途切れ途切れの彼女の言葉が遮った。 「ねぇ、その子、って、男の、、子なんでしょ?」 |
| のわぁ〜!!この話ゎいつみても面白いッス☆ これからも頑張ってかいてくださぃッ☆ |
| ひさびさにきたら…更新されててめっちゃうれしぃです これからも読ませてぃただきますm(__)m |
| 有言実行出来ず申し訳ないです><いつもコメント下さる、みかどさん、空也さん、ありがとうございます!!今回は長くなってしまったので2つに区切りました。今日中に33までアップしたいと思っています。 「男の子なんでしょ?」 蚊が鳴くような、でも確信を持った夏姫のその言葉を頭の中で反芻する。 脳みその中を考えが次々と疾走し絡まり合う。 (・・・・・・男の子?どうしてそんなことを夏姫が俺に聞くんだ?それって元晴のことか?なんで、どうして・・・・・・。) 先程までカップからゆらゆらと立ち昇っていた湯気が少し弱まったような気がする。 すぐに反論すればいいものを、俺は出来ずにいた。いや、しなかったと言ったほうが正しいのかもしれない。 否定しないということは、肯定するということだってくらい俺にもわかっていた。 だけど、今回は否定したくなかった。 もし、夏姫相手に否定しまったら俺は夏姫に対して嘘を付くことになるし、同時に元晴や自分自身に対しても嘘を付くような気がしてならなかった。 そもそもなんで否定しなければならないのだろう? 俺と元晴が付き合っている(と少なくとも俺は信じている)のは事実で、俺は真剣に元晴を愛している。 俺の我侭かもしれないけど、本当に好きだから、真剣に愛しているからこそ大切な人には知ってもらいたい、認めてもらいたいと思っていた。 だが、俺はその真実を知られるのが恐ろしかった。 別に、罵倒され、軽蔑されるのを怖れてるわけじゃない。 ただ、大切な人、愛すべき人を悲しませたくなかった。 俺という現実を受け入れることが出来ず、苦しみ悩む姿を見たくなかった。 夏姫なら突き放すことなくそう思い悩むだろう。現に、彼女はその瞳を真っ赤に染めていたじゃないか。 そして、こうして俺と向き合いに来たじゃないか。 親にも嘘を付いて、俺は直樹にも少しだけ嘘を付いた。 これ以上、これから先も、嘘を付き続けなきゃいけないのだろうか。 夏姫にも嘘を付き続けなければならないのだろうか。 そんなのは絶対に嫌だった。 そんなことをしたら向き合おうとしている彼女を裏切ることと同じじゃないか。 それと同時に『自分』という存在が揺らいでしまう気がした。 俺は夏姫のことを誰よりも信頼しているし、今も変わらず頼りにもしている。それは彼女も変わらないと思う。 それだけ、俺たち二人の関係は、心の、何処か奥深くで繋がってきた。 俺はゆっくりと顔を上げ、彼女の揺れる瞳を見つめた。その揺れる鏡には歪んだ、だけど、澄んだ自身が映っていた。 「ごめんな、、嘘付いてごめん・・・・・・」 俺は身を乗り出して近くにあったテッシュボックスを彼女の前に置いて言った。 「変な奴だと思うよな・・・男と・・・・・・男が付き合ってるなんて。」 少し自嘲気味の自身の声が室内に吸い込まれる。そして再び沈黙の粒子が辺りを支配した。 重い沈黙を俺は俯いて必死で耐えた。気まずさが口を押し開けて二の句を告げそうになる。 やがて、テッシュを引き抜く音が耳に届いた。 「変な奴、なん、かじゃないよ、ただちょっとショックだったの・・・優に嘘付かれてたんだな・・・って知っちゃったのが・・・・・・。」 口を開こうとして口内が乾き切っていることに気が付き、俺はコーヒーを喉に通した。それはすっかり冷めてしまって糞不味かったが、透き通るような喉越しだった。 「ほんとにごめんな・・・・・・お前相手に嘘付くなんて最低だよな俺、、」 そこで言葉を区切りふと疑問に思ったことを口にした。 「なぁ、なんでわかったんだ?」 すると、突っ伏して泣いたことによって赤く染まっていた彼女の頬がより紅く染まった。 要らぬことを訊いてしまったのかと思い慌てて謝ろうとした瞬間、 「ねぇ、優」と、羞恥を露にした顔で彼女が言った。 「・・・・・・イチャイチャするならもう少し隠れた場所でやってよ」 「えっ?!」思わず驚きの声が口を出た。 「始業式の日の夜にうちの側の路地でその・・・・・・人に見せれないようなことやってたでしょ?」 かあっと顔が火照って、耳の先まで朱に染まるのがわかった。そこから紅い湯気が出ていそうだ。 「ねぇ、露骨に恥ずかしがらないでよ」と彼女も真っ赤になりながら言った。「私のほうが恥ずかしかったんだからぁ。」 「ご、ごめん、、、そんなまさか・・・ほんとごめんっ!!なんていうか、、その最後に足音が聞こえたのはわかったんだけど・・・・・・。」 「あはは、今日の優謝ってばっかだよ」と、彼女はその顔に無理矢理な笑顔を作って笑った。「でも、ほんとびっくりしたなぁ、だって囁くような声がするから覗いてみたら学ランが見えて・・・その、ねぇ・・・あのとき覗かなかったらこんな思いしなかったのになぁ」 返す言葉がなかった。羞恥が全身をつっついていた。 自分が卑しくて卑しくて仕方がなかった。行為をした自分というよりも、自分の口から真実を知らせなくてはならなかった大切な人、しかも異性にその様な場を見せてしまった自分が卑しくて堪らなかった。 「っんとにもぉ、そんなに真っ赤になるならもう少し気を付けてやってよね、ほんと衝撃的だったんだからぁ」と、冗談めかして彼女は言った。 「まぢでごめん・・・あーーーっ、俺最低だぁ・・・ぁ・・・」 俺は膝に突っ伏して熱いくらい真っ赤に染まった顔を隠した。 「ほんとサイテーーッ、」 そう言って彼女はプイッと顔を背けた。 俺は自分自身を罵倒し続けた。もし俺が、夏姫のそんなことをしている姿を見たら衝撃のあまりにショック死してしまうことだろう。冗談にもなりはしない。 やがて、彼女が神妙な口調で言った。 「ほんと言うとね・・・・・・優のこと、好きだったんだよね」 「えっ・・・」突然の告白に顔を上げ思わず驚きの声が漏れた。 「別に告ってるわけじゃないよ」と、殊更軽い調子で夏姫は言った。 「ただ伝えさせてよ・・・・・・中学入学した頃からずっと想ってたんだからさ」 「だ、だって、お、お前、亮太のことが好きだったんじゃないのか?!」 「ばぁーか、中学入る前に吹っ切れたよ・・・。なんていうかね、優って中学入ってからすごくかっこよくなったんだよね。部活で一生懸命走ってる姿とか、授業中ちゃんと勉強してるところとか、、急に男っぽくなったっていうの?小学生のときはいつもうるさいだけのガキだったのにっ」 一息にそこまで言い終わると、深呼吸をして彼女はカフェオレに手を伸ばした。 「・・・・・・ヌルッ」 「あっ、ごめん!入れ替えて・・・ッ・・てぇ・・・・・・」 慌てて立ち上がったらテーブルに思い切り膝をぶつけた。言葉で言い表せないほどの恥ずかしさで身体中が熱かった。別に嫌だってわけじゃない。というか、正直嬉しかった。実を言うと小学4年生くらいまではずーっと夏姫のことが好きだった。だけど、夏姫は亮太(小学校のとき同じだった友達)のことが好きだった。だから諦めたのだ。 だけど、俺みたいな男が言うと癪に障るかもしれないけれど、今となっては彼女の気持ちには応えられない。それは彼女も分かっていて伝えたのだろう。もし、元晴と付き合う前だったら俺は夏姫と付き合っていたと思う。元晴への想いに蓋をして。 「うん、お願い。温かいのが飲みたい気分だから」と彼女は紅色の眼に光を反射させながら言った。 |
| 再び、彼女と自分のためにカフェオレとコーヒーを入れていると、リビングのほうから澄んだ声が聞こえてきた。 「ねぇ、その彼氏って誰ぇー?私の知ってるひとぉー?」 「多分知ってるひとぉー、」俺は手元に注意しながら続けた。 「元晴ってわかるか?」 「ンー・・・・・・」 夏姫が首を傾げて考えているのが見えてきそうだ。 「えっと・・・・・・」 「うちのバスケ部の二年だよ、」 それだけじゃわからないと思い付けたして言った。 「俺よりチビで二年の中で一番美形なヤツ」 「えっ!ウソッ?!」今度はすぐに反応があった。 「うそじゃねーよ・・・それってちょっとひどくないか?」と俺は温かいカップを二つ運びながら言った。 「ごめんごめん、別にそーゆー意味じゃなくて」と、彼女は顔の前で両手を合わせて言った。「でも世の中わかんないもんねぇ・・・・・・」 「やっぱそーゆー意味なんじゃん!ひでぇなぁ〜」 軽々しく発した言葉とは裏腹に結構ショックだった。でも、こんな話を聞いたら誰もがそう思うと自分でも思う。 『なんであの子が?!しかも優と?!』 正直言うと俺も不思議に思う。こんな自分の何処がいいのだろう・・・。本間や阿部のようにかっこいいわけでもないし、スタメンでもない俺の何処が?夏姫の言う通り世の中は本当にわかんないもんだ・・・・・・。 「ねぇ、直樹にはこのこと話したの?」と、彼女が訊いた。 「いや・・・さすがに話せないよ・・・・・・。」俺は溜息をついてから続けた。「・・・・・・だって同性の友達からある日突然、男と付き合ってるんだ、なんて言われたら俺でも相当ショック受けると思うもん・・・・・・。」 「・・・・・・だよね。でも、いつかは話そうと思ってるんでしょ?」 「・・・・・・うん、そりゃーお前にもいつかは話そうと思ってたんだけど・・・落ち着いたら話すよ・・・。」 「あたしってほんと余計なことばっかりしてるね」 そう言って苦笑し、彼女はカップに手を伸ばした。 「ン、おいし・・・優が入れるカフェオレが一番おいしい」 「だろ?」まんざらでもなかったが少し謙遜してみることにした。「まぁなんたって豆がイイヤツだからな」 うちにあるコーヒー豆もオヤジが選んで買ってくるヤツ。値段は知らない。こうやってタダで飲ませてもらう代わりにたま〜に俺がコーヒーを入れてやる。 「そういえばお父さんとお母さん元気?」と夏姫が訊いてきた。 「さぁ?最近まともに話してねぇし、つか最近は朝方にたまーに会うくらいだかんなぁ・・・」 「相変わらず忙しいのねぇ・・・」と苦笑いしながら夏姫が言った。 それから俺らは久しぶりにお互いの身の回りの話なんかをしてすごした。こうしているとなんだかすごく懐かしかった。今も昔も変わらずに『そこ』にいてくれる夏姫や直樹。どれだけこいつらに俺は助けられてきたんだろう。俺は、それだけのことをこいつらに返せてきたのだろうか。いつも貰ってばかりいるような気がする。 「よしっ、そろそろ帰らなきゃ・・・」と、夏姫が言った。 「うわっ、もう10時半過ぎてるし!こんな時間まで大丈夫だったのかよ?」と俺は立ち上がりながら訊いた。 「大丈夫だって。ちゃんとお母さんに優の家に行くっていってあるから」 彼女は振り返り意地悪い表情を浮かべ言った。 「優と違ってその辺は抜かりないですからぁー」 「うっせーなぁ・・・あっ!そうだ」と、俺は玄関の電気を付けながら言った。 「あのさ、もし暇だったらでいいんだけど、明日うちの学校で練習試合あるの知ってるだろ?そのなんてゆーの、よかったら見に来ない??俺さ、この試合でスタメンで出れそうなんだよ」 「えっ!ほんと?!」と夏姫。 「うん。多分13時くらいから一番強いチームとの試合があると思うからそんくらいに来れたら来てほしーなぁと・・・」 「いくいくっ!」と彼女は心底嬉しそうな顔をして言った。「でも、強い相手との試合で大丈夫なの?」 「うわっ、俺だって少しはうまくなったっつーの。楽勝だよらくしょー」と大分強がってみた。 「強がらなくていいのよ?」と夏姫が意地悪な笑みを浮かべた。 「うっせー!絶対らくしょーで勝つしっ!!」図星の俺は今更引き下がれなかった。 クスクスと笑っている夏姫を見てあることがパッと閃いた。 「なぁ、できたら真美ちゃん誘って一緒にきてくれね?」 「え、いいけど。いきなりどうしたの?」と心底不思議そうな顔をして彼女は尋ねた。 「なんかさ、本間とうまくいってねーみたいだから・・・余計なお節介かもしんねぇけど心配だし・・・・・・・」 真美ちゃんと夏姫は同じバド部で仲が良かったことを思い出し、急に思いついた考えだった。本間だって彼女が見にきたことを嫌だとは思わないだろう・・・と。 「そういえば、真美が最近本間君が冷たいっていってた・・・・・・」と夏姫は言った。「うん、わかった。帰ったら電話してみるね。」 「おう、あんがと」と俺。 しばらく玄関で向き合ったまま沈黙が流れた。その沈黙を破ったのは彼女のほうだった。 「ねぇ、元晴君のこと真剣に愛してるんだよね?」 俺はゆっくりと息を吸い込んだ。答えは考えることもなく決まっている。これ以外に何があるというのだろう。そうじゃなかったらとっくの昔に男を好きになったことなんて無理矢理否定してその気持ちに蓋をしてるに決まってるじゃないか。俺は、一言一言確かめるようにして言った。 「うん。真剣に愛してるし、真剣に付き合ってる。」 「そっか・・・うん、、、安心した。」夏姫は光を反射して輝く眼で俺を見つめた。「・・・・・・じゃあまた明日ね!」 そう言って俺に背を向け玄関を出た。 「うん、またな。明日期待しとけよな」とまた強がってみる。 「明日変な試合したら承知しないからねっ!」と、振り返り夏姫流の励ましをくれた。 俺は玄関から出て夏姫を見送る。物寂しかった。ガキの頃もいつもそうだった。こうやって夏姫の背を見送るときはどうしようもないほど寂しくて悲しかった。 俺は、夏姫の背が見えなくなるとすぐにリビングに戻り、あの頃と同じようにエンドレスでモーツァルトピアノ協奏曲第20番を流した。 その夜、俺は、リビングのソファでミケランジェリの弾く第二章とともに眠りに落ちた。 |
| 翌朝は白い綿飴みたいな雲が幾筋か泳いでいる、思わず写真に残しておきたいくらいの芸術的な青空だった。 いつも通り一番乗りで体育館に着いた。といっても、今日はもう既に保護者の何人かと先生が先に来ていた。俺も少しだけ準備を手伝っていたが、本間のお父さんに言われてアップすることにした。 バッシュを履き、軽くランニングと体操をしてシューティングをしていると続々と二年生が登校してきた。その中にいた元晴と眼が合うと、はにかんだ笑顔とともにまだ変声期を迎えていない声で挨拶をしてくれた。朝からぽわぁ〜んとしてしまいそうになり慌てて首を振って我に返った。 7時半には部員全員が体育館に揃った。メンバーに入っている15人は身体を温めるためにランニングと体操をし、残りのメンバーで会場準備をした。 しばらくして外が騒がしいなと思ったところ阿部と俺は先生に呼ばれた。 「二人で到着したチームを控え室に案内してくれ」と先生は告げた。 玄関に向かうと既に、顔馴染になった白山中の面々が整列していた。 一番強い奴らと夏姫に言ったのは、この白山中のことだ。彼らとの初対戦は一年の春にさかのぼる。そのときは一点差で勝ったのだけど(もちろん俺はベンチ)、それから白山中はうちらを倒すことを目標に頑張ってきたという話だった。二年になってから何度か対戦したことがあったが、勝率は白山中のほうが良くなっていた。彼らのチームには、県選抜に選ばれた身長185以上のセンターと県選抜候補に選ばれたフォワードがいた。だから負けているんだとは言わない。彼らは本当に強かった。モンゴル帝国を万里の長城で囲んだ感じ。 そう、俺はそんな相手に対して「ラクショー」なんて言ってしまったのだ・・・・・・。今更ながら自分の浅はかさを痛感した。 彼らとはもう友達のような関係だったから控え室に行く途中色々と話したりした。 「ねぇ、酒井って彼女いんの?」「なんかお前またデカくなったんじゃねーの」と言ったら「お前全然背伸びてねーなぁ」と、言い返されてしまった。 (絶対許さん!これでも数センチ伸びたわ!!ぐっちゃぐちゃのぎたぎたのこてんぱにしてやるっ。) メラメラと燃え上がる闘志。漫画に出てくる燃え上がる背景が欲しいくらいだ。 9時半から試合が開始された。6チームいるので4チームが試合を行い、残りのチームがオフィシャル(タイマーや得点の係)をするという感じだ。 初戦は同じ郡市大会(一番最初に行われる中体連の大会)を戦うチームだった。 ここは、本間たちスタメンが試合をすれば負けることのない相手だった。郡市では多分三番目くらい。一番を争うのは、うちと城西中との差は歴然。 今回の試合のスタメンは、ミッチー、金子、阿部、本間、俺だった。キャプテンの渡辺は先生の隣に座り、その隣にいる部員を弄んでいる。 スタメンが違うのは当たり前なのだが雰囲気がどこかいつもと違う。 そう思って体育館の上のギャラリーを見ると————うちの学校の生徒がズラリと見下ろしていた。ユニフォーム姿の野球部の面々、揃いのウェアを着た陸上部の男女。その中に奴の顔があった・・・。そう、言わずと知れた『あの』バカだ。 俺は、蒼白になってしまった。めちゃくちゃ恥ずかしい。緊張のタコメーターが振り切れそうだ。 ありえない。あんな放送をした奴を殺してやりたいくらいだ。ガクガクと足が震え始めた。 そして、試合前に先生が集合をかけたとき皆に対して「今日は全部オールコートで行く。課題は各自わかってると思う。決してギャラリーに負けるな」とふざけたことを言い、次に俺に対して「お前は自信を持て。自分の武器は何だ?その3Pとディフェンスだろ。お前が四番につけ。」とおっしゃった。 この緊張の上に今まで全く歯が立たなかった相手のディフェンスかよ・・・・・・。とことんツいてない。 礼をし、センターサークルの周りを囲むように並ぶ途中、 「おいっ、そんな緊張すんなって」と、阿部が俺の尻をソフトタッチしてきた。 「触んなっていつも言ってんだろっ」と俺は阿部を睨み、恨みを晴らすべく思い切りど突いた。 入部した当初からそうだけど、先輩やこいつは俺の尻をよく触ってくる。何度も止めろと言っているのだが、全く聞く耳を持たない。 阿部曰く「小ぶりで柔らかくて、なおかつ弾力があるから気持ちいい」とのことだった。 ヤツは将来絶対痴漢になる。この俺が保証してやる。痴漢の星阿部。 そして、ボールがトスされ試合が始まった。 金子がしっかりとボールを阿部のところに落とし、うちらのオフェンスから始まった。 そうこうしているうちにいきなり俺がシュートを打つチャンスが回ってきた。だが、ガチガチの俺は思いっきりシュートを外してしまった。 恥ずかしいなんてもんじゃない。情けないなんてもんじゃない。そこに穴があったら飛び込みたいくらいだった。 だが、そんな俺が調子を取り戻したのはやっぱりディフェンスからだった。 俺らのディフェンスはオールコートマンツーマン。まぁつまり、オールコートで一対一でガシガシ当たってディフェンスをするみたいな感じ。 俺のマークマンの四番はガード。つまり、ボールを運びゲームをメイクする人。 ガッチシマークしたら奴はスピードで振り切れないと判断して(オレ足遅いのに)、切返し切返しで俺を抜こうとした。 (あれ、なんか思ったより楽じゃね?本間と比べればこんなの屁じゃねーか) ボール運びの基本はショートパスかドリブルだ。だが、本間や阿部、それにミッチーと金子が完璧に抑えている状態では容易にそのマークは振り切れない。 相手が再び切返そうと試みた時だった。奴の目の前には本間が立ちはだかった。フロントコートの左後ろの隅。後ろに戻ろうとすればバックパス。奴は慌てて本間のマークが外れた五番にパスを出そうとした。だが、そこにチェンジをしたミッチーが飛び込み、そしてカットした。 そのボールが前に放られる。俺はスタートを切り、ボールをキャッチする。目の前のゴールに向かって踏み込んだ。 最後の一歩を思い切り踏み切り、ボールをゴールに置いてくる。ドッと頭上から歓声が湧いた。振り返るとネットの真下にボールが落ちた瞬間だった。 それからの俺は嘘のように身体が軽くなった。3Pもスパスパ入り、それをフェイクにして切り込みデカブツのセンターを弾き飛ばしてシュートを決めることも出来た。以前の俺だったら考えられないプレーだ。 その試合は2Qをフルで出て、3P4本、2P2本、フリースロー1本、(アシストは忘れた)を決め、計17点だった。なんとか第一試合は本間との賭けを乗り切った・・・。 その後にあった午前中の試合もディフェンスと3Pが面白いように決まり、18点、15点と決め試合に勝った。 とてもとても嬉しかったのだが、試合が終わる度に三年皆にバシバシと叩かれるのは堪ったもんじゃなかった。だけど、その痛みの一つ一つがとてもとても大切な気がした。 12時となり昼休みになった。昼休みというのは昼飯を食う時間だけど、それともう一つ大切な時間でもあるのだ。 それは、下級生のフレンドリーシップ(まぁようは交流試合)が行われる。 このときは下級生が主役だ。別に上級生はのんびりと飯を食っていてもいいのだが、飯なんて早々に食って下級生のもとに向かい審判やオフィシャルや監督をする。何故かというと、なんていうんだろう。自分たちも先輩たちにそうやって支えてきてもらったからだと思う。自分たちの代で良き伝統を潰すわけにはいかないから。 そこで俺は、なんと!監督をすることになった。理由は単純。『絶好調だから』 普段の試合は巧い奴から試合に出すことが多かった。だが、俺はそういう選び方はやめにした。俺は、元々選ばれない側だったからそういう奴の気持ちがよーくわかる。それが発展途上のうちにどれだけ自信を失わせることか。 もちろん、ポジションのことも考慮して出来る限りランダムで選んだ。まぁその中に元晴が入っていたのは、言っとくが贔屓じゃないぞ。 後輩たちは全ての試合に勝利した。だが、まだまだ改善していかなければならない点が沢山あった。ということで、その場で出来る限り指導するのだけれど、元晴に指導するときに肌が触れてしまうと妙に意識してしまった。 これじゃあ監督失格じゃないか・・・。変態監督としては文句無しの合格点だけど!セクハラ監督優。あまりいい響きじゃない。 指導している途中、続々と私服の生徒たちが体育館に入ってきていた。 その中に夏姫と真美ちゃんを見つけた。彼女たちも俺に気付いたらしく、こちらに向かって手を振っている。 恥ずかしいったらない。同中の生徒の視線に曝され、他チームの奴らの注目まで集めてしまった。中にははやし立てる者までいた。 「おい、ちょっとこいよ!」と、後輩の指導をしていた本間の手を取った。 「な、なんだよ?」と、俺に引きずられながら本間が応えた。 「彼女が来てるっつーの」 本間はそう言った俺の視線を辿り自分の彼女が来ていることに気付き、ハァ、とため息を漏らした。 俺はそのまま本間を引きずり彼女たちのもとに向かった。 「ハイッ、本間デリバリーしてきました!」 「なにそれぇー、なんか優君が光輝を引きずるのってアンバランスだよね」と、真美ちゃんが可笑しそうに笑い、夏姫も俺も声を上げて笑った。本間は依然として仏頂面だった。 ちなみに、光輝ってのは本間の下の名前だ。 「二人とも来てくれてありがとね」と配達屋の俺。 「優君こそ呼んでくれてありがとっ」と、彼女は犯罪級の笑み浮かべて言った。俺には少し刺激が強過ぎるかな。 「それじゃ二人の邪魔しちゃ悪いからあっち行ってくるね」 そう言って彼女は本間の手を取り体育館裏に続く道を歩いていった。 「邪魔しちゃ悪いってこっちのセリフよねぇ?」と夏姫が二人の背中を見送りながら呆れたように言った。 「まぁいいんじゃね?」俺も笑いながら応え「それよりなんで本間の奴彼女が来てんのにあんな仏頂面決め込んでんだよ・・・・・・。」 「さぁ・・・照れ臭いだけなんじゃないの?案外男の子って照れ屋さんじゃん?」 「照れ屋じゃなくて純粋と言ってほしーわぁ、初心なんだよ初心っ。それよりあっち移動しようぜ」 俺と夏姫は体育館の一番人のいない隅に座った。 周りの視線が気にならないわけじゃないが、下手に真美ちゃんのように皆のいないところに行けば尚更怪しまれると思ったのだ。 「ねぇ、いいの?彼氏の前で私と二人でいて?」と彼女は意地悪く訊いてきた。 「ばぁーーか。やばいんだったらそもそも最初っから呼ばねぇよ」 「それはそうか」と彼女は笑い言った。「あの子でしょ、元晴君て?やっぱりかっこいいねぇ」 「えっ?かっこいいか?俺はどっちかっつーと可愛いと思ってるんだけど・・・」と俺は答えた。 だが、夏姫ははぁ、とため息をついて言った。 「バカねぇ・・・。女から可愛いなんて言われて喜ぶ男の子なんている?」 確かに、と言った俺を見て彼女は再びため息をもらした。 「でも優ってあーゆー子がタイプなんだ?」 「まぁ、そんな感じなのかなぁ・・・俺にもよくわかんねぇよ。いつのまにか好きになってたんだし。」 俺は翔平のことは黙っておいた。だって今はもう関係ないんだからわざわざ言う必要はないはずだ・・・。 「それもそうだよね」と夏姫は笑った。「ねぇ、そろそろアップとかしなきゃなんじゃないの?」 「あ、うん。じゃあ行ってくるわ。」 行きざまに俺は振り返って言った。 「試合見るなら上じゃなくて得点盤の側で見ろよな。そのほうが臨場感があるしさ」 (もう後戻り出来ないぞ・・・。だけど、絶対酒井の鼻をへし折ってやるんだっ!南米のアリだったかは大きな昆虫や動物にも勝つってきいたことがある。まぁ奴らは大集団だけど。嗚呼、南米の名も知らぬアリの神よ、我に力を。アーメン。あれ、アーメンってどうやるんだっけ?) 俺はアルゼンチンアリの神よりも心強い仲間のもとに駆けていった。 |
| ありがとなんて言われたら照れます すごぃ読みやすくて面白ぃです これからも頑張ってくださぃね |
| コメントがすごく励みになります!というか、それだけが支えです><今回は読んでも読まなくてもいいような内容ですが、今後の話をスムーズに読めたらと思い書き入れました。今日中に34もアップ出来るよう頑張ります。早くエッチを!の精神で。 白山中との試合が始まり1Qはこれまでにない熱戦となった。激しい攻防を繰り返し、互いにゴールを許さなかった。1Qが終わった時点で9対8でうちがなんとかリードしていた。 今回のスタメンは、渡辺(ガード)、本間、俺、金子、ミッチーだったが、お互いがオールコートディフェンスだったためこれまでにないほど汗を流し体力を消耗していた。まともな試合は久しぶりだったんだから仕方がない。互いの手の内はわかっているので白山中は県選候補に上がったことがある6番に本間をマークさせた。そのため本間は思うように攻められなかった。その代わり本間も完璧と言っていいほど6番の力を封じ込めていた。正直めちゃくちゃかっこよかった。それが証拠にギャラリーの女の子たちからの歓声が上がりっぱなしだった。 だが、そうなるとうちのチームの得点源が極端に減ることになる。ローポストでミッチーに勝負させようにも県選の酒井がついてるために(身長差約10センチ)思うようにプレーが出来なかった。 1Qと2Qの間の1分の休憩時間で先生が言った。 「いいか、優のマークが一番甘い。あの8番は正直余裕だ。今までずーっとベンチだったんだから当たり前だ。優、積極的に攻めていけ。スリーが決まり出せば絶対マークマンが焦ってくる。金子、お前のほうが相手よりでかいんだからガシガシ勝負しろ。得意なハイポからのシュートでまず攻めろ。それからミッチーが上がって金子が下で勝負しろ。」 ブザーがなり、コートに戻ろうと歩き出したところ後ろから阿部が観衆の見ている目の前で尻にタッチして言った。 「バシバシ決めて来いよ!」 もし、これがこんな緊迫した場面じゃなかったら殺していたかもしれない。だけど、今はそんな励ましが心強かった。ずっと一緒にやってきた仲間に励まされることほど心強いものはなかった。 2Q開始直前に渡辺が俺の耳元で囁いた。 (初っ端からパーでいくから心しとけよ) パーとはグーチョキパーのパーだ。決して頭がパーのパーじゃない。うちのチームのセットプレーの合図はグーチョキパーしかない。(ちなみにパーは最終的には0度付近でガード以外の2人のどちらかがボールを受け、マークが外れていれば3Pを打つと言ったものだった。無理ならその後に続きがあるけど長くなるから書かない。) たまに渡辺が気分で「カラス!!」とか「ゲロンパ!!」と叫ぶことがあったのだけれど、相手は一瞬それに気を取られることが多かった。実際は全く関係のない無合図なのだが————まぁそれだけ言えば奴の性格がわかると思う・・・・・・。 そして2Qが始まりジャンプボールは相手に楽々と取られてしまい、6番の放ったスリーが綺麗な放物線を描きゴールに吸い込まれた。 すぐにエンドからスローしてフロントコートまで渡辺がボールを運び、手の平を開いた手を上げ叫んだ。 「パー!!」 それと同時にミッチーと金子がゴール下に降り俺と本間が一気にゴール下に走りセンターの二人を使ってスクリーンをかけ、0度の位置に走った。そこへ渡辺がパスを出し、俺がキャッチする。ディフェンスが慌てて走ってくる。 俺は、ゆっくりと構え、跳んだ。頂点でボールをリリースする。観衆が息を呑んだ。綺麗なバックスピンを描いたボールがゴールへ向かう。 放った瞬間確信した。何を根拠に言っているのかと言われれば答えようがない。答えるとするのならば、俺の感覚がそう言っていると答えるしかない。 ボールは、空が青いのと同じくらい当たり前の事のようにスパッと音をたてゴールに吸い込まれた。溜められていた歓声が爆発した。 それからシュートがバカみたいに決まり出した(一本も外さなかったと思う)。そして金子もハイポからのミドルをバシバシと決める。 そうしていると、マークマンが簡単なフェイクに大袈裟な反応を示すようになった。本間なら絶対にそんなヘマはしない。今回はオフェンスから流れが作れたような気がした。 2Qの中盤からはミッチーのパワープレイも冴えてきた。うちのチームには面白い連鎖の法則があるのだけれど、本間かミッチーのどちらかが波に乗り自分の持ち味を出すと片方が刺激され本来のプレイよりもよりアグレッシブなプレイをするようになるのだ。そうなると法則に従い本間もガシガシとプレイするようになり、軽々と6番を凌駕した。 試合が終わってみると37対16でダブルスコアの圧勝だった。 センターに並び、礼をした。すると、白山中の面々が手を差し出した。 びっくりして顔を上げると酒井が悔しそうに言った。 「背は伸びてねーくせにいつのまにそんな強くなったんだよ。」 俺は酒井の言葉に半分ムッとし、半分は素直に喜んでその手を握った。 「これでも前にあったときから数センチは伸びてるっつーの!」 ベンチに戻るとバシバシと阿部に叩かれ先生にも叩かれた。 先生の話を聞き(アドレナリン全開だったからよく覚えていない)、俺はすぐにスコアラー(その時は翔平がやっていた)のところに行き自分の得点数え始めた。 「にぃ、ごー、はち、きゅー、じゅーいち・・・・・・」固まる俺。常夏のハワイから極寒の南極に行った気分だ。「あれ・・・ねぇ、おい、翔平!!」 「なんですかぁ?」と、急いで飛んできた翔平。 「いってん!!あと1点どこにあんの?!なんで11点しか取ってねぇーの!!」 「え、どうしたんですか?」 そう訊いた翔平に後ろから抱きつく形で本間が来た。 「しょうへー気にすんな。おまえはスコアラーの仕事をちゃんとしたもんな」 最高に可笑しそうな顔して翔平の頭を撫でながら言った。 「優、わかってんだろーな?約束は約束だぜっ。」 俺はスコアを机の上に置き投げやりに答えた。 「・・・わーったよ!クソッ!!ほら彼女のとこ行くぞっ」 そう言って俺はキョトンとした翔平を置いて歩き出した。 夏姫たちは俺の言った通り得点盤の側で観戦していた。 夏姫はいきなり俺にこうおっしゃった。 「・・・・・・優ってほんとにうまくなったんだね。」 彼女のあまりにも素直過ぎる言葉に隣でぷっと本間が噴くのがわかった。先程までの仏頂面が嘘のようないつもの本間の顔に戻っていた。 「なんじゃそりゃ・・・うまくなってなかったらスタメンで出してもらえねーって。まっ、これも本間のお陰なんだけどな。」 「え、そうなの?」と本間に見惚れていた真美ちゃん。 「あぁ、練習見てやってただけなんだけどな。」と、本間が少しつまらなそうに言った。「まぁ9割は優の努力だろ。」 「そうそう!努力の力よっ!!」と、俺は勢いに任せて言ってみた。 夏姫が大袈裟な溜息をついた。 「あんたったらまたすぐそうやって調子に乗る・・・・・・」 本間と真美ちゃんがクスクスと笑い、真美ちゃんが言った。 「ねぇ、夏姫って優君のお姉さんみたいだよね。」 「えー、やめてよぉ、こんなのが弟だったら川に捨てちゃう。」と、非人道的なことをおっしゃるお姉さん。 「ハァ?!俺だって絶対イヤだね!!」俺は、イーッと鼻の頭に皺を寄せて憎たらしくして言った。「なんか一生こき使われそうだしぃ」 「二人とも兄弟喧嘩はやめてよぉ」と真美ちゃんが笑っていった。 「ほんとお前らって仲いいよな」と、本間がクスクスと笑いながら言った。 『全然よくないっ!!』 二人の声が絶妙に揃い、二人に爆笑されてしまった。たくっ、なんなんだ・・・・・・。 その後にまたいくつか試合があった。うち一つに元晴も1Qだけ出て7点も入れた。三年相手にそんだけ出来ればすごいと思う。再び白山中とやったけれど俺は出なかったが接戦で勝利を納めることができた。午後の出た試合は全て12点以上取った。あと1点が非常に悔やまれた。 練習試合が終わり、最後に白山中が残った。 そこで白山中のキャプテンが言った。 「地区で絶対勝負しような。今度は勝つから。」 もちろん渡辺がこう返した。 「うちらと当たる前に負けんじゃねーぞ」 酒井や6番(宮崎というんだけれど)、その他大勢にミッチーや渡辺が冗談を飛ばして見送った。 その後片付けがあり、そのとき本間に訊いてみた。 「なぁ、いつ命令すんの?出来ればさっさとしてくれよ。」 「まぁそう焦るなって。来週の土曜の夜泊まり行ってもいいか?」 少し不思議に思ったけどOKした。久しぶりだったけど昔はよく泊まりにきていたし。心の奥底で嬉しさのような、寂しさのような感情が沸き出でていた。 そして、やっとのことで片付けが終わりお開きになった。 俺はいつものように元晴と一緒に帰ろうとしたがその他大勢の部員がついてきやがった。帰路の途中パラパラと散っていく部員を見送った。 ようやく元晴と二人きりになり、しばらくして元晴から発せられた言葉に俺は跳びあがりそうになった。 「—————今日泊まりに来ませんか?」 |
| 毎回丁寧な文でマヂ読みやすいし読んでてドキドキするとことかあってマヂいぃッス☆ 続き待ってます♪♪ |
| 空也さんコメントありがとうございます!頑張って更新していくのでよかったら読んでやってください>< 俺は思わず元晴の肩を掴んで訊いた。 「えっ!マジ?!」 「そんな喜ばなくてもいいじゃないですか」とそんな俺を見て元晴は可笑しそうに笑って言った。「うちのお母さんが優君こないのこないのってうるさいんですよぉ」 「あはは、じゃあお言葉に甘えてお邪魔させてもらおうかなっ」 そして俺は元晴を抱きしめ耳元で囁いた————楽しい夜にしような。 いったん家に帰り、風呂に入って着替えてから行くことにした。夕飯は元晴のお母さんが作ってくれるということだった。オヤジと母さんには悪いが、俺の作ったカレーで我慢してもらおう。俺はまいうーなご飯を御馳走になってくるぜ。 書き置きを残し、調子外れの鼻歌を歌いながら家を出た。空は今日も綺麗な星を一面に飾っていた。 (今日、元晴と二人きりになったら夏姫に俺らのことを話したということを伝えよう。そして謝ろう。) それは、今朝起きたときから考え至った結論だった。本人が知らないところで、勝手に自分のことを話されたらどんなに不快だろう。俺だったらいい気持ちはしない。だから、せめてちゃんと伝えよう。 俺は、自転車のペダルを力強く踏み込み夜風を受けながら走り出した。 元晴の家に着くと最初にお母さんが出迎えてくれた。俺がある程度礼儀正しく、程々に親しみを込めた挨拶をした。タイトル【猫かぶりの優の再来!!】 「ごめんなさいねぇ、ご飯は出来てるんだけど元晴ったらまだお風呂に入ってるのよ。」 そういうことで、今、俺はリビングにいる。だが、さすがの俺でもちょっとキツイ。元晴のお母さんとお父さんのダブルパンチを食らう羽目になったのだ。 元晴のお父さんは誰もが欲しがるようなお父さんだった。キリッとした、だけど温かな二重の眼、スルッと綺麗な鼻、そして何よりも眼を惹くのはその長身だった。180センチくらいあるんじゃないだろうか。まるで海外の二枚目俳優みたいだ。 「いやぁ、元晴がお世話になってるみたいで。元晴が毎日のように優君のことを話してるんだよ。」と顔にぴったりな透き通るような渋い声で言った。 「あはは、僕も元晴君に沢山お世話になっているんで。」 (まぁ別な意味のお世話かもしれないけど・・・) 「今日は優君のデビュー戦だったんだって?どうだったんだい?」 「んー、自分的にはちゃんと練習してきたことを出せたかなぁーと。元晴君も試合出たんですけど三年相手に活躍しましたよ。」と俺が言ったらお父さんは本当に嬉しそうな顔をしたので、俺は訊いてみた。 「えっと、元晴君のお父さんもバスケやってたんですか?」 「あ、うん。大学卒業するまではやってたんだけど、もう今は年だから出来ないなぁ・・・」 「大学までやってたんですかっ!いやいや、こんなに若いお父さんはそういませんよぉ」 お世辞とかそんなんじゃなくて、本当に素直にそう思った。 「やっぱり元晴君が小さい頃からバスケ教えたりしたんですかぁ?」 「ンー、教えたってほどじゃないけど、小学生になってからはちょくちょく一緒にやったなぁ」と、懐かしそうな顔をして言った。 と、そこでリビングの扉が開いて元晴が入ってきた。 「元晴、もう優君来てるわよ。ほんとにもぉ、早くあがりなさいよね。」 ようやく、俺はダブルパンチから逃れることが出来た。もう、試合より緊張したかもしれない。 元晴のお母さんの料理はやっぱり美味かった。これぞ主婦の力だよなぁと感心してしまう。 だが、席がすべて埋まってしまっていた。話によると、弟はまた遊びに行って遅くなるとのことだった。 その会話の中で初めて弟の名前を聞くことが出来た————『アキヒロ』 楽しい夕飯を終え、歯磨き(もちろん持ってきた)をし、元晴の部屋に入り後ろ手にドアを閉め、カチャっと鍵の閉まる音がして、やっと、俺はホゥと安堵した。 「めちゃくちゃ緊張したわぁ・・・」と、ベッドに座る元晴の隣に座って言った。「もぉー心臓バクバク」 元晴が俺の肩に頭をもたせかけ上目遣いで訊いてきた。 「そぉは見えませんでしたけどぉ?」 「ばぁーか。ポーカーフェイスだよ。」俺は笑って答え元晴の肩を手で支え起こして言った。「なぁ、ちょっと話しておきたいことがあるんだけどいいか?」 「なんですかぁ?」 俺は元晴の黒茶色の瞳を見つめてゆっくりと言った。 「・・・・・・おまえと俺のこと話したヤツがいるんだ。」 元晴の顔に驚愕の色が浮かび、ゆらゆらとその瞳が揺らいだ。 「夏姫っていう幼馴染なんだけど、今日練習試合に来てたやつわかるか?」 しばらくして元晴がコクンと頷くのを確認してから一息で続けた。 「始業式の日、おまえと一緒にいるところ見られたんだ・・・・・・それで、、夏姫がうちに来て、、こいつには嘘付きたくなくて、こいつなら信頼できると思って・・・正直に話したんだ・・・ごめん!お前に何も相談しないで話しちゃって・・・いい気持ちなんかしないよな・・・ほんとにごめん・・・・・・。」 元晴はしばらく俯いて黙っていたが急に胸の中に飛び込んできた。 「お、おい?」動揺を隠し切れない声が漏れる。 「・・・・・・嫌じゃないですよ。。てゆーか嬉しいです・・・」 「えっ?」 「だって、優さんが信頼してる人に話してくれたんでしょ?それってなんか・・・認められたってゆーか、なんか、、嬉しい」 そう言って元晴はギュゥと俺の背中に回している腕に力をこめた。 俺はぐっと胸が熱くなった。元晴の一言で、それまで心を支配していた罪悪感がまるで氷が溶けていくようにスーッと消えていく。より量を増し溶けて溢れてきたのは、元晴に対する絶対的な愛だった。 元晴の身体を少し離し、その顎に手で少し持ち上げ羽が触れ合うようなキスをする。 「・・・ありがとな」 そして、元晴を優しくベッドに押し倒した。薄く形の良い唇の隙間からは綺麗な小ぶりの貝殻のような歯列が覗く。再び羽が舞い降りるように、その宝石を覆う柔らかな唇にキスをする。元晴の華奢な腰を撫で上げ、その隙間から自身の舌を射し込み、その宝石を一つ一つなぞっていく。それを妨害するかのように薄い柔らかな生き物が蠢く。 俺はそれを絡め取り優しく愛撫するかのように吸った。 「んっぅ・・・ふ・・・」 重なりあった唇の間から元晴の吐息とも喘ぎ声ともつかない悩ましい音色が漏れた。 それは俺を欲情させていくのには十分過ぎるもので——— 空いている左手で元晴の頭を引き寄せ、薄目を開けながらさらに奥深く舌を絡める。強く吸い、腰を愛撫する。愛撫をやめるとともに舌を解放してやる。 眼を瞑り興奮の色で頬を染めた元晴の顔を眺めながら胸の突起を弄ぶ。その顔がいっそう快楽の色に染まり、嬌声を上げた。 「——ぁっ・・ん・・・」 唾液腺を優しく舌の先で愛撫すると同時に既に立ち上がった突起を指で摘み、転がし、撫で擦る。 「・・・ぁっん、、ぁっ・・・」 透き通るような喘ぎ声が室内を満たす。 俺は、元晴の上着の下からその中に手を忍ばせ、上方では柔らかな耳朶に息を吹きかけ甘噛みする。すると、ビクンッと元晴が反り返り、吐息と喘ぎ声を漏らした。 上着を捲り上げ、桃色をした胸の突起を曝け出す。 そこは既に硬度を持っていて———俺はまるでそれに誘われるかのように唇を当てた。挟んだ隙間から舌先で愛撫する。その度に元晴の唇から厭らしいほどの声が漏れる。まるで、連なる華麗な音楽のように。これは、俺にとっての最高の癒しだ。幸福の証だ。まるでモーツァルトのような、そんな幸福で奇跡的な連なりだと思った。 「ぁん!・・・ぁっ、、ぅ」 俺はずり上がり、意地悪く元晴の耳元で囁いた。 「そんな声出してっとお母さん来るぜ?」俺は意地悪く言った。「それにしても今日は感度がいいな」 そして、再び深く舌を絡めながら、硬度を持った突起を弄ぼうと手を伸ばした。 その時だった。 ガン!ガチャガチャという派手な金属音が室内に響くとともに透き通るような声が耳に届いた。 「・・・兄貴はいるぜ!」 俺は慌てて飛び退いて咄嗟に入り口のほうを見た。 そこに、見覚えのある奴が立っていた。そいつは、ちょっときつい目を見開いてこちらを見つめていた。あいつだ。間違いなくあいつだ。あの、入学式の日俺を見つめてきた眼だ。強烈なまでのあの視線だ。それと同時に俺の脳みそはフル回転で考えを飛ばした。混乱した考えが駆け巡る。 『どうすればいい?というかなんでこいつがここにいるんだ??』 そして、混乱した幾多の情報の一つが引っ掛かった。 『え、あ、あにき・・・・・・?』 「えぇぇっ?!」俺は驚きの声を上げ、そいつと元晴を見比べた。半身を起こした状態で元晴は固まっていた。 だが、そいつは、何事もなかったかのようにスタスタと部屋の中に入ってきて、ベッドの横にある本棚を探り出した。 『なんだこいつは。俺が言うのはなんだけど、一体全体どういう神経してんだよ・・・』 「兄貴、スラダンの18巻と19巻がねーんだけど?」奴は平然と続けた。「おい、聞いてんの?おーい、呆けてねーで返事しろって。」 あまりに平然とし過ぎているそいつの態度に混乱した俺は思わず口を挟んだ。 「え、ちょっと、ごめん。お、おまえが元晴の弟?」 『俺はこんなときに何を訊いているんだ。まるでアホじゃないか。』 そいつはゆっくりと向き直り、それが当たり前だと言わんばかりに平然と答えた。 「へ?そうスよ。弟の明宏ッス。」そして、明浩と名乗ったそいつは手を差し出していった。「よろしく。優さんっ。」 |
| うゎぁ〜(‾○‾;) 今回もドキドキだぁ☆ この話ホントいろんな展開が、ぁりますねぇ♪♪ 続き気になって寝れまてん(笑) |
| 優さんの話ゎファンが多いっすね ってか続きが気になって… 話のおわらせ方とかめっちゃうまくてぅらやましぃです |
| いつも楽しく読ませてもらってます(^-^) エッチシーン以外でこんなにドキドキしながら読むのってないんで、マジ楽しいです(≧μ≦) 自分もバスケ経験者なんで、バスケの話も読んでてワクワクします(*^_^*)続き楽しみにしてますね♪ |
| 風邪にやられてしまいました(笑)皆さんのコメントすごく励みになります!そう言ってもらえるとすごく嬉しいんです><今回は入りきらなかったので仕方なく2つに分けました。皆さんも風邪には気をつけてください^^; 目の前に差し出された手を、俺は自然と握り返していた。そうしなきゃいけないような気がしたのだ。 『え、なんでこいつが俺の名前を知ってるんだ?いや、元晴の弟なんだから知ってたって不思議じゃないけど・・・。でも、なんでこんな場面を目撃してこんなに冷静なんだ?』 「・・・・・・え、えっと、鍵閉めてあったのになんで入ってこれたんだ?」 訊いた後に後悔した。これじゃあ本当のバカじゃないか。そんなことよりもするべきことが別にあるだろ。 明宏と名乗った目の前の人物は心底可笑しそうな顔をして答えた。 「あぁ、鍵開けて入ったンスよ。」 いや、そんなことはさすがの俺でもわかる。俺が訊いてるのは、どうやって鍵を開けたかってことだ。・・・・・・バカにしてんのかこいつ。 「いや、その、どうやって開けて入ってきたんだ?」 だから今そんなこと訊かなくてもいいだろ。何やってんだ俺は・・・・・・。 「あー、ここの部屋の鍵って壊れてるンスよ。ガン!とすれば開くンスよ。つーか最近俺が壊したんですけど。」 俺の後ろでゴソゴソと音がしたと思ったら、ようやく我を取り戻した元晴が声を張り上げた。 「・・・・・・なんでノックしないんだよっ!!」 「いやぁ、手が痛くてさぁ。」明らかに嘘だろ、と突っ込むのは止めておいた。明宏は頭を掻きながら言った。「それよりそのチラリズムやめてくんない?弟に見せるモンじゃないでしょ」 振り返って元晴を見ると、顔を真っ赤にした元晴が捲れた上着を慌てて直していた。確かに弟に見せるもんじゃない。それは明らかに先ほどまでしていたことを物語っていた。 再び明宏のほうに顔を向けると大きく溜息をついていた。間近で見るとますますかっこよさが際立っていた。明宏のほうは完璧にお父さん似だった。 「・・・・・・優さん、手ぇ離してもらっていいッスか?」 俺はそう言われて慌てて手を離した。今の今まで握っていることを忘れていた。 「つか、おたくら少しズレてんじゃない」と明宏が呆れたように言った。「・・・・・・言い訳とか口止めとか、なんかしなくてもいいの?つーかしてもらったほうが俺はいいんだけど。」 そうだ、それだ。俺がまずしなくてはならなかったことはそいつだ。明宏のあまりに平然とした態度のせいですっかり忘れていた。 「あ、えっと・・・・・・」振り返って見ると、元晴は頭まで掛け布団を被っていた。「・・・・・・いまさら?」 何を言っているんだ俺は!すっかり明宏のペースに呑まれているじゃないか・・・。 明宏は心底呆れたように首を振った。 「まーいいッスよ。ある程度予想してたから。」 「えっ?」 「だーかーらぁ、二人のこと。」明宏は近くにあった椅子に座って話し始めた。「気づかないほうがおかしいッスよ。気づいたときは・・・そりゃーショックだったけど、優さんのことを話してるときの兄貴ってなんかぽわぁ〜んとしてるっつーか、幸せそうなンスよ。それ見てたらショック受けてる俺がバカらしくなっちゃって————」 俺は明宏の話を遮った。「いや、ちょっと待てよ。全然話しが見えないんだけど・・・・・・。」 「だからさ、」と、明宏は苛立たしげに言った。「まぁ確信したのは春休み辺りだったんだよね。兄貴に優さんのことを訊いたらあわあわしたからさ。でも、俺ってすげぇブラコンだからさ」と、照れたような笑いを浮かべ、続けた。「その『優さん』って奴にすっげぇ嫉妬したの。どんな奴なんだろう、俺の兄貴を取るな!変な奴だったらぶっ飛ばしてやる!!って。それで写真の一枚でも兄貴の部屋にないかなぁと思って忍び込んで、あ、そのときに鍵壊しちゃったんだけどね————」 そこでようやく、掛け布団を被っていた元晴が口を挟んだ。 「なんで勝手に部屋に入ってんだよ!!しかも鍵まで壊して!!」 「悪かったって」明宏は全く反省の色も見せずに言った。「でも仕方ないだろ、相当頭にキてたんだから。でまぁ、制服で撮った集合写真みたいなモンがあって、色々と話し聞いてたから一発でわかったよ。あーこの人が絶対優さんだって。」 その写真は多分、1個上の学年の卒業式の時に部員全員で撮った物だと思う。そのとき俺と元晴は坂田さんの両脇にいたはずだ。だから入学式のときにあんなことが出来たのか。ようやく辻褄が合った。 チラリと俺を見て明宏は続けた。 「まぁ、写真を見る限りじゃけっこー良さそうな人だったけど、納得がいかなかったんだよね。なんでこんな奴が兄貴を惚れさせることが出来るんだって。でも、今日の練習試合・・・えっとなんつったっけ?えーと、白山中だっけ?」 「・・・・・・うん。見にきてたの?」俺が訊こうとしたことを元晴が訊いてくれた。 「あぁ、友達と行ってたんだけど気づかなかった?」 元晴は首を振り、明宏が俺のほうを見た。 「いや、全然」と俺は答えた。 それにしても納得がいかないとは失礼なっ!俺だってなんで元晴が惚れたかなんてわからないんだよっ!!我ながらとても情けないとつくづく思う。 明宏は大げさに首を垂れて溜息をついた。心の中を見透かされて、わざとそうやられたのかと思ってちょっとムカッときた。 「ひっでぇなぁ・・・。入学式のときあんだけアピールしといたのに。まっ、あんだけ人がいれば気づかないのも無理ないか。」 その通りである。出入り口から溢れた奴らが外から窓を通して見ていたほどだったのだ。それに、俺は試合に必死で周りを気にする余裕がなかったし。たった一度しか、しかもほんの数秒しか会っていない人物を見つけろというほうが、どだい無理な話である。 明宏は体を左に捻り、勢いをつけてクルクルと椅子と一緒に回りだした。 回っている顔までもがはっきりと見て取れる。こいつには欠点というものはないのだろうか。俺は目を凝らした。 その視線に気付き、明宏は回るのをやめて続けた。 「まぁ、その試合見て、あー、こりゃーしゃーねぇなぁって思ったンスよ。あんだけかっこいいところ見せられたら納得しないほうがおかしいっていうか。」 「・・・・・・」二人とも黙ってしまった。 「いや、誉めてンスよ?もうこりゃー男とか女とか抜きにして、兄貴が惚れてもおかしくないなぁって思ったんス。」 いや、なんかそこまで誉められると照れちゃうじゃないか。俺は、必死でポーカーフェイスを装った。 |
| まんざらでも無さそうな顔をして話のわかる明宏クンの言葉を待った。 明宏クンはゆっくりとした口調で、続けた。 「でも、ちゃんと確認しなきゃ、優さんに会って話しをしなきゃって思ったンスよ。で、帰ってきてみたら母さんから優さんが来てるって聞いて、兄貴の部屋に行ってみたら鍵がかかってるじゃないですか?こりゃー開けちゃえば真相を確認できるな、と思って無理矢理あけたンスよ。言いたいことあったしさ。」 いきなり、明宏は膝に手をついて頭を下げた。俺は思わずビクッとなり後退りしそうになった。 「・・・・・・兄貴のことお願いしますっ!俺、兄貴の幸せそうな顔を見るのが好きなんです!」 いきなりのことに言葉を失ってしまった。それはいつのまにか俺の隣に座っていた元晴も同じようだった。明宏は構わず続けた。 「・・・・・・俺、今までこんなに幸せそうな兄貴見たことなかったんです・・・だ、だから、絶対幸せにしてやってくださいっ!」 俺は、情けないほどに感動してしまっていた。こいつの第一印象から第三印象くらいまでは最低最悪だったが、今では涙が出てきそうなほど最高な奴に変わっていた。 「わ、わかったから。絶対幸せにするから」と、俺は慌てて答えた。隣に元晴がいると思うとめちゃくちゃ気恥ずかしかった。「だから顔上げろよ?」 そう言われてようやく顔を上げ、明宏はその鋭い眼で俺の眼を捕らえて言った。 「約束ですよ?兄貴のこと泣かせたらオレ怒りますからね?」 「あぁ、そんときは怒っていいよ。なんなら殴っていいぜ。」 「じゃ、俺、本気で殴りますから。約束破んないでくださいよ。」 そこで黙って聞いていた元晴が割って入った。 「ねぇ・・・なに勝手に二人で話進めてんの・・・・・・。アキ、」元晴は弟を睨み付けて、続けた。「優さんのこと本当に殴ったら怒るからね?」 初めて見る元晴の一面に一瞬びっくりしたが、兄として弟のことを扱う元晴がめちゃくちゃ可愛くみえた。むしろ、弟が兄を怒っているみたいだった。 「もし、の話だって。そう怒るなよ」 「もしの話でもだめっ!」そして元晴はそのままの勢いで俺を睨み付けて、言った。「優さんもそんなこと言わないでくださいよっ。」 真剣に怒っている元晴があまりに可愛らしく、思わず笑いが漏れそうになるのを必死に堪えて答えた。 「わかったって。そう怒るなよ。」 「アキもわかった?返事は?」と、弟を再び睨み付けた。 「わーったよ。それよりさ」と言い、明宏が立ち上がり、俺の隣にダイブしてきたかと思うと、俺の肩に手を置いていった。「優さん、俺にバスケ教えてっ!お願い!!」 間近にあの端正な顔があり、少しどぎまぎした。なんでこう、こいつはほとんど初対面の相手の身体を無防備に触れるんだ。 それにしてもかっこいい。新1年生とは思えない顔つきだ。でも、両親を見れば納得がいく。あの二人のどこに劣性遺伝子があるのかと思うくらいなのだから。それにしても、それってあんまりじゃないか?世の中に平等とか公平とか、そんなものはあるんだろうか? 「アキっ、先輩なんだから敬語使えよ!てゆーか優さんに近づくなよ!!」 元晴はそう言って明宏と俺の間に割って入った。どっちが兄なんだかわかったもんじゃない。多分100人いたら99人が明宏のほうを兄と答えるだろう。その1人は、多分、ド近視のドアフォだ。今後、兄弟にはどちらが兄弟かわかるようなプレートを付けたほうがいいのかもしれない。 「なんだよ兄貴、焼餅か?嫉妬か?ねぇ優さん、お願いします!俺、兄貴に勝ちたいんです!!」 俺はそこでふと、疑問に思ったことを口にした。 「え、ちょっと待って。明宏ってバスケ部入んの?」 「あ、はい。練習試合ももう入るって決めた一年の友達と行ったンス。」そこで、パッと入学式のときのように破顔して言った。「あ、優さん、明宏じゃなくてアキでいいッスよ。」 それは素晴らしい!一年でこの身長はなかなかなモンだ。こうやって近くで見てわかったのだが、アキは俺よりも背が高かった。少し胸がモヤモヤして悔しかったけれど、まぁ仕方がない。しかもこのルックス。さぞかし女の子にモテることだろう・・・・・・。 「優さんこんな奴に教えなくていいよっ。てかアキ、重いって!離せよ!!」 そう言った兄を押し潰さんばかりに、アキは後ろから圧し掛かりながら言った。 「じゃあさ、平等に兄貴と俺の二人に教えるてのはどうですか?ほら、」そう言って、ニヤリと笑い、元晴を俺のほうに押し付けた。「そうすれば兄貴とイチャイチャする時間減らなくて済むじゃないですか。」 俺は元晴を抱きとめながら、思わずThat's good idea!!と言ってしまいそうになった。まさにその通りである。そうすれば元晴もアキも練習がはかどるだろうし、元晴ともイチャイチャとまではいかなくても、まぁスキンシップは取れるじゃないか。だが何よりも、今まで見ることが出来なかった弟と接している元晴を見ていたいというのが本音だった。ちなみに、俺の英語力は2歳児が話す日本語と同じだ。 だが、入部したばかりの一年に教えるのはちょっとルール違反だ。どうせならある程度、根性・基礎体力が付いてから教えたほうがいいだろうと思い、答えた。 「・・・・・・じゃあ、入部してゴールデンウィークが終わるまで耐えられたらな。そうしたら教えてやる。」 実際、一年生にとって入部してから夏休みが終わるまでの4ヶ月あまりが地獄なのだ。入部した途端に基礎体力を付けるために走り込みを強いられる。練習はとにかく基礎練習。やっとボールに触れたかと思ったらひたすらハンドリング(まさにスラダンの初期花道クンを思い起こしてくれ)。そして、五時〜五時半頃から上級生の練習の補助(シューティングのボール拾いや試合のオフィシャル)兼練習の見学。そして何よりも精神的にきついのは挨拶・礼儀だ。上級生に大きな声で挨拶するのはもちろんのこと、学校の中で先輩や先生にすれ違ったら挨拶をするのがバスケ部のルールだ。偏屈な先輩(うちの代にはいないけど)にすれ違ったことに気付かずに挨拶をしなかったなんてことがあれば一大事になり兼ねない。そして、練習中に先生・上級生の前を通るときは身を低くして通らなければならないし、ボールなどの部活道具の管理やフロアのモップ掛けにいたるまで徹底的に先輩に指導される。 ぶっちゃけると、俺は入部した当初、他の部活が練習をやっているときに間違って体育館の扉を開けてしまい、当時部長だった先輩にこっ酷く怒られた。もう、半泣きだった。 だけど、そういう伝統があるからこそ、うちのチームは他校に行っても、そこに来ていた先生や保護者に態度がすこぶるいいと誉められるし、だから良いチームが出来るんですねと言われるんだ。 アキは余裕綽々、自信満々といった感じで答えた。 「そんなのよゆーッスよ。むしろ早くベンチに入れるように頑張りますから。」 そう言ったアキを見て、腕の中にいる元晴の耳に囁いてやった。 「お前の弟すげーな。シゴきがいがありそうだな。」 俺がそう言うと元晴は心底可笑しそうに、そして嬉しそうに言った。 「えへへ、たっぷりシゴいちゃおー。アキ、入部した一年を教えるのは二年生だってことを忘れんなよ。」 しかし、アキは、ふっと鼻で笑い、立ち上がりざまに元晴のおでこを人差し指でツンっと弾いた。 「兄貴ならラクショーだな。さぁーて、俺は風呂入ってこようかなぁ。」そこで振り返り、ニヤリとして続けた。「あ、優さん、また戻ってくるんでそれまでどうぞエッチしちゃっててください。」 そう言ってアキは部屋を出ていった。どうやら明宏のほうが一枚上手らしい。 しかし、一体全体最近のガキはどうなっているんだろうか。現代の性教育はどうなっているんだ。それともあいつが特別なだけなんだろうか。時代はどんどん移り変わっていく・・・・・・。 |
| 風邪ゎ気を付けないとですよ〜↓↓ 優さんって今の時期ゎ大事な時期じゃなぃんですかぁ?? これからも頑張って更新しててって下さい!! |
| ぉぃらも風邪っす なのに明日もバィトっす しかし…なんつぅ弟くんなんだ…感動しました 優さんってぉぃくつですか? |
| ずっと楽しく読ませてもらってましたが、初めてカキコミました!俺も昔バスケしてたし、ただのエッチな話じゃなくて色んな話があるし表現力が豊かで深みのある文章なんで大好きです☆ 続き楽しみにしてますー。 |
| 空也さん>めちゃくちゃ大事な時期です(笑)まぁ今は風邪治すのに専念します^^;空也さんもお体には気をつけてください>< みかどさん>久しぶりに風邪なんてものにかかったのですが、辛いですね・・・。お互いこれからは気をつけましょう^^;今18歳です、、、。 ともさん>初カキコありがとうございます!!そう言ってもらえると嬉しいです><これからも少しずつですが更新していくのでよかったら読んでください^^; |
| ▼優さん: 凄くいい話で毎回楽しみにしてます。18歳は今が大事な時期なんだよね。 僕も13年前を思い出しました。色々と悩んだんだなぁって。あの時が懐かしいです。従兄弟の弟と妹とそう年は違わないですね。 |
| 18ってことゎ僕は元晴くんと同い年っすね |
| エイトさん>ありがとうございます!そう言ってもらえると嬉しいです^^そうなんですよねぇ・・・こんな大事な時期にこんなものを書いて、さらに風邪を引くという・・・。馬鹿にも程があるって話ですね(笑 みかどさん>お、お若い・・・・・・。私なんてあと二年で二十歳ですよ;; |
| エッチして待っててください、と恋人の弟に言われて出来るほど俺は現金な奴じゃない。しかし、なんというか、いいところで寸止めを食らわされたせいでそうもいかないような気がする。 俺の頭ン中ってそんなことしか思い浮かばないのだろうか?でも、言い訳をさせてもらうけど、そうじゃなかったら俺は今この世に生まちゃいない。そういうことがあるからこそ俺たちが生まれちゃったわけだろ? そういえば、なんだっけ。オヤジの本棚で読んだ本に、問答をしまくった遠い昔のオッサンのことを書いた本があった。まぁその変なオッサンはめちゃくちゃグロテスクだったらしい。なのに、美少年をこよなく愛したということだった。何故そのオッサンが異性ではなく同性を愛したかという理由の一つとして、「異性とのセックスは結果(=妊娠出産)が伴うため善しとしないから」みたいなことが書いてあった気がする。その他にも今と同じように多くの人が同性愛者だったらしいと伝えられている。 俺は思うんだ。どんなに偉大な人であろうと、要は美少年が好きで好きで堪らなかっただけなんじゃないだろうか?人間なんてそんなもんだろ。俺だって現にそうだ。 元晴がベッドから立ち上がりドアに向かった。鍵を捻ろうとして—————叫んだ。 「・・・・・・あーっ!あのバカッ!!鍵が閉まらなくなったじゃないかっ!!」 これはてっぺんハゲで白髪頭(+ウェーブ)の神サンの悪戯なのだろうか。そうなら是非とも育毛剤と白髪染めを贈呈したい。いっそ脱毛剤に詰め替えて送り付けたいくらいだ。 俺は声を上げて笑った。絶対シバいてやる。 「まぁいいからこっちこいよ。」 「よくないですよ・・・・・・。もうなんであいつっていつもこうなの・・・・・・。」 元晴はしゅんとし、口をとりくちにして答えた。やばい、携帯どこやったっけ。待ち受けにしたいくらいだ。 「とにかくこいよ。」そう言って隣をポンポンと叩いた。「戻って来ちまうよ。」 元晴はとりくちのまま俯いて俺の隣に座った。俺はすかさず抱き寄せ、その口に優しくキスをした。 「なぁ、その口好きなんだけど。めちゃくちゃ可愛い。携帯の待ち受けにしていい?」 「・・・・・・絶対イヤ。もう絶対しないもん。」と、元晴は真っ赤になりながら答えた。 あぁ、なんでこいつが言うどんな言葉も可愛く感じてしまうのだろう。それだけ俺が参っているってことなんだろうか? 「じゃ、無理矢理させてやる。」 そう言って、元晴の肩を掴み、ベッドに押し倒そうとした時、ガチャという音が再び室内に響いた。 「おー、やってるやってる。」 ドアのほうを見ると、ニヤニヤと顔を崩したアキの顔が覗いていた。 こいつ、三回殺してやろうかな。と思っていたら、俺の顔スレスレをビュンと音を立てて枕が飛んでいった。それは————アキの顔面にジャストヒットし、バサという音をたて床に落ちた。 「い・・・ってぇ!」 「思い切り投げたんだから当たり前だろっ!」 元晴が手近にあった目覚まし時計を振り上げて怒鳴った。 「風呂はどうしたんだよっ!!」 「わ、わかったからそれは投げないでっ!ごめん!今出てくからっ!!」 恐怖で引き攣った顔でそう言って、アキはバタンッとドアを閉めた。ドタバタと階段を下る音が聞こえてくる。 俺はその音を聴きながら元晴に訊いた。 「なぁ、おまえって物投げる癖でもあんのか?」 元晴は何事もなかったかのように目覚まし時計を元の位置に戻しながらさらりと答えた。 「この時計で9代目ですよ。」 俺はこのとき胸に誓った。絶対元晴を怒らせるのはやめようと。時計と一緒にあの世行きなんて絶対やだ。 それからアキが戻ってくるまで、元晴を抱きいだき、小学生のような柔らかなキスをしてすごした。アキは俺に恨みでもあるんだろうか? そんなことをしていると廊下を歩く音が聞こえてきた。普通の足音は聞こえないので、多分わざとドスドスやっているのだろう。俺と元晴は優しげな行為を止め、少しだけ離れてその人物が来るのを待った。 今回は律儀にコンコンとノックをし、「兄貴はいるよー?」と声を掛けてきたので、思わずプッと噴き笑ってしまった。 そう言って入ってきたアキの手にはジュースとお菓子の袋が握られており、アキはニヤリと憎たらしい笑みをその顔に貼り付けて言った。 「いやぁ、色々やって喉が渇いたかなぁと思って。」 元晴が目覚まし時計を振り上げるのとほぼ同時に、アキが扉の外に逃げ出した。こいつはいつも一言多い。 最近の小学校の性教育ってどんな授業をやっているんだろうか?実際に夫婦の情事を目の前で見せているのだろうか?俺はこの時心底そう思った。 「ねぇ、男同士のセックスって気持ちいいの?つか、どっちが女役?」 その手に持っていたジュースとお菓子をテーブルの上に置きながらアキが言い放った言葉だ。 いや、俺も元晴とそのような行為をやるまでは、好きな人とやるんだから気持ちがいいんじゃないだろうか、と漠然と思っていただけだった。男を恋愛対象(又はセックスの対象)に見られない人がそう疑問を抱くのはごく当たり前のことなんだろう。 しかし、女役ってなんだ、女役って。そんな言葉が飛び出すとは思ってもみなかった。 呆然としている元晴にアキが問い詰めた。 「兄貴でしょ?おーんなやく。どうみてもそうだよなー。で、どうなの?気持ちいいの?」 そう訊かれた元晴というと、羞恥で顔を真っ紅に染めていた。 『おいおい、そりゃーないだろ。気持ちいいって言えよ。なぁ、あんだけあんあん鳴いてんのに気持ちよくないのかよ?はっきり言ってやれよ。』 だが、元晴はその顔を俯かせたまま一点を睨んでいた。 「優さん、気持ちよくないらしいッスよ。ドンマ————」 と言ったアキの言葉を元晴が遮った。「気持ちいいよ!優さんに触られるだけで変なになっちゃったかと思うくらい気持ちいいんだよっ!!」 その時、俺は、めちゃくちゃぶったまげた。それと同時に、めちゃくちゃ嬉しかった。言葉で表現出来ないほど嬉しかった。 「あ、やっぱり気持ちいいんだ。」そう言ったアキはニヤッとして続けた。「変なになっちゃうってどんなだよ。」 「もうっ、うるさいなっ!!」 馬鹿野郎。変なになっちゃうっていうのはな、触っただけであんあん喘ぐことなんだよ。ったく、要らねぇこと訊くんじゃねぇ。 そして、アキは当たり前のようにど真ん中ストライクバッターアウトッ!のことを訊いてきた。 「まぁそれはいいとして・・・・・・」と、先ほどまで座っていた椅子に座り、チラリと俺たち二人を見た。「おたくらどこまでやったの?」 それだけは勘弁してほしかった。本当それだけは許して、何でもするからってくらい勘弁してほしかった。 もちろん、このとき俺と元晴はあれから『先』には進んでいなかった。というか、俺としてはいつでもバッチコイッ!なのだが、そんなことを無理にやることはないだろうと思っていた。元晴が痛い思いをしたり、泣いたりすることをわざわざする必要もないと———そうかっこつけてみたいところなのだが、正直言って恐かった。また元晴に泣かれるんじゃないかと思うと恐くてそんなこと出来るはずがなかった。 でも、やっぱり俺の脳みそはそういう行為を望んでいた。だけど、俺は意地でも言い聞かせた。『元晴の気持ちの準備が出来るまで待ち続けよう』と。 俺は元晴のことを一応気遣いながら答えた。 「オメガまでやったわ。お子ちゃまには刺激が強過ぎる世界さ。」 「オメガってどんだけ?」とアキは笑って続けた。「ねぇ、アナルとかやってねーの?」 ちょっと奥さんっ!今の性教育ってどうなってるの!!ほんと心配なんですけど!! 驚きの表情が隠せなかったと思う。その時の俺の顔はどんなだったんだろうか。何故、中学生になったばかりの、しかも男に恋愛感情を抱いたことのないと思われる男がそんなことを知っているのだろう。一大事だ。 「・・・おまえ、なんでそんなことまで知ってんの?」と、アホ面をさげた俺。 「そんなことどうでもいーから。で、どうなの?」 俺が口を開こうとしたら、キッとした声に遮られた。 「どうでも・・・・・・よくないよ!どうしてそんなこと知ってるんだよっ!!」 驚いて元晴のほうを見ると、めちゃくちゃ怒っている顔をしていた。そのとき、俺は元晴が何に対して怒っているのか間違って解釈していた。 「どうしてって・・・・・・」アキは言いにくそうに続けた。「だって調べたくなるじゃないかっ。兄貴が優さんのことを好きなんじゃねぇかって疑い始めたときにネットで調べたんだよ!ゲイがどうたら、バイがどうたら、男同士のエッチがどうだとか———心配で堪らなかったんだよっ!兄貴がおかしくなっちゃったんじゃないかって!!」 元晴は、ハッとして怒りの表情を引っ込めた。短い沈黙が舞い降り、その沈黙が静かに震えた。 「・・・・・・ごめん、ほんとにごめん。」と、震える声で元晴が言った。「アキにこんなこと知らせちゃって・・・・・・。」 この時、アキの言葉を聞いた時、元晴と俺は同じことを思っていたんだ————弟に、恋人の弟に、しかもまだ中学入学したばかりの弟に、まだ知らなくてもよい世界のこと、いや、一生知らなくてもよかったかもしれない世界のことを知らせてしまったと。 ネットで調べたということは、兄が男を好きなのかもしれないということに加えて、相当な衝撃を受けたんじゃないだろうか。俺だって調べたことがあったけれど、男に恋愛感情を抱いていた俺でさえ衝撃を受けた内容は山ほどあった。それだけインターネットというものは大量の情報が乱雑に散りばめられていた。 「別に気にしてねぇーよ。」とアキは言った。「調べてわかったんだけどさ、同性を好きになったりするのって別に異常とかじゃないし、変なわけじゃないもんな。そのこと知れてほんと安心できたしさ。安心ついでに男同士のセックスについても調べさせてもらったけど。」 あぁ、やっぱりこいつは一言多い。それがなければめちゃくちゃ最高な弟だったのに。まぁそれでも、元晴にとっては最高な弟には違いないのだろうけど。 元晴は立ち上がり、目の前に座る弟を抱きしめて(抱きついて?)泣いていた。 アキは狼狽しきった顔であわあわとして言った。 「お、おい、なんで兄貴が泣くんだよ。」 「・・・・・・だ、って・・・」元晴はヒクッヒクッと泣きじゃくり、「・・・・・・ア、キに・・・・・・俺の、大切、な・・・アキに、こん、なこと・・・知ら、せちゃって・・・・・・で、も・・・受け入、れてくれ・・・て・・・嬉し、くて・・・・・・」 「・・・・・・ばか。」そう言って、やり場に困っていた手を思い切って元晴の頭にそえ、その頭を撫でながら、アキは言った。「・・・・・・兄貴が思ってるほど、俺は綺麗じゃねーから大丈夫だって。」 俺というと、ただただ、この二人を微笑ましく見つめていた。それ以外にどうしろというんだ?ったく、この二人はどっちが兄なんだかわかったもんじゃない。それに加えて二人ともブラコンだ。でも、全然嫌な気持ちはしなかった。それは、やっぱりアキの人柄もあったんだと思う。そうじゃなかったら部員に感じるようにアキにも嫉妬心を抱いていたことだろう。アキと知り合って、思った。 ————俺ってなんてちっぽけな奴なんだろう、と。 |
| その夜、アキも元晴の部屋(というよりベッドの上に三人)ですごした。アキは一応遠慮したのだが、俺が無理矢理引き止めたのだ。いや、それがいけなかったのかもしれない。 その夜、奴は色々と突っ込んだ話をふっかけてきた。 「優さん、ゆうさん」とアキは言った。 「なんだよ?エロビ貸してくれとかはなしだぜ」と、健全な中学三年生の俺。 「え、なんでわかったンスか?」と、アキは心底驚いた様子で言った。「じゃあ優さん、ちょっと」 アキは身を乗り出して俺の肩に手を乗せ、わざと元晴にも聞こえるような音量で囁いた。 「・・・・・・兄貴の唇、すごく柔らかかったでしょ?」 はぁっ?!と俺と元晴は同時に叫んでいた。なんでこいつがそんなこと知っているんだっ!という疑問が一瞬にして嫉妬心に変わろうとしていた。 「なんでおまえがそんなこと知ってんだよっ!」と顔を真っ赤にして元晴が先に言った。 「あれ?兄貴覚えてねーの??」 元晴が身構えて訊き返した。 「・・・・・・何をだよ?」 「うわぁー、結構ショックだなぁ」アキはハァと深く溜息を漏らし、呟くように言った。「俺、すげぇ覚えてんのになぁ・・・・・・」 「だから何をだよっ!」 もったいぶった言い様に俺と元晴の声が重なった。嫉妬心がつい口を出てしまった。 「いや、まぁ」アキは俺のほうを向いて、ニヤニヤと顔を溶かして続けた。「兄貴がキスしてくれたことなんですけどねぇ」 元晴が憤然として口を挟んだ。 「はぁ?!おまえにしたことなんてないだろっ!」 「あー、マジでショックだなぁ。ほんとに覚えてねぇの?」アキはバカみたいに深い溜息をついて、続けた。「ほら、小さい頃俺が熱出して寝込んでるとよく額とか唇にキスしてくれたジャン」 これくらい兄弟ならよくある話だろと言いたいところだったが、元晴をチラリと見ると、ちょうど、あっ!、といった感じで思い出し、すぐに顔一面が真っ赤に染まった。 「バカッ!あんなの昔のことだろっ!!」 「俺が幼稚園とか、小1の頃だったもんなぁ」と、アキは懐かしそうに言い、続けた。「俺、兄貴にそうされるのが好きで、わざと風邪引くようなことしてよく休んだんだよなぁ」 耳まで真っ赤に染めて元晴は俯いてしまっていた。蒸気が出てきそうだ。 「バカか、おまえ」と心底呆れたように俺は言った。「アフォだろ、アフォ。」 「あ、優さん。嫉妬してくれました?焼き餅妬いた??」 こいつ、絶対シバいてやる。もう五月が楽しみで楽しみで・・・・・・図星だった。 「あー!もうっ、恋人の弟相手にめちゃくちゃ妬いちまったよっ!」俺は項垂れて呟いた。「・・・・・・情けねぇ。」 本当に情けなかった。もしかしたら自分がファーストキスなのかもしれないと思っていたところに、恋人の弟とのキスがファーストキスだったと知らされ、そんなことに嫉妬心を抱いてしまった自分が卑しくて情けなかった。 「ぷっ、よかったじゃん、兄貴。すげぇ思われてるな」と笑いながら元晴の肩を叩き、続けた。「情けなくなんかないッスよ。だってそれだけ兄貴のことを想ってくれているんだからさ」 そう言ったアキの手を払いのけながら、元晴が小さく怒鳴った。 「もう、うざい!あんなことしなきゃよかった!!」 そんな元晴を横目に、俺はぼんやりと考えていた。アキの言う通り、この嫉妬は元晴のことを大切に想うからこそ来るモノなんだろうか?本当にそうなのだろうか?いや、大切に思っているのは間違いないのだけれど、湧き出たこの嫉妬心がそう良い物なんだろうか。 「俺さ、なんか嬉しいなぁ。新しい兄貴が出来たみたいで」とアキは言い、元晴のことを指しながら続けた。「しかも、この兄貴と違って男らしいし?」 そう言ったアキの手を元晴がパチンと叩いた。手を押さえ、いってぇ、と呟いているアキに、俺は心の底から呟いた。 「・・・・・・手のかかりそうな弟だなぁ」 そうだ、あんな風に馴れなれしくしたのが良くなかったんだ。きっとそうだ。ったく、こいつはどーいう神経をしてるんだ。 通常授業が本格的に始まった翌週。俺は、少なくとも一日に一回はアキに抱き付かれていた。俺が直樹やクラスの奴らと歩いていて、それに気が付いたアキが後ろから抱き付いてくるのだ。 別にそのこと自体をとやかく言う気はない。というか、俺自身素直に嬉しかったのだ。いや、抱きつかれるのがとかじゃなくて、俺にも弟が出来たみたいで嬉しかったということだ。だけど、困ったことに、その場面を必ず誰かが目撃しているわけで————— 俺は、火曜日には女子の質問責めに遭っていた。 「ねぇ!優君、あの子とどういう関係なの?」とか「あの子ってバスケ部の元晴君の弟なんでしょ?」などなど。でも最後に————【紹介してっ!!】という言葉が決り文句のように付いていた。 正直、もう疲れた。その話をアキにしたところ、「いや、嬉しいけど、俺、自分好みの女の子以外興味ねぇーンスよ」と言われた。 そのおかげで毎回毎回、「いやぁ、紹介とかあんま好きじゃないみたいよ?あいつ」と言って断る羽目になった。誰も俺の魅力に振り向いちゃくれない。そもそも魅力なんてあったんだろうか・・・・・・。肝心なことを忘れていた。 そんな中仮入部が始まった。仮入部というのは、新一年生が二週間だけ、どの部活にも入って仮体験が出来るというお試し期間みたいなモンだ。その仮入部で一年の面倒をみるのは二年の仕事だ。去年、俺も元晴たち二年の面倒を何回か見た。 まぁ、仮入部というのは猫を被っているから注意したほうがいい。うちの部活なんかは、仮入部ではめちゃくちゃボールを触らせる。そりゃー試合とかはないけど、基礎的な練習から一対一まで全てやらせる。まぁ所謂詐欺だ。 アキというと、奴は練習試合を一緒に見にきたという友達と真面目に二週間全てをバスケ部に費やした。感心感心。もちろんのこと、女の子も二週間途切れることがなかった。 だが、間も無くそのワイワイバスケのお時間も終わりだ。 |
| ぃぃっすね ってか優さんたちみたぃな純愛がしたぃです↓↓↓ |
| 先に書いておきますが、これから少しの間は結構ディープでシリアスな話になります。そういうのがダメな方は見ないほうがよろしいかと;; 一週間が終わり、土曜日になった。その日は午後から練習だったから、昼飯を作る際に夕飯を一緒に作り、家を出た。空はどんよりとした雲に覆われ、少し肌寒かった。 その日の練習も充実した収穫の多い練習になった。練習の最後に、先生がゴールデンウィークにある大会に出るということを部員に伝えた。 その大会は毎年参加している大会だった(俺は2回とも応援参加)。結構大きな大会で県外からの招待チームが2チーム、県内から有望校を何校か呼び、あとはその大会が行われる地元の学校が参加するというものだ。 現時点での参加校の名前を聞いてびっくらこいた。県大会優勝争いの大本命(県選メンバーが一番多い学校と県選のシューター一人がいる学校)が参加してくるとのことだった。この二校は郡市大会の上の地区大会で同じ地区で、過去に一度だけ練習試合をしたことがあるんだけれど(もちろん俺はベンチ)、相当強かった。手も足も出ないってこういうことを言うんだなと思ったほどだ。 だから、その話を聞いたみんなの眼の色が変わった。自分たちがあれからどれだけ成長し、奴らとの差をどれだけ縮めることができたのか。それとも抜き去っているのか。それを試したくて試したくてウズウズしてるって感じだった。 俺というと、あの時試合にも出ていなかったから特にこれと言ったものはなかった。ただ県内トップの学校に今の自分がどれだけ通用するのかということが楽しみで仕方がなかった。 体育館を出るとき、本間に9時に行くからと伝えられた。9時ならこれから軽く居残り練習して、それから元晴とゆっくり帰って、夕飯を食って風呂に入っても大丈夫な時間だった。 しかし、余裕をかまし過ぎたため、俺が風呂に入ったのは8時20分を過ぎていた。慌てて入ったのだが、上がったのは9時05分を少し過ぎたあたりだった。これでも俺にしてはかなり早い。 そのときちょうどチャイムが鳴り響いた。俺は慌てて下着を身に付け髪を軽く拭き、オリーブ色のハーフパンツ(普段着で着なくなった奴)とぶかぶかの廃れた感じの色合いの長袖Tシャツ(これまた普段着で着なくなった奴)を被り、玄関に走った。 鍵を捻り、ドアを開くと、いつもと変わらない本間がつっ立っていた。待たされて少しイラッときてたみたいだ。 「なんだ、風呂入ってたのかよ」 本間は俺の髪をくしゃくしゃとして言った。 「風邪引くぞ。あーマジさみぃ」 ドアの間から吹いてくる夜風は本当に冷たかった。既に桜が咲いた時期の春風とは思えないほどだった。 「・・・・・・さむっ、早く入れよ。マジで風邪引きそー」 俺はそう言って本間を中に迎え入れた。 本間を部屋に上げ、俺は一旦髪を乾かし、冷蔵庫からジュースと缶チューハイとスナック菓子(普段は滅多に食べない。というか炭酸飲料とスナック菓子は部活で一応禁止されている。)を手に取り、部屋に上がった。 本間は床にごろりと横になり、手近にあったと思われるファッション雑誌をパラパラとめくっていた。服装は黒のスウェットだったが、本間が着てると何故かどこかのスゴい服のように思っちゃう。キムタクが何を着ても似合うみたいな意味。 俺は手に持っていた物をテーブルに置き、CDをセットした。小さなツブツブの穴からガンガンと弾けた声が飛び出してくる。カレーを作っていた時に聴いていたアレだ。 本間が呆れたように言う。 「おまえってほんとそればっかり聴くよな」 「別にこれしか聴かないわけじゃねーよ。ただ日本のヤツで聴くのが少ねぇだけだって」 俺はそう言ってレモン味の缶チューハイを指さして言った。 「コレ、飲む?」 本間は呆れたように笑い、少し悩んで答えた。 「・・・・・・一本にしとくわ」 そういえば、家族や親戚を抜かして初めて一緒に酒を飲んだのは本間だった。小5だっただろうか。泊まりに来ていた本間が酒を飲みたいと言い出したので(恥ずかしながら、既に俺は酒に呑まれるなんて可愛い頃は過ぎていた)、いきなり白ワインを飲ませたのだ。もちろん、一口飲んでワインを拒否したので飲みやすいチューハイに交換したのだった。今では本間も結構イケる口になっている。 プシュという音を立てプルトップを開けた。ゴクゴクと音を立てて飲む。風呂上りの喉を炭酸がシュワシュワと刺激して気持ちいい。 「————カァーッ、やっぱ風呂上りに飲むのはうめぇなぁ」とオレ。 それを見て、本間は飲んでいるチューハイを噴きそうになりながら言った。 「オヤジくせぇ。俺らまだちゅーがくせーだぞ」 チューハイを一本空けた後、漫画を読んだり、雑誌を読みながら昔話をしたり、部活の話をしてすごした。 すごく懐かしかった。あの頃が戻ってきたかのようにさえ思えた。昔はこの光景が毎週のように目の前にあった。毎日のように一緒に帰り、また明日会えることをわかっていながら、少し寂しくなった。だけど、あの頃は決して『またな』とは言わなかった。だって、また明日も会えるとわかっているのだから。 部屋を満たしていた音楽がフェードアウトしていく。俺は別なCDに変えようと膝立ちになりCDラックから選び出し、CDをセットしようと膝立ちの状態で手を伸ばす。背後で彼が動く気配がし、ふわりと俺の後ろの空気が動いた。 伸びをやめ、体を戻そうとした時だった。ガバッと音とともに胸に腕が回され、背中に暖かな感触が伝わってきた。コンポが機械音を出しながらCDを吸い込んでいく。 「・・・・・・おい、」 俺は平静を装い、言った。 「何してんだよ、離せよ」 言葉に反してより強く抱き締められる。振り向こうにも振り向けない。本当に、本当に、冗談だと思った。悪い冗談だと思った。思いたかった。 「なぁ、いてぇーよ。俺なんて抱いてねーで真美ちゃん抱きゃーいいだろ」 冗談に聞こえるように言った言葉が無情にも室内にこだます。これ以上このままでいたら不味いと思い、本間の手を払おうとしたときだった。 「・・・・・・なんで、」 頭上から低い声が降りてきた。 「なんでお前の口からあいつの名前聞かなきゃなんねーんだよっ」 意味がわからなかった。いや、わかろうとしなかったんだ。どうしても否定しなきゃ。どうにかして逃れなきゃ———— 「・・・・・・何意味わかんねーこと言ってんだよ。酔ってんじゃねぇよ」 俺は無理矢理明るく笑って、彼の手から逃れようと身動ぎした。しかし、本間はいっこうにその腕を解こうとしない。俺は自分の意思をしっかりと込めて叫んだ。 「離せって。おいっ!離せよ!!」 そう言った俺の言葉に反応したのか、鎖のような腕がふわりと緩んだ。振り返ろうと体を反転させようとしたとき———肩に外部の力が加わり、勢いよく反転した。 気付いた時には、目の前に本間の長い睫毛があった。そして、自身の唇には柔らかで暖かな感触が押し付けられていた。俺は慌てて両手で彼の体を押し返した。 しかし逆にそれを拒むように、本間はいっそうきつく抱き寄せ、荒々しく髪の中に手を突っ込んでは逃れようとする俺の頭をしっかりと押さえ込んでしまった。自身の唇に生暖かい感触が蠢く。俺は必死に唇を閉じ、塞がれた口でうめき声を上げながら、必死になって抵抗した。 「ん・・・・・・、んん・・・・・・!」 押しても押しても離れようとしない本間の胸の中で、俺は精一杯もがいた。 そのうち、ふと押え付けていた力が緩み自由が利くようになった。だが、次の瞬間にはドスッという音が耳に届き、腹部がぺしゃんこになるくらい本間の拳が食い込み、鈍い痛みが走った。唇からブハッと息が吐き出される。 その間を生き物のように蠢く彼の物が侵入してくる。チューハイ独特のレモンの味が口内に広がる。抗おうと試みたところ、再び新たな熱が腹部に加えられた。息が勢いよく洩れる。腹部が熱に侵され、感覚が無くなってくる。痛みと口内に蠢く生暖かな感触で頭がぼんやりとする。 何が何だかわからなかった。どうしてこんなことになっているのかわからなかった。どうして本間がこんなことをするのかわからなかった。ただただお腹が熱を持ったように鈍く痛み、それが嫌で嫌で堪らなかった。自然と頬にひんやりとしたものが流れた。 ふわりと身体が浮いた。次の瞬間、ガツンと床に頭を打ち、頭がクラクラと揺れまわった。気が遠くなる。だが、冷たい床と後頭部を次々と襲う激痛が無情にも意識を繋ぎ止める。見上げる眼の端には、鋭い眼差しでゴールを睨み付けているアイバーソンが映っていた。 腹部にドンッと衝撃が走り、潰れた。下方に目をやって、初めて彼が上に圧し掛かったのだとわかった。俺は顔を引きつらせながら叫んだ。 「や・・・・・いやだ!やめろっ!」 言葉は無情にも室内を反響し、本間は無理矢理唇を重ねてくる。何とか逃れようと、彼の体を突きはなした。だけど、元々小柄な俺の力は一回りも大きな本間の比ではなく、情けなくもまるっきり歯が立たない。それでも必死になって握り締めた両手を振り上げ、メチャクチャに彼の背中を叩いた。本間の顔が苦痛に歪み、一瞬押えている力が緩んだ。俺はすかさず彼を思いきり突き飛ばして、彼の胸の下から這いずるようにして逃げ出した。 しかし本間は容赦しなかった。這いずって逃げようとしている俺の足首を掴み止めると、ぐいっと力一杯に引きずり寄せ、うつ伏せで這いつくばっている俺の腰の上に乗っかり、体重を掛けて押え付けてしまった。 そして乱暴にシャツをたくし上げ、引き千切るように脱がせようとしてきた。 俺は必死になって体を捻り、なんとかそれに抗おうとした。 心臓がドクドクと早鐘のようにうっていた。彼の眼に訴えかけようと震えながら本間を見ると、その顔は氷のように冷たく凍り付き、だが灼熱の炎みたいに熱く燃えていた。恐ろしかった。こわかった。まるで本間じゃない別の見知らぬ人物のようだった。 体を射るようなキツイ瞳が俺を食い入るように凝視し、まっすぐに結んだ唇がわずかに開き、氷のように冷ややで低硬い言葉が発せられた。 「・・・・・・黙れ、命令だ。」 |
| やっばい☆いつ読んでも優さんの話ゎ最高ッス☆ 風邪ゎもぉ大丈夫ですか-? |
| マジ楽しみにしてます☆ぉもしろすぎです↑ |
| 面白い…ってゆっていいのかわからないけど、面白い展開になってきましたね〜。 続き、めっちゃ楽しみにしてます♪ |
| めっちゃ続ききになります |
| 切ないけどつづきがよみたいです!! |
| 更新遅れてすみません;;風邪はまだ少しきついです><皆さんの感想すごく嬉しいです!!では、続きです。 本間の冷酷な言葉が耳に届いたその時————パッとあたりが真っ暗になった。 一瞬何が起こったのかわからず、咄嗟にあたりを見回した。だがそこにあるのは果ての見えぬ闇だけだった。 頭の中がメチャクチャになる。グラングランと深奥を揺さぶられる。目を瞑ろうにも、そこにあるのも暗闇だけだった。必死になって、辺りを見回した。心臓がバクンバクンと胸を突き破ろうと激しくうっている。 そこに、一筋の冷たい感触が走った。金属の感触だ。どこかで覚えがある感触だ。スーっと、僕を違う空気が包み込んだ。 パチッという音とともに辺りに光が溢れた————そこは僕の家だった。 ふと安心したのも束の間、言い知れぬ恐怖と不安が津波のように押し寄せてきた。 そこに、リビングに、一人の少年が入ってきた。 その幼い少年はランドセルを投げ出し、CDラックに駆け寄り、室内を音楽に満たした。モーツァルトのピアノ協奏曲20番だ。しかも僕が好きなミケランジェリが弾くものだ。すると、僕の中にわずかな安心感が流れてきた。ふと、僕は気付いた。 『この幼い少年は僕だ。小学三年生の頃の僕だ。』 僕は本棚に駆け寄って本を抜き取り大きな国語辞書を手に取り、そしてテーブルを囲む僕がいつも座る席に飛び乗るように足を抱えて座った。だが、それは、僕には覚えが無かった。 その間、僕は孤独感による不安と恐怖、寂しさと心の苦痛に耐えていた。それはあまりにも強烈で、残酷で、冷酷なものだった。心とともに身体までもが押し潰されそうなほど、僕を圧迫した。 『何故幼き僕は本を読む?僕の記憶にはそんなことは何処にもない。ただ、暇なときに小説を読んでいただけのはずだ・・・・・・。こんなのやだ!こんな孤独感なんて知らない!!知りたくない!!!』 目に文字が飛び込んできた。永遠と思えるほど続く印刷字。それは僕を物語に引き込む文字のつらなり。そして絶対的な安心感が僕を包み込んだ。 そうだ、いつもこうやって僕は小説を読んでいたんだ。好んで小説を選び取り、国語辞書を使って読んでいたんだ。物語の中に救いを求め、物語の中に入り込み、この言い知れぬ孤独感から逃れようとしていたんだ。 そして僕は物語によって救われていた。小説は常に僕の孤独感を消し去ってくれていた。いや、僕は小説の中に入ることによって、その孤独感を忘れていた————数時間だけのはずだったものが、数年間という長い間。 やがて辺りが夜の闇に包まれ、僕は食事を作り、一人で食べた。彼はリビングを出ていき、しばらくして戻ってきた。そして再び幼き僕は小説を手にし、読み始める。時計の針が夜の9時を過ぎ、やがて幼き頃の僕はテーブルに突っ伏し、音楽で満たされた部屋の中で眠りに落ちた————いつ帰ってくるかわからぬ親を待ち焦がれて。 再び世界が真っ暗になる。恐怖が背中を這い上がり、体が不安で震え出す。僕は足を抱え丸くなり、耐え忍ぼうとした。だけど、いっこうに出口が見えない暗闇が永遠と続いている。 『音楽がほしい。本がほしい。本はどこ?音楽はどこ?光はどこ?』 目の前に白くてか細い、それ自体が発光しているかのような少年の腕が伸びてきた。ふと、温かなものが手の平に触れる感じがした。 スーッと白い一筋の光が僕を包み込んだ。それは次第に広がり、僕を安心へといざなった。 すると、パッと閃光が走った。体がガクガクと震えているのがわかる。僕は慌てて辺りを手で探ろうと闇雲に手を伸ばした。 「・・・・・・本は?本はどこ?ねぇ!どこなの!!」 自身の叫び声が耳を打つ。体の震えがいっそう強くなり、それに伴い不安の雲がムクムクと大きくなり続ける。 一瞬、僕を呼ぶ声が聞こえた。再度、僕の名前を呼ぶ声が聞こえた。手の平に、温かな、柔らかな感触が戻ってくる。僕は、その感触を離さまいと手に力を込める。すると同じように僕の手を潰さんばかりの力が返ってきた。 雲が———段々と去っていく。真っ暗だった空に、光が差し込んだ。 『———優、大丈夫か?おい!』 先程までは靄がかかったようにしか聞こえなかった声が、今度ははっきりと聞こえた。それは、長年僕を安心させきってきた声だった。僕は声のするほうに、空いている手を伸ばそうとすると、全身を温かな感触が包み込んできた。 再度、パッと白い光が僕を射した。 木目が眼前にあり、散らばった雑誌が目の端に見えた。ガクガクと体が震えている。だけどそれを抑えるかのような温かな重みが僕の体を包んでいた。 僕は咄嗟にその方に手を伸ばし、抱き付いた。 「・・・・・・こ、わい・・・・・・こわ・・・い・・・よ・・・。」 自身の唇から言葉が漏れているのはわかったけど、まるで自分の声じゃないみたいだった。その甲高く震えた声は続けた。 「・・・・・・や、、だ・・・ひ、とり・・にし、ない・・・で・・・た、すけ・・・て・・」 僕に安心感を与えつづけてきた声が耳に入った。 「・・・・・・どうした?大丈夫か?」 僕はその温かな声の主にしがみ付き、恐怖と不安から逃れようとした。そして、僕は彼と唇を重ね合わせていた。自ら彼の首に腕を回し、自ら唇を重ねていた。 どこにも行ってほしくなかった。独りになりたくなかった。怖かった。一人になるのが、怖くて、こわくて、堪らなかった。 頭にパッと閃光が走った。しかし今度は真っ暗にはならず、明るいままだった。 辺りを見回すと、机や椅子が綺麗に並んだ空間に沢山の少年少女がいた。扉のほうに目をやると、ちょうど一人の少年が入ってくるところだった。 『・・・・・・僕だ。』 幼き頃の僕はその扉の向こうにいる少年たちのもとに駆けていき、そして飛びついた。 僕を絶対的な安心感が包み込んだ。それは、僕がずっとずっと求め続けているもので、ずっとずっと傍に置いておきたいものだった。 『そうだ・・・。僕はみんなといる間だけは忘れることができたんだ。僕にとってみんなが全てだったんだ。だから僕は常に誰かといようとしてたんだ。自分の傍にいる人を離さまいと一生懸命だったんだ。離すのが怖かったんだ。一人になるのが怖かったんだ。』 少年たちの笑い声がフェードアウトしていくとともに、木の色をした暖かな教室が遠のいていった。 |
| 初めて読みました!!! 後輩との関係って検索して 古いのも全部読んじゃった↑↑ すごいおもしろいんで 続きお願いします! |
| やっとエロ・・・。えっと、気付いてくれた方もいらっしゃると思いますが、この話では『僕』『俺』と使い分けてあります。のちのち色々とわかると思うので暖かく見守ってください^^;では続きです。 温かな人の感触が戻ってくる。そこは先程の教室とは異なり、冷たく、暗い部屋だった。 彼が、いつもの彼じゃなくなったのが怖かった。僕のもとを離れていくようで怖かった。離れていってほしくなかった。傍にいてほしかった。もう二度とあんな孤独感を味わいたくなかった。一人なんて絶対に嫌だった。恐ろしくて頭が変になっちゃいそうで怖かった。 『だけど俺はどうしちゃったんだ。俺は何をやっているんだ。何をやっているのかわかっているのか?』 遠くのほうで引きとめようとする自身の声が聞こえた気がしたが、唇からは全く別な言葉が洩れた。 「・・・・・・離さないで、、なんでもするからどこにもいかないで・・・・・・」 自分が何者なのかわからなくなっていた。何がなんだかわからなかった。自分の中で二つの意思がぶつかり合って、でも表に出るのは恐怖と不安から逃れようとする意思だけで・・・・・・。 先程の温かな言葉から一転、再びあの冷ややかな口調に戻った彼が言った。 「・・・・・・なんでもするんだな?」 僕は必死になって首を縦に振った。その冷酷な声に、再び体が震え出していた。よくない、よくないのに体が言うことを聞かなかった。無音の世界、無明の世界、孤独の世界が、僕を支配することに耐えられないと『僕』が叫んでいた。 「じゃあ」と彼は言い、抱き付いている僕を引き離し、頭を引き寄せて、続けた。 「・・・・・・フェラしろよ。そうしたらここにいてやる」 俺は目を見開き、目の前に現れた物を凝視した。既にいきり立って、硬度を持ったソレが俺の目の前にあった。一瞬抵抗感が脳裏を過ぎったが、僕は誘われるかのように、彼のものを手に取って唇をあてた。びくんと彼と彼のものが震える。 「・・・・・・うっ」 一瞬彼はその感覚に声上げ、僕の頭を撫でながら言った。 「マジでやるとは思わなかったよ」 僕は跪く形で彼の足の間に顔を入れ、彼の先端を何度か舌先で舐めて、そしてすっぽりと口の中にくわえこんだ。大事なものを扱うように頭を撫でられるのが心地良くて嬉しかった。 僕の口内で彼のものがすっかりと硬くなり、大きさを増していく。彼を感じさせなくちゃ、そうしなきゃ彼がどこかにいっちゃう。舌先で彼の割れ目を愛撫すると、その度にそこからドクドクと彼の物が溢れてきた。いつもと違う味がする。でも、そう感じるのは何処か遠くにいる誰かで————僕ではなかった。 僕は必死になって奉仕した。舌を絡めたり、唇で扱いたり、思いつくかぎりのことをやった。 しばらくすると、今まで我慢していたのか、彼の息が明らかに荒くなってきていた。彼のあそこが脈打っているのを感じる。このまま僕の口で逝ってほしかった。そうすれば彼はもう僕から離れることができないと思った。僕はその乱れた呼吸を聞きながらラストスパートを掛けようとした。だけど、彼は手で僕の頭を押さえて拒否した。 「もういい。やめろ」 僕はわずかに口を開き、首を小さく左右に振ってくぐもった声で答えた。 「やだ。口でいってよ、このまま」 「だめだ」 僕の口から彼のものが抜けていった。僕は上目遣いで彼に哀願した。 『離れないで。僕を独りにしないで』 彼は、ふっと鼻で笑い、僕の肩をガッと掴み、仰向けに倒した。いきなりのことに少し抵抗してしまったが、彼の力の前では全くと言っていいほど無意味だった。 「おまえの中でいく」 僕は自身の頭の中で、その言葉を反芻した。すればするほど、それは魅力的で僕を酔い狂わせた。頭の深奥で声がした。 『やめろ、今すぐはねつけるんだ。こんなのは俺じゃない!』 だけど、僕の体と心は完全に彼の虜になっていた。僕は彼を離したくなかった。そのためなら何をしたっていい、自分がどうなったっていいとさえ思っていた。ただ、独りにはなりたくなかった。 彼は僕の身に付けているハーフパンツと下着を一度に取り去り、まじまじと僕のものを凝視した。 「びしょびしょじゃねーか」 彼に言われて初めて気づいた。僕のものは今にも頂点に達しようとしていて、その先は大量の汁で光を反射していた。 彼は机の上に置いてあった財布を取り、そこから小さな袋を取り出した。てっきりそんなものなんて無いままやるのかと思っていた。僕は媚びるような甘ったるい声で言った。 「貸して?つけてあげる」 彼は驚いた顔をしたけれど、素直に僕に手渡した。僕はそれを彼のものにくっつけて、口でつけ始めた。そんなことが自分にできるとは思ってもみなかった。僕は、僕じゃないんだろうか?そんな僕を見て、彼はバカにするような口調で言った。 「そんな技どこで覚えたんだよ?まさか男とやったことがあるとか言わねぇよな」 (おとこ?僕は男とやったことがあったんだろうか?) すると、ひどい頭痛が襲ってきた。頭の中からガンガンと音が聞こえる。僕はきつく目を瞑り、痛みを振り払うようになんとか口を開いた。 「ないよ。こんなこと、初めてしたよ」 「まぁ、どうでもいいか」 そう言って、彼は軽々と僕を抱き上げて、ベッドに落とした。スプリングが軋む音が部屋に響き、それに同調して僕の体も弾んだ。 仰向けに寝転がった僕の足を高々と持ち上げられ、彼のものが押し入ってくるだろうところが露になる。彼の視線をそこに感じ、僕は恥ずかしくて両腕で顔を隠した。 一呼吸おいて生暖かい何かが厭らしい音を立てて僕のあそこに触れた。びくんと体が震える。僕は驚き、腹筋を使って上体を起こすと、足と足との間に本間が蠢いていた。彼が何をやっているのかがわかると、僕は羞恥心で押し潰されそうになった。 「き、きたないからやめてよ」 僕は体を捻り抵抗しようとしたが、しっかりと足を押さえられていて、何の意味もなさなかった。 「やめていいのかよ?ひとりになるのがこわいんだろ?」 彼はそう言ってペチャペチャと音をたて、何度もそこを舐めた。その度に僕の体におかしな感覚が走り、僕は声を上げそうになって、慌てて口に指を咥えた。 それでも彼は容赦なく責め続けてきた。刺激の連続で頭がおかしくなりそうだった。全身が震えるような快感が走る。 (こんなところが感じるなんて絶対変だよ。僕、おかしくなっちゃったのかな。) ふと、刺激がなくなった。ゆっくりと這い上がってきた彼が咥えている僕の指を抜き取り、顎に手を掛け、じっと僕を見つめた。 「声聞かせてくれよ。感じてるんだろ?」 彼の瞳に僕が映っていた。そんなことに僕は歓喜していた。彼の傍に僕がいる。僕の傍に彼がいる。絶対的な安心感。 (早く入れて。僕を君で満たして。僕から離れないで。) 僕が素直に頷くと、彼は僕の口の中に節々がしっかりとした彼の指を差し入れてきた。僕はそれを舌で絡め取り、その味をゆっくりと味わった。少ししょっぱい味がした。 チュパという音を立て引き抜かれ、僕のあそこに押し当てられた。 次の瞬間、彼の指が僕を押しのけ、分け入ってきた。強烈な異物感が僕を襲う。本来あるはずのないものが僕の中で蠢き始めた。悲鳴が喉を突き破って飛び出しそうになった。 「・・・・・・ん!」 だけど僕は必死になって声を押し殺して唇を噛んだ。涙がにじんで溢れ出す。絶対悲鳴をあげたくなかった。そうしたら彼が嫌がって、この行為をやめてしまうかもしれないと思った。 二本、三本と指が増やされ、僕のあそこはそれに順応していく。異物感も痛みも薄れ始めた頃、いっきに指が引き抜かれた。 「・・・・・・入れんぞ」 先程までとは桁違いの痛みと異物感が僕を襲う。体が勝手に逃げ出そうとするのを、彼に強くすがってなんとか耐えた。全身の骨が軋んでいる感じがする。 彼が僕の中をかき乱す。受け入れるのが初めてのそこは、やっぱり物凄く痛かった。だけど、彼が僕の中にいるという事実が僕を高揚させる。まるで自分の体内全てを彼に埋め尽くされてしまったような錯覚がする。 彼の荒い息が耳に届いた。感じているんだ、僕で彼は感じているんだ。自然と涙が溢れてきた。痛みによるものなのか、彼が傍にいることによるものなのか、それとも別な何かなのか。 彼は脇に抱えていた足を離して、更にぐっと深く折り曲げるようにして押し付け、体を寄せてきた。押し入られる深さが増し、少しだけ苦痛を感じて僕は眉をひそめた。 だが、痛いと感じたのはその一瞬だけで、その後に信じられないような得体の知れない感覚が襲ってきた。 「あん!・・・・・・ん!」 体が反り返った。思わず漏れた声を必死に封じ込める。彼がスライドする度にわけのわからない快感が僕を突き刺した。僕はどうにも我慢出来なくなり、あさましく声をあげた。 「あっ、ふああっ、あん!」 甲高い声が自分の意思に反して勝手に喉の奥から飛び出してくる。僕は慌てて指を咥えたけど、甘ったるい鼻声だけは止めようがなかった。 「ん・・・・・・ふっん・・・んん!」 彼のそれが、ある一点に触れてわけのわからない快感を生み出している。有無を言わせない、今まで体験したことがない快感が僕を支配する。 (僕、絶対おかしいよ。どうしちゃったんだろう。) 僕の中にいる彼が激しさを増してきた。強烈で激しいスライドに強烈な痛みを感じるが、それ以上に中で生み出される快感のほうが強烈で、僕は狂ったように声をあげた。 「ああっ、ん・・・い、やっ、あん!」 僕は彼の背中に手を回し強くすがりついた。グッと彼が強く突いてきたのとほぼ同時に、小さい呻き声が聞こえたかと思うと、彼のものが僕の中で脈打っているのを感じた。 下腹部にひんやりとした奇妙な感触を感じて覗いてみたら、僕の先端から白い液体が溢れてお腹に何本か筋を作っていた。自分もイッたことに少しびっくりした。別に逝きそうだったわけじゃないのに。でも、僕は感じていた。彼が僕の中にいる、彼が僕で感じているという事実が、僕を精神的に昂ぶらせていた。 彼は僕に覆い被さり、荒い息を整えようとしていた。僕は彼の息遣いと温かさを感じながら、意識が遠のいていくのに身を任せた。深い眠りに落ちていくなか、ポツポツと雨音が聞こえたような気がした。 『ねぇ・・・そばにいてくれるよね?』 |
| 優さん、小説家でデビュー出来ますよッ!! 内容がマヂ深ぃ♪ 風邪ひいてるし大事な時期なのに更新してくれて嬉しいッス☆ 頑張って下さい♪ |
| 凄くいい作品です。自分の心理をここまで分析して書けるなんて、強さを感じました。 自分の心の奥にあるものが出てくる事、自分もあるけど、深くは見つめられません。それを表現した優君は、強いですね。 色々忙しいと思いますが、無理しないで続き書いて下さい。 |
| 深淵と続く闇の中、道の上に少年が一人佇んでいる。ポツポツと降る雨に打たれ、髪の毛が額にへばり付く。その少年は歩き出し、前方に水溜りを見とめ、跨ごうと足を伸ばそうとした。だが、足が滑り、その深淵に続く闇の中に落ちた。 ハッと飛び起きる。掛けられていた毛布がバサッと床に落ちた。辺りを見回すといつもと変わらぬ俺の部屋だった。静寂の中、外からは地面を打つ雨音が聞こえていた。 不意にズキンッと腰に激痛が走り、俺は声にならない呻き声を上げた。その瞬間、昨晩の出来事がフラッシュバックのように、俺の中に雪崩込んできた。 「・・・う・・・うぅ」 俺は小さな苦悶に満ちたうめき声を上げ、再びゆっくりとあたりを見回す。しかしそこには本間の姿はなく、テーブルの上に一枚の白い紙がのせられていた。俺は死にかけの兵士のように激痛を耐えながら這いつくばり、ようやくそこまで辿り着き、白い紙に乱雑に書かれた文字を読んだ。 『起こしても起きなかったから先に行く』 ただそれだけが書き記されていた。否定しようにも、深奥を貫く耐え難い痛み、そしてこの手紙が紛れもない事実を示していた。 俺はその紙をくしゃくしゃに握り潰し、自身をひどく呵責した。 『何故俺はあんなことをしたんだ。俺はどうしちゃったんだ。』 ポタポタと涙が落ち、床を濡らしていく。それは拭き取れば済むようなものではなかった。深く染み込み、一生そこから消え去ることのないものだった。 自分がわからなかった。自身が恐ろしく、怖かった。あの時、俺は何処へ行ってしまっていたのだろうか。霞がかった記憶の糸をたどろうにも、そこには第三者が覗いていたかのような混沌とした記憶しかなかった。快感と倒錯した思いに酔いしれていたのは紛れもなく自分なのだが、そのどれも全く覚えがなかった。ただ、下半身に走る激痛のみが俺の中に残っていた。 俺はひどい罪悪感に苛まれ、その場にうつ伏せに倒れ込み、床に拳を何度も何度も叩きつけた。やがて拳が切れ、そこから赤い液体が流れ出てきたが、何も感じなかった。自分を痛みつけることで、この罪悪感から逃れようとした。元晴のあの笑顔が浮かび、明宏のあの真剣な顔が浮かび、俺はうめき泣きながら拳を叩きつけつづけた。 自分が、何者か、わからなかった。自身を何度痛みつけようとも、それはわからなかった。赤い液体が、その度に飛び散るだけだった。 やがて、涙が枯れ、腕の筋肉が疲労し、俺はぐったりと床にひれ伏した。ただそこには、鉛のように重い罪悪感の塊が転がっていた。 近くにあった目覚まし時計を見上げると、既に昼の12時を指していた。練習は1時からだったが、到底出る気にはなれなかった。本間と顔を合わせたくなかったし、何よりも腰の痛みが強烈過ぎて立ち上がることもままならなかった。 グゥと腹の虫が鳴く。こんなときでも腹って減るもんなんだと自嘲気味に思ったが、食べる気なんて全くおきなかった。 ふと自分の下半身を見ると、しっかりとハーフパンツを履いていた。そういえば毛布もちゃんと掛かってあったよな・・・・・・。改めてテーブルを見ると、昨晩までそこにあったジュースや空き缶、食べきったスナック菓子の空袋がなくなっていた。 俺は恐るおそるごみ箱の中を覗きこんだ。目を背けたくなる現実がそこにあった。スナック菓子の空袋と一緒に、白濁とした液体を包み込んだ物が、異様な存在感を示してそこに捨てられていた。 激しい頭痛が俺に襲い掛かってきた。内から棍棒でガンガンと叩かれているような耐え難い痛みに、俺は頭をかかえ転げまわる。 『かして?つけてあげる。』『ないよ。こんなことしたのはじめてだよ。』 甲高い少年の声が耳を打ったと思ったら、体がガクガクと震えだした。得体の知れぬ何かが背中を這い上がり、体中が総毛立つ。 突然、自分が一人であることが不安で堪らなり、何故だか咄嗟に手近にあった小説を手に取り、慌しくそれを開いた。 だが、次の瞬間、俺はその本を投げ飛ばしていた。震えがいっそう強くなる。忘れ続けてきたことがそこにあった。昨晩俺を支配しつづけたことがそこにあった。 その日、俺は膝を抱え、丸くなりながら震えつづけていた。 翌日の月曜日はどんよりと暗い曇り空だった。昨日はろくに寝れなかった。寝てもすぐに嫌な夢を見てしまい飛び起きるため、まとまった睡眠がとれなかった。暗い部屋のなか独りでぽつんとつっ立ってる夢だった。 学校に行きたくなかった。本間と顔をあわせることが恐かった。またあの時のように我を忘れてしまうんじゃないかと思うと怖かった。だけど、家に一人でいるほうが恐ろしかった。 せめて朝練だけでもと思い、俺はいつも通り朝の日課をこなし、いつもより一時間以上遅く家を出た。正面玄関を抜けると、見知った顔が色々と声をかけてくる。返事をするのも億劫で、なんとか愛想笑いを浮かべるのがやっとだった。彼らがひどく明るく輝いてみえた。自分がひどく汚く感じられた。 教室の前に着き、扉に手を掛けたが、それがひどく重く感じられ、なかなか開けることが出来ずにいた。そうしていると、背後から声をかけられ、思わずびくんと跳ねてしまった。 「優、おはよー」 「・・・・・・なんだ、ミッチーか・・・・・・。おはよ」 「なんだとはなんだよ、失礼なヤツだな。今日はどうしたんだ?寝坊か?」 俺は適当に頷き、そのまま俯いた。 「なんだよ、元気ねぇなぁ・・・・・・おい、それどうしたんだよ!」 ミッチーは愕然として言って、扉にかけている包帯でぐるぐる巻きにされた俺の右手を指差した。俺はなんでもないといった風を装って答えた。 「あぁ、昨日ちょっとガラスで切っちゃったんだ。大丈夫だよ」 俺はそう言って、まだ釈然としないミッチーをおいて、扉を開け、教室に足を踏み入れた。俺は包帯に巻かれた手を隠し、俯いて床に視線を落として投げかけられる挨拶の嵐に怯えていた。『本間がいたらどうしよう・・・・・・』今更どうしようもないのに、俺はそんなことばかりを考えていた。 いつも一緒にいるグループの声が耳に入り、俺は意を決して顔を上げた。そこには、リラックスして笑い声を上げている数人のクラスメイトがいた。 俺は、誰にも気付かれることなくホゥと安堵の溜息をつき、自分の席に荷物を置いた。 「おはよ。なんか元気ないじゃない?」 まともに夏姫の顔が見れなかった。というか、自分の顔を見せれなかった。もしそうしたならば、絶対彼女なら何かを感じ取ってしまうと思った。俺はできるだけ自然に見えるように答えた。 「・・・・・・おはよ。ただの寝不足だよ」 俺はそう言って、手をかばいながら机に突っ伏し、外部との接触を自ら拒否した。うちの学校には、暗黙のルールとして、机に突っ伏して寝てる奴は起こしちゃいけないってのがある。起こすとしても教師だけだ。 しばらくして、ガラガラと扉を開ける音が教室に響いた。誰かが入ってきた。思わず身構えてしまい、教室の声に神経を集中させる。 すぐにわかった。声を聞いただけで誰なのかわかった。俺は必死になって寝たふりをした。顔を上げることなんて出来るはずがなかった。彼が恐かった。いや、自分が怖かったんだ。彼と接触することによって変わってしまうかもしれない自分が恐ろしかったんだ。 SHRの始まりを合図するチャイムが鳴り、カツンカツンと歩く音をさせてみっちゃんが教室に入ってきて、毎朝必ず言う一言を言った。 「日直号令お願い」 命じられた日直の起立という声とともに、ガガガガーと無数の椅子が床と擦れ合う音が響く。その音の中、俺はできるかぎり前を見ないようにして立ち上がり、号令に合わせて挨拶した。 SHRで机に突っ伏していると怒られるので、俺は右手を机の下に隠し、俯いて自分の太股を見ていた。 「おい、下見てどうしたんだ?カンニングの練習か?」 こんな時にそんな直樹の冗談に笑って返せるほど俺はタフじゃない。それよりも、誰かこいつに椅子の座り方を教えてやってくれ。小学校のうちに俺が教えておくべきだったと今更ながら痛感した。 「眠いんだよ」 そう一言だけ答えると、直樹は素直に前を向いた。さっきも言ったけど、うちの学年では眠い奴はそっとしておくってのが、暗黙のルールなんだ。本当に眠くてこのルールを使う奴なんて滅多にいない。中学生なんてものは悩むのが仕事みたいなもんで、その分だけ嘆息するもんなんだ。だからこんな暗黙のルールが生まれたんだろう。 目の左端に本間の背が映った。俺は慌てて目を反らし、何か別なことを考えようと試みたが、てんで駄目だった。いつまでも頭からその姿が離れなかった。 その日の授業全てを机に突っ伏すか、下を向いてすごした。みっちゃんの授業がないのがせめてもの救いだった。小学校から今まで一度も給食を残したことがなかったのに、その日はスズメがついばむほどしか食べれなかった。 昼休みになり、教室にいることも辛かったので保健室に行こうとしたら、いきなり制服の袖を掴まれて階段脇に引きずり込まれた。 「おい、どうしたんだよ?元気ねぇにもほどがあるぞ」 俺が顔を背けようとしたら、直樹はそうはさせまいと俺の顎を掴んだ。 そうやって心配してくれる直樹の存在がとても嬉しかった。だけど、どうしてだろう。俺は直樹の手を振り払い、内心とは裏腹なことを口走っていた。 「・・・・・・おまえには関係ねぇよ」 自分の口から出た言葉に愕然とした。俺は何を言っているんだろうか。まだ言葉もろくに話せなかった頃から常に一緒にいた奴に、俺はなんてことを言い放ってしまったんだろう。だけど話せるはずがなかった。大切な人を巻き込みたくなかった。こんな汚く、真っ暗なところに引き込みたくなかった。 直樹はそう言った俺の肩を掴み、壁に押し付けた。その拍子に頭も打ってめちゃくちゃ痛かった。直樹は俺を壁に押し付けながら怒鳴った。 「関係ねぇ・・・わけないだろ!その手どうしたんだよ!俺らダチじゃねぇのかよっ・・・・・・なぁ、なんかあったんだろ?」 言葉の最後は本当に心配そうな顔をして、直樹は呟くように言った。その優しさに一瞬心が揺らいだが、俺は淡々と言った。 「・・・・・・ガラスで切っただけだって。悪いけど、そっとしといてくれよ・・・・・・」 俺は唖然としている直樹の手から逃れようと身動ぎしながら言った。 「離してくれよ・・・・・・」 そう言われて力の抜けた直樹の手から逃れ、俺は保健室に続く廊下を歩いていった。 ———呆然としている直樹をそこに残して。 |
| つづき楽しみにしてるっすm(__)m 待ってるときも楽しみ!! |
| どこぞの恋愛小説ょりもドキドキします 続き気になります |
| みかどさんの言うとおり(≧ω≦)♪ そこらの小説とかより優さんの話の方がいいッス☆ 続き待ってるッス〜ヾ(´▽`☆) |
| 毎回興味を持ってよませてもらってます! 優さんの書く話は、ただ単にHだけの話じゃなくて、細かく登場人物を紹介してくれていて、こちらとしてもすごく興味ももてて、読みやすく、たまにある優さんのツッコミも本当におもしろいです!! 気長にまってるんで、ゆっくりでもいいんで、続きがんばってください。 |