顔を赤くして慌てふためく彼をよそに
俺は どうも腑に落ちないでいた。
そして俺は思った事を口にした
『…あ。いや、うん…大丈夫ξ
ってか思うんだけど「可愛い」って、どちらかと言うとZ君の方じゃ…?』
そう言うとZは更に顔を赤らめ
『…え?な、な!?そんな事 絶対ないです!
俺 男ですよ!
からかわないでください!ξ』
…
…
(……ん?)
…
…
(え~~~~~っ!?)
一瞬の沈黙と困惑の後、俺は度肝を抜かれた。
(いやいやいやいや。ちょいと、Zさん?俺「も」男なんすけど……………?
)
んが、当の本人は
察するに、矛盾な発言に気付いていない。
〓天然〓なのか?
『…ぷくくっ!はははっ!』
そう思うと、何だか急に可笑しく思えて、
さっきまでの色んな感情が消され
思わず吹いてしまった。
『あ~!何ですか~!?何か俺、変な事言いました?』
ちょっと膨れてZが言うから
宥(なだ)める様に
『ははっ!いや、ごめんごめん。
何でもないよ☆』
『何だ♪良かった♯』
そう言うとZは笑顔で美味しそうに焼きそばを頬張った。
(…って本当に解ってねーし!笑)
楽しい。
こんなに楽しく会話をしたのは
どれくらいぶりだろうか?
むしろ、この5分くらいの短い時間で
しかも、初対面の人間。
本当に初めての経験だった。
そんな感情に浸っていると唐突にZが
『あ!今日この後、何か用事とかありますか?』
俺は特に何も無かったので、そのまま
『ん?特に何もないけど…』
っと返すとZは嬉しそうに
『本当ですか☆じゃあ、今月のレッスン課題の台本 一緒に読み合わせしませんか?』
そう聞いてきたので俺は何の躊躇(ちゅうちょ)もせず不思議と自然に
『お~!いいよ!何か、あの台本初っぱなから台詞の量 半端ないもんなξ』
『やたー★じゃあ、お願いします♪』
『…あ。』
喜ぶZをよそに俺はある事に気付く。
『でも何処でやる?今日 確か夜までどこのスタジオも埋まってた気がする』
俺がそう言うとZも
「あ!」っと顔をしかめ
『そういえばそうでしたねξ……ん~……』
そう言って暫くZは考え込む。
そして何か得策を思い付いたのか今度は
「あ!」っと顔を明らめ
『良かったら俺ん家、来ませんか!?
ここから電車で2駅なんで☆』
俺はZのいきなりの発言にまた驚き戸惑った
『…い、いや~…それは流石に家の人とかにも迷惑じゃ…』
そう言うと、Zは明るく能天気に俺の言葉を切り返す
『全っっ然、大丈夫です!
姉ちゃんと親父は帰り遅いし
母ちゃんは家に居るけど
母ちゃん「も」カワイ……
あ、いやカッコイイ若い人、好きなんで大歓迎すると思います(苦笑)』
(………ん?)
Zの途中の言葉が、かなり引っ掛かったが
俺はあえて何も言わず
『いや…でもさ、やっぱり 流石に…』
っと躊躇の言葉を続けると
相も変わらず明るく真っ直ぐな無垢の瞳で
『だ~~い丈夫ですってば!
ね!お願いします☆』
(……う。眩しい。非常に眩しいんですが…ξ
本当に何なんだ…この子は一体ξ
まるで『良し!』を待っている犬っころみてぇ…)
俺は多分、Zは何を言っても引かないと察知し
押されに押され
『じゃ、じゃあ少しだけ お邪魔させてもらおうかな…?』
遠慮がちに言うと
Zは『良し』をもらった犬の様に目を輝かせ
『やたーっ☆★』
(……耳と尻尾。
俺には犬の耳と尻尾が付いてる様に視えるぞ…おい。
疲れてんだな俺…はは。ははは…)
っと俺がZの圧倒的パワーに押され
少し壊れかけ(?)ながら
心の中で そう呟いていると
何かを思い出したZが
『あ!そだ!ちょっと10分くらい、ここで待っていてもらっても大丈夫ですか?』
俺はZの言葉で現実に引き戻され
『うん?どした?』
と返す。
『あ、俺 仕事で今週の○曜日に生放送の収録があって
その事でちょっと事務所に寄らなくちゃでξ』
『あ~……もしかして夕方からやってる教育テレビの?』
そう俺が問い掛けると
Zはビックリした表情をし
『え!はい!何で知ってるんですか?』
『いや、この間テレビ付けた時に
たまたまZ君が出てたからさ!
だから実は俺も
さっきのレッスン時
「あ…!」って思ったんだ。
大丈夫だよ!待ってるから行ってきな☆』
するとZは少し照れ臭そうに鼻の頭を指でかきながら
『そうだったんですか~…
何か恥ずかしいなξ』
Zがそう言うので俺は
『何で?いいじゃん!
何か、あの子供達の中でリーダーシップ出来てて
すごい頑張ってるな~って思ったよ?』
俺の思ったままの言葉に
今度はハニカミながら
『そ、そうですかね?一応 男子の中で最年長なんです。
だから頑張らなきゃって今 アタフタしてますξ』
『お~!そうなんだ!応援してるから頑張れよ☆』
俺が励ましのエールを送ると満面の笑顔で
『はいっ!ありがとうございます!!
じゃあ ちょっとダッシュで行ってきます☆』
そう言うと
残りの少なくなった焼きそばの麺を
急いで口に掻き込むと
トレーを持ち立ち上がり
俺にニコリとして一礼し
駆け足で 食堂を後にした。
(…ふ~)
俺は軽く溜め息を吐くと
色々と不思議な感情に見舞われていた
この短いランチの間、俺は何処か別世界にいた様な感じだ
そして、ある事に気付く
(俺……こんな笑ったのどれくらいぶりだ?
何か あいつって、丸で俺と正反対だ…。
さしずめアイツは
純真無垢な犬。
んで俺は
屈託してる気まぐれなネコ。
…でも
ま。
いい……よ…な?
こんな警戒心が強い猫でも
明るく真っ直ぐな犬と一緒にいても…。
だって何かさ。
もっとアイツと話してみたい。
もっともっとアイツの事が知りたい。
変だよな…
まだ会って間もねーのにな…
ほ~んと…。
どうしちまったのかな
俺…ξ)
心の中で呟いた俺は食堂の時計を見る。
たった10分程度の待ち時間なのに
とても待ち通しく感じ
気が付けば
『早く来ねーかな…』
なんて 可笑しな事を言っちゃってる
〓らしくない〓
自分がそこには居た。