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 ▼(完)工藤進英、、好きだった人I  東 伸之 06/4/18(火) 21:22
   ┣Re(1):(完)工藤進英、、好きだった人I  あさひ 06/4/20(木) 9:10
   ┗(完)工藤進英、、好きだった人II  東 伸之 06/4/21(金) 0:35
      ┗(完)工藤進英、、好きだった人III  東 伸之 06/4/22(土) 0:59
         ┗(完)工藤進英、、好きだった人IV  東 伸之 06/4/23(日) 0:21
            ┗Re(1):(完)工藤進英、、好きだった人IV  あさひ 06/4/23(日) 23:07

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 ■題名 : (完)工藤進英、、好きだった人I
 ■名前 : 東 伸之
 ■日付 : 06/4/18(火) 21:22
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    幸せを噛み締めていた。
 ずっと続けばいいと思っていた。
一方でいつか終わりが来る、という事も視えていた。
だが、今はそんな事は考えたくない。
至福に埋もれていたかった。

 俺は自転車登校を止めた。
特に俺は歩くと片道30分はかかる。
だが、一緒に遊ぶ時間なんか、なかなかとれない。
だからこそ、少々辛くても朝の時間は一緒に過ごしたかったのである。
進英「妥協」
俺「コンプロマイズ」
進英「衝突」
俺「コリジョン」
進英「絶対」
俺「アブソルートリィ」
進英「まぁまぁだな」
俺「どうも!」
進英「パイ イン ザ スカイ」
俺「空に浮かぶパイ?」
進英「絵に描いた餅、、辞書開いた時に見つけた」
俺「分かるわけないじゃん」
進英「お前外国語大だろ。みんなそれぐらい分かるぞ」
俺は言葉に詰まった。 
でも、工藤クンのやさしさが嬉しかった。
こんな何でもない様な時間が大事であった。
永遠に続けば、と切に願った。

 とある日の学校。
俺「きょーへー。ちょっといい?」
恭平「ああ」
俺は昼食後、校庭に連れだした。
恭平「チビ、なした」
俺「あのさぁ、、、俺、工藤クンと付きあってんよ」
恭平「あっ?うそ、マジで!?いつから?」
俺「もう2週間くらい経つかな。学校サボった時あったしょ。あの時くらいだよ」
恭平「2週間前、、お前、なんですぐ言わん?」
俺「いたた、痛いってばさ。やめてよ」
恭平「許さん」
じゃれていた。
恭平「まぁ、とにかくおめでとう。てかお前この、、」
俺「痛い、分かったってば、ごめんって。ごめんなさい。ギブ、ギブ」
息を吸ったと思ったら、笑っていた恭平が真剣な面持ちになって、
恭平「お前もよく告白できたな」
俺「えっと、、告白は俺じゃないんだ」
恭平「、、なに?どういう事?」
俺「うん」
俺は洗いざらい話した。

 話を聞き終えた最初の一言。
恭平「なんかうらやましい」
俺「なにが?」
恭平「ホントの恋愛って感じがして。お前も工藤も真剣で、熱くって。
   俺はそこまで誰かを真剣に想った事なんてないからさ」
俺「彼女とすごいラブラブじゃん?」
恭平「まぁうまくいってるし、好きではある」
俺「何かあるの?」
恭平「今はお前の話」
俺「わかった」
恭平「お前の聞き分けの良さは特筆だわ。よろしい。
   そうか、お前と工藤がね。そういう事って実際あるんだな」
俺「驚いた?」
恭平「かなりな」
俺「俺も信じられないよ」
恭平「チビ、、よかったな」
そう言って、両手で頬っぺたをつねられた。

俺「きょーへーさぁ〜」
恭平「あん?」
俺「うんと。前から聞こうと思っていたんだけど」
恭平「言ってみ?」
俺「ゲイって気持ち悪くない」
恭平「気持ち悪いよ」
即答だった。
俺はすごく悲しくなった、が次のセリフの前には怒りに変わっていた。
俺「キモイって、、分かるけどさ、そんなハッキリ言わなくてもさぁ。
  じゃあなんで、キモイのに話しかけたのさ」
恭平「ガナルなよ。やっぱ芸能人のゲイとかTVとか雑誌の親父同士とか、
   アニキ〜とか気持ち悪いじゃん」
俺は黙って聞いた。
恭平「それが世間のイメージだし、俺のイメージ。
   だけど、俺はずっとお前を見てきた。すごい一途で真っ直ぐで。
   絶対、工藤とは付き合えないって、お前自身分かってたもんな。
   そこが一番切なかった。でもお前は必死にもがいていたよ。
   お前見て、そういう恋愛もあるんだなって初めて知った、教えられた」
俺「そっか」
恭平「お前と話すうちにあんま関係ないんだと思った。人を好きになるって。
   それに、俺はお前もそして工藤もすっごい好きなんだ。
   だから、なおさら違和感なかったのかもしんね〜。
   どっちもすごく悲しくて、寂しくて。だけど一生懸命で。
   お前も工藤ももっと上手く生きられないかな、って思ってた。
   不器用すぎんだよ」
俺「うん」ちょっとうっ、と固唾を呑んだ
恭平「だから、お前には告白して欲しくない、と思ってた。
   お前がしないって言った時、ちょっと安心したんだ。
   傷つくお前見るのは、やだし。
   でも応援するって決めたから、俺なりに葛藤があったんだぜ?」
俺「全然、知らなかった。きょーへい、ごめんね、そしてあんがとね」
恭平「おう。
   あと工藤に対しては、もっと楽しんで欲しいなって思ってた。
   高校って一生に1回しかないだろ?
   中学の事は分かるけど、だからって高校までだったら、もったいないべ。
   せっかく一緒のクラスになったんだし、いい思い出を作りたいと思ってた」
 恭平ってホントいいヤツだな、って改めて思い知らされた。
恭平と友達になれて良かった。俺は、俺の低いながらの人徳に感謝した。
俺「きょーっていいヤツだよね」
恭平「なによ急に。はずい」
俺「いいヤツだよ」
恭平「おだててもなにもでやせんぜ」
下を向き、やや歯が見えていた。

 昼休みも半ばを過ぎる。
恭平「だから、どっちにも楽しく生活して欲しかった。それだけなんだ。
   お前が告白する、って言ったらどうだっただろう。素直に応援出来たかな?
   わかんね〜。告白してたら、どっちも失う様で怖かった。
   お前には悪いけど、このままの関係でいれたら、、と思ってた」
俺「俺さ、さっき工藤クンがゲイだって知ってた、って言ったじゃん。
  だから、なんかそれを利用して告白する、ってなんか卑怯だって感じたんだ。
  ゲイだから、告白すれば付き合える、なんて事は勿論思ってないよ。
  だけど、その選択はとれなかった。
  告白しても、俺がゲイだって皆にバラされない、って思うのずるいから」
恭平「そういうとこが不器用なんだよ。でも俺の好きなとこでもある」
俺「だから、告白しない、、って決心した。
  でも、自分でも苦しいのが分かった。
  なんで好きな人に告白できないんだろうって。
  でも、これから先はそれが当たり前なわけでさっ。
  両思いになる事なんて絶対ないし。人と付き合うことなんて無理だし。
  それを考えると虚しくて、、
  自分が欠陥品みたいな気がして、、」
恭平「、、」
俺「あっ、重くなってゴメン。でも、その代わり工藤クンとは友達になろう、
  すっごい仲良くなろうって思ってたんよ。
  あとはきょーへーと同じだよ?」
恭平「俺がもし『するな』って言って告白しなかったら、お前は幸せだったのかね?」
俺「きょーへーの言った通り、わかんないよ」
恭平「、、」
俺「だから、、付き合えたんだって。フラレタわけじゃないんだから」
恭平「そうだけど、、」

 チャイムが鳴り、そろそろ戻る時刻だ。
恭平「工藤と仲良くなれたのはお前のおかげ。サンキューな」
俺「きょーへー、いっつもありがとね」
恭平「話が戻るけど、やっぱゲイはキモイと思う。
   だけど、お前と工藤なら、なんでかな。キモイと思わない。
   お前と工藤が幸せなら、俺もうれしいよ」
俺「ありがと」
恭平「幸せにしてもらえ、そして幸せにしてやれ」
俺「うん」
 最後、明日結婚する娘と父の会話みたいになってしまったが、恭平の友情に浸かっていた。

 ───────────────────────────────────────  ■題名 : Re(1):(完)工藤進英、、好きだった人I  ■名前 : あさひ  ■日付 : 06/4/20(木) 9:10  -------------------------------------------------------------------------
   やっぱり良いですね〜◎
友情が感じられましたー。

 ───────────────────────────────────────  ■題名 : (完)工藤進英、、好きだった人II  ■名前 : 東 伸之  ■日付 : 06/4/21(金) 0:35  -------------------------------------------------------------------------
    学校では勉強するものだ、、と思うようになったのもこの頃。
進学校過ぎたのか、おそらく誰一人疑問に思わなかったと思われる。
他の学校の友達がうらやましいとも。
別に下に見ていたわけでも、開き直っていたわけでもない。
とにかく勉強に全霊を傾けていた。

 恭平と話をして、学校は終わり。
急いで予備校に向かう。
札駅降りてすぐのところ。
さらに授業。これが眠くて眠くて。
あの時が人生で一番きつかった。
でも、恵まれていたともいえる。
親のお金で学校に行ける、、もっと大学に行ってから、勉強すれば良かった。
後悔先に立たず、とはよく言ったものだ。
あとの祭りとも言う。
 予備校の帰り途、汽車とバスの中ではいつもは寝ているのだが、この日はめずらしく起きていた。
考えていた。工藤クンの事を。
昼間の事もあってか、考えているうちに俺は無性に工藤クンに会いたくなった。
居ても立っても居られない。
 よくよく考えると、なんか付き合えているのが嘘の事のようで、付き合った今も不安で不安で。
 俺は家に着いてから必死で自転車を漕いだ。
工藤クン家の近くまで来ると、テレフォンボックスに駆け込んだ。
10円玉を4枚入れる。
工藤クンにつないでもらった。
進英「もし?伸之?どうした?」
俺「ごめん、、ちょっとでいいから会えない?」
進英「今どこ?」
俺「公園の公衆電話」
進英「分かった」

10分後。
進英「待たしたな」
走って来たのか息が少し上がっている、、
俺「ごめんね」
進英「いいけど、、なした」
俺「工藤クンに会いたかった」
俺は無様にも、恥ずかしい部分を曝け出した。
ノブヒデは何も言わず抱きしめてくれた。
俺「ヒデくん、、苦しいよ」
進英「しゃべんな」
俺「うん」
 甘えたのはこれが最初だ。
それは自然で。
たぶんこういう部分が好きなんだと思う。
俺はベラベラ喋る男はあんまり好きじゃない。
というより、むしろ大人しい人が好きなんだと思う。
態度で示してくれる。
男らしいって思う。
 好きって言われるより、ずっと確かだった。

 家の近くでこういう事したくないんだけど、とちょっと苦笑いをしていた。
俺「ごめんね」
進英「謝んな。付き合ってるんだから」
俺「俺たち付き合えているんだよね?」
進英「当たり前だろ」
俺「俺さ、なんか不安でさ」
進英「ばか。お前だけじゃないし」
俺「ヒデくんも?」
顔を見合わせた。

俺「ヒデくん、、俺のどこが良かったの?」
進英は俺の体を指さしていた。
俺「体?、、なわけないよね」
進英「心、お前の心」
俺「へっ、、俺の心?」
 俺は遅れて理解したが、はずかしかったのは俺だけじゃない。
こういう時、どこに視線を送ればいいのか分からない。
瞳孔は右往左往していたに違いない。
雰囲気を察してか、場がもたなかったか、
進英「そのキモイ顔も」
と付け加えた。

俺「ありがと、ヒデくん。もう大丈夫だから」
俺は既に帰ることを考えていた。
進英「ちょっと待て」
俺「えっ?どうしたの」
進英「その、、なんだ、、」
俺「??」
進英「ああもう、言いづらい。お前こそ、俺の事ホントに好きなんかよ」
 俺は初めて、工藤クンが俺の事を好きなんだと実感が沸いた。
それとなんだか可愛くてちょっと笑ってしまって、、
そんな事言う人じゃないのに、、なぁ
少し彼はムッとした。
進英「おい」
俺はマジで答えた。
俺「全部」
進英「はっ?」
俺「工藤クンの匂い、ルックス、性格。全部好きなんだ」
沈黙が走る。
気まずい。
進英「なんか嘘みたいだな」
俺「うん」
 立ち位置は違えど、同じことを考えていた。
俺と工藤は別のベクトルを進んできた。
だが、同じ点に向かっていると意識できた。
それはつまり、終点も見えていた。
繰り返すが。。

 俺は初めてのデートに胸を躍らせた。
工藤クンとの話の後、俺から誘ったのだ。
お互い受験生だから、あまり時間もなかったけど。
それに学校終わりで、遅くなってしまった。
まずは大通り付近でフラフラ。
 タワレコでいろいろ視聴。
工藤クンはスティビーワンダーが好きで、俺はミスチル。
 俺が未だにスティビーが口ずさめるのはノブヒデのおかげだ。
昔聞いた音楽を聴くと思い出す。追懐の情。
向こうも思い出すのだろうか?
 その後、びっくりドンキーで食事。

 今日は目的があった。
ファクトリーで映画を観る。
『ディープインパクト』
映画館で見るには最適だ。ストーリーも割と感動的で。
でも、しみじみとはしてなくて。
なにより追ってくるスケール感がいい。
我ながら、なかなかいい選択だった。
 映画館の帰り道、夜もなかなか更けていて。
誰もいない夜道、「手冷たいね」などとしらじらしい事を言ってみた。
期待していた。
だが工藤くんは聞こえなかったのか、無視していたのか、恬然としていた。
 俺は心の中で舌打ちする。
暫し歩いていると、俺の手に工藤クンの手が当たった。
偶然?
 だが、次の刹那にはハッキリ分かった。
軽く握り締められていた。
顔は見れない。はずい。
抱きしめられるよりずっと緊張した。
慣れてないのだ。
ぶっちゃけ生きてきて初めて手をつないだ。
 手に汗握るのがわかる。
心臓の鼓動が高鳴る。
言葉は必要なかった。
 札駅までの10分間なんだか気持ち良くて。
いよいよ近くなったら、手が自然と離れる。
俺はちょっとからかってみたくなって、
俺「もっと握っていたかったね」
工藤「ばか、返答に困る事をいうな」
耳まで真っ赤にしていたっけ。
俺は、心底ノブヒデが好きだったんだと思う。
そして、心底愛されていたんだと思う。
『追慕』

応援ありがとうございます。あと2〜3話ですので良ければ見たって下さいね。

 ───────────────────────────────────────  ■題名 : (完)工藤進英、、好きだった人III  ■名前 : 東 伸之  ■日付 : 06/4/22(土) 0:59  -------------------------------------------------------------------------
    夏休みの中盤はいつも決まっていた。
祖父の法要。
あれから毎年、父の姿があった。
もう違和感はなかった。
父がその場に居たからでないが、異を唱える者はいなかった。
 お坊さんの説法を拝聴する。
台所で茶菓子の用意。
その時の俺と祖母の会話。
祖母「毎年、ありがとうね。今年は受験でしょうに」
俺「俺、おじいちゃんが好きでした」
祖母「あの人は幸せだったでしょうね」
なんか懐かしくなった。
久しぶりに祖父を近くに感じられた。
祖母「あの人が亡くなる2,3日前、こんな事を言ってたんですよ」
俺「どんな事ですか?」
祖母「どうやら自分の死期が近い事が分かっていたみたいですね。
   ノブ君と将棋を指したいって言っていました。
   私や息子・娘の事よりも、ノブ君ですから。
   思わず、笑ってしまいました。
    同時に私なんかは妙に納得してしまいましたね。
   孫の可愛さは別格なんです。私にはよく分かります」
 俺は急に寂しくなった。
祖父に会いたくなった。
だが会うことは叶わない。
もう届かないところに逝ってしまった。
もっとおじいちゃんと一緒にいれば良かった。
 一年措いてそんな事を考えるなんて。
だが俺もようやく死というものを感じ取れた、気がした、、

 夏休みのホンの一時の空白。
嵐の目にはまだ続きがあった。
俺は自分の家に居た。
つい出来心が働く。
狙っていたわけではない。
たまにテーブルに手帳が置かれる事があった。
いつもは気にも留めない。
ただこの日はいけない事だと思いつつ、つい覗いてしまった。
 期待とは裏腹に速記で仕事の事が書いてあった。
しか書いていなかった。
なんだ、、と思い、テーブルに戻す。
 その時、一枚の写真が手帳から零れる。
やばい、どのページだ?とすごい焦っていた。
落ちた写真を手に取る。
俺と父そして、祖父の写真。
俺の苫小牧に行って間もないくらいの頃だ。
雑誌に載っていた写真。
 うわっ。父の意外な側面を見てしまった。
俺は戻そうとした、が後ろにも何か書いてある。
父の字だ。
「1996年6月 父と息子と。
 想像に難くない。酷だったであろう。
 だが、あれにとっても祖父だ。
 いつか気付く事が出来るだろう。
 疎遠だった祖父と一緒に生活できた事にどんな意味があるのか。
 父へ、私は親不幸を貫くでしょう。  
 お許し下さい。某(ぼう)はすべき事があります故」
 
 俺はジグソーパズルが好きだ。
ただ昔、1ピース無くした事がある。
気持ち悪くて、気持ち悪くて。
共通するが、モノを失くす事がある。必死で必死で探す。
探している時には出てこない。
諦めるしかないのだが、見つかる事もある。
 俺は今やっと最後の欠片を手にした。
『at length』全てが繋がった。
見てしまったから知る事が出来たが、それが本当の意味で分かるのは、父の言うようにずっと先の事なのであろう。
 いつから、考えていたのか。
俺の事を。
思い起こせば、俺が小さかった頃、父とよく遊んでもらった事がある。
ハッキリと思い出せない。
なんかぼんやりとした輪郭は浮かび上がるのだが、、
 父はずっと俺の事を考えてくれていたのかな?
遠くにいると思っていた存在がじっと見守ってくれていたなんて。
なんか、、言葉では言い表せないな。。

 或る朝。
父が仕事の為、席を起つ。
俺は朝食のパンをかじりながら、父に一言放つ。
俺「父さんの息子は苫小牧に行った事、後悔してないと思いますよ」
コンマ止まったが、すかさず、
父「くっく、あれだけ未練たらたらのお子様がな。
  不肖息子に宜しく、伝えておけ」
俺は一泡吹かせるつもりが、逆襲に遭い徒爾に終わった。
まぁあの一言は俺の本心だったけど。
父さんありがとう。。

 夏が終わるといよいよ、受験一色。
夏も、天王山と言われ、そうそう変わりはないが。
 俺は工藤クンの進路が気になっていた。
今まで、そういう事について語ったことが無い。
いや、俺が外国語大だという事は前々から言っている。
だから、俺だけが知らなかった。
機を逃していた。
 工藤クンも言えなかったらしい。
理由は、、だった。
『京都大学』日本第2位の超一流。
ここ一高でさえ、現役は1年置きくらいだ。
進英「別に隠すつもりじゃなかった。
   普通に言いづらかっただけだ。
   それにまだ決定した訳でもないし」
俺「俺、別に何も言ってないし」
俺は、、普通に苛立っていた。
誰に?俺に。。
進英「俺も外国語大にするかな」
俺「冗談止めてや。外国語大行って何勉強するのさ」
進英「ドイツ語やフランス語、第二言語習得法や教授法」
俺「それで?なにすんの?」
進英「通訳とかアナウンサー」
俺「へ〜将来、弁護士になって、闇金で困っている人とか、虐待に困っている人
  救うんじゃなかったんだっけ?かなりガッカリしたんだけど」
進英「、、」
俺「なんか言ってや。俺がバカみたいじゃん」
進英「俺はノブユキと同じ学校がいい、、進路はまた考えてもいい」
 俺は、、分かっていた。
本気で自分の将来の夢を捨てようとしている。
多分、俺への義理だ。
おそらく、愛情とかではなく俺へのお返しだ。
 うっ、、胸に氷の釘が突き刺さる。
言わなければならない。
俺も工藤クンの事を真剣に愛していたから。
だが、俺にもそれは厳しすぎた。

俺「なんてね。冗談。ごめんね。
  お互い受験頑張ろうね〜
  俺に気を使ってくれたんでしょ。離れ離れになるって。
  大丈夫だから。ずっと一緒にいるって言ったじゃん。
  京都に行っても、会いにいくからさ」
進英「俺も東京にはしょっちゅう行くと思うしな。
   ケンカして別れるまでは一緒にいよう」
俺「うん」
 俺は、、俺たちは、、終局図を既に入れていた。
多分、お互いがお互い布団の中で泣いていたに違いない。
『痛哭』

 ───────────────────────────────────────  ■題名 : (完)工藤進英、、好きだった人IV  ■名前 : 東 伸之  ■日付 : 06/4/23(日) 0:21  -------------------------------------------------------------------------
    1月1日。
1999年。どうやら今年の7月には恐怖の大王がやってくるとの事。
恐ろしい。いやおぞましい。
 ともあれ、新年。受験も間近。
だが、俺はちっとも焦ってはいなかった。
もう俺の受験はほぼ終わっていた
諦めたという事じゃなく。
指定校推薦、こんな便利な制度があった。
 俺より工藤クンの方が大変なのだ。
センター英語で180点くらい取らなければならないようで。
俺じゃ全然無理。
天才って案外近くにいたりする。
根本的に頭の造りが俺とは違うのだ。
 あだし事はさて措き、俺と工藤クンは神社に来ていた。
北海道神宮。場所は円山公園と同じ。
流石に混んでいて、なかなか前に進めない。
100万人が毎年変わらず足を運ぶのだ。
屋台のたこ焼きが食べたいが進路は変更できない。
ぎゅうぎゅう。
工藤クンとの距離が近い。
照れくさかった。

 何とか境内の扉が見えてきた。
、、とすごい行列だ。
境内には人数制限がかけられていた。
少しずつ、少しずつ。
30分は待っただろうか。
ようやく中に入れた。
進英「北海道神宮は他の神社と違って、北に向いて建っているんだとさ。
   明治政府がロシアに対する、精神的な砦の役割を求めていて。
   鎖鑰(さやく=外敵の侵入を防ぐ)だったんだとさ。
   ほら、元寇の時から、か、、
俺は割って入った。
俺「歴史は苦手だって言ったじゃん」
進英「あいよ」
話を聞きたかったが、俺には難しすぎた。
 次に俺たちは揃っておみくじを引いた。
俺は、、末吉。
工藤クンは大吉。
いつも思うのは小吉と末吉どっちがいいのか?だ。
同じなのはどっちも、気分が冴えないという事で。
工藤クンは俺を見て笑っていた。
悔しい。バカにされている、、
俺「どうせ末吉ですよぅ」
進英「ははは、末吉?狙ったの?笑いの神が降りて来てますよ」
俺「来てません(怒)」
進英「はは」
なんだか俺もおかしくなってきて、つられて笑った。
 肝心の中身だが、学業は成就、健康は概ね、恋愛は、、待ち人来たらず。。
そこがなんともリアルで嫌だった。

進英「神社には、松の木と杉の木が植えられているの知ってる?」
俺「杉は分かるけどね〜なんで?」
進英「おみくじ貸してみな」
俺「ハイ」
工藤クンが俺のおみくじを木に結った。
俺は黙って、後ろ姿をじっと見つめていた。
進英「良いおみくじは松の木に。悪いのは杉に。教えてやるよ。
   いい事が起きるように『待つ』。
   やな事が『過ぎ』ますように、って事。
   おし、これで大丈夫だから」
 振り向いた笑顔にはえくぼが浮かんでいて。
ホントに憎たらしいほど、可愛くて、カッコ良くて。
あったかいヤツで。
もっともっと一緒に居たい。
改めてそう思った。

 俺たちはその後、家の近くの小学校でスケートを滑る事にした。
縁起も良くないし、骨折したら大変だ、って反対したんだけど。
まぁいいじゃん、という一言に負けた。
 大抵、札幌の小学校にはリンクが張られている。
札幌はスキー、苫小牧はスケートなのだが、俺はどっちも問題なかった。
というより、運動は苦手な俺でもスキーは2級なんだ。
 家から二束、靴を用意した。
久しぶりに氷の上に。
そういや、1年近く滑ってないや。
リンクは円形に作られていて、中央にはアスレチックジムなどが設置されている。
ただ滑っていた。無論、人っ子1人いない。
黙々と滑っていた。
 流石、向こうは本職だ。桁が違う。
多少のリンクコンディションの悪さをものともせず、スイスイ泳いでいた。
俺「ちょ、、早、、待ってよ」
進英「目、瞑って走ってるんだけど」
 マジで!?人間じゃないし。
よく考えたら、普段の体育の授業ではかなり彼は手を抜いていた。
特に去年のスケートとホッケーなんか三味線を弾いていて。
何をやっても様になる。自分とは正反対。
いつも余裕っぽいのが。
なんか嫌味なヤツ、、ちょっと奥でそう考えてた。

俺「もう止めた」
進英「なんで」
俺「追いつけないもん」
進英「まっ当然かな」
俺「ムカつく」
進英「ほれ」手を差し伸べた。
俺「いいよ、、」
進英「ほれ」
俺「、、」
手をとった。
徐々に加速していく。
気持ちいい。すごいスピードが出ているのが分かる。
バイクの後ろに乗っている様な気持ち良さ。
進英「スケートいいだろ」
俺「うん」
最高だった。

 工藤クンはまだ滑っていた。
細身で、薄着だったから、体のラインがすごくキレイで、見とれていた。
そしたら、いきなりガガッと。
こけたのだ。バカな、、
 俺は靴をもう履き替えていたので、全速で駆けつけた。
俺「何やってんのさ、、工藤クン?大丈夫?ねぇ」
進英「やだね。年は取りたくないね」
俺「バカ言ってないでさ。ちょっと大丈夫なの?」
進英「あぁ」
なまら(めちゃくちゃ)焦った。
進英「あそこ溶けて穴になってて、見えないからさ。はまった」
俺「だから止めよって言ったじゃん」
進英「お前と滑りたかったから」
俺「そっか、ごめん」
、、
進英「でも嬉しかったかも」
俺「何が?」
進英「お前が心配してくれたから」
俺「あのねぇ、だいた、、
 俺は体ごと引き寄せられた。
工藤クンの上に覆い被さっていた。
そして、、俺は奪われた。
えっ、、て感じで。もうなんかあっという間で。
 初めてのキス。
ただただ唖然。呆然自失。
今時、こんなに遅いヤツもいないだろう。
でも、誰にも負けないくらい最高の一瞬だった。

 ───────────────────────────────────────  ■題名 : Re(1):(完)工藤進英、、好きだった人IV  ■名前 : あさひ  ■日付 : 06/4/23(日) 23:07  -------------------------------------------------------------------------
   うん、すごくいいですね!!思わず微笑んでしまいましたー。

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