慎一さん、カズヤの仕返しとしたら根深くて怖いよね…。のっちさん、そう言えば確かドSで甘えただったよね〜。U2さん、前の彼氏の事は忘れなきゃダメだゾ。新しい恋に向かって進もうね。
かなり落ち着かない日々が続いたが、そんな俺を知ってか知らずかカズヤからの連絡は試験の終了まで全くなく、鬱積した気持ちを心の内に貯めていくだけになっていた。
その間ヒカルと頻繁に会っていたが、溜まったものが時々外に漏れ出してきて、それをヒカルにブツけてしまう事もあった。それでもヒカルは黙って受け止めてくれる事が多かったが、時には堪忍袋の緒が切れるのは当然と言えば当然だ。
光「何読んでんの?」
俺の家に遊びに来たヒカルと今日もマッタリとした時間を過ごしていた。ヒカルはゲームを、俺はコタツに潜って雑誌を読んでいる。
俺「…雑誌だよ」
光「何の?」
俺「…なんだろ」
光「洋服か?」
俺「…うん」
光「…車?」
俺「…うん」
光「…聞いてんのか?」
俺「……うん」
光「おい!」
いきなりコントローラーを投げつけると、俺の襟首を掴み、顔がつき合わさるくらいまで乱暴に引き寄せられた。
光「空返事してんじゃねぇよ」
俺「…痛いって…」
光「俺の事が気に入らないのか?」
俺「…別に…」
悪いのは俺でも、ヒカルの視線に負けじとつい睨み返してしまう。
光「最近一緒にいたっていつもフテくされてんだろ?言いたい事があるなら言えよ」
俺「くっ…苦しいって…」
その言葉でようやく首を解放され、俺は肩で息をしていた。
光「俺が何かしたか?」
俺「ううん」
光「じゃなんだよ」
俺「…ごめん…何だか分からないけどすごく苛々してて…」
正論を並べられた時にはやっぱり素直に謝るしかない。
光「こんな時期に喧嘩すんのイヤだけどな、何かあるならちゃんと話せよ」
俺「…そうだよね。卒業まですぐだし…そう言う事だからかな…なんだか落ち着かなくて」
苛つく理由としては確かにそれもあったが、今はカズヤの事の方がほとんどだ。でも今はそれを話すわけにはいかない。
光「…ヤだぜ、喧嘩だけは」
ヒカルも今度は俺を優しく引き寄せる。
俺「…ホントごめん」
それから2時間くらいだろうか、黙って抱きしめていてくれた。こうして頭を撫でてくれるヒカルのその温もりが、俺の気持ちを少しずつ和らげてくれるのを実感していた。
そんな事もあった後何日か経ち、ようやく入試が終わりカズヤから報告のメールが届いた。