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遠き過去の『初めての』思い出 続き 18
 たかし E-MAIL  - 26/7/2(木) 8:32 -
「ジャンケン、ポン!」
切羽詰まった私の祈りが通じたのか、突き出された互いの手は、今度は私の勝利を告げていた。
「……あ」
負けたこうじは、自分の出した右手を暗がりの中でじっと見つめている。先ほどまでゲームの枠組みを超えて私のすべてを剥き出しで掌握していたあの力強さは消え、ルールという絶対的な鎖に再び繋がれたことを自覚したような、静かな視線だった。
主導権が私に戻った。この過敏な身体を守りきれた安堵感と同時に、私の胸には一気に攻守交代の熱い炎が燃え上がる。
「今度は俺の番やからな」
私はすかさず、ジャージもブリーフも下りたままのこうじの塊へと右手を伸ばし、生の皮膚をしっかりと掴んで扱き始めた。
驚いたことに、これだけ激しい寸止めを何度も食らい、張り詰めたインターバルを挟んだというのに、こうじのそれは微塵も萎えることなく、カチカチの硬さをマックスで維持し続けていた。むしろ、私の手のひらを内側からミシリと押し返してくる弾力は、さっきよりも一段と増している。
(こうじも、もう完全に仕上がってる……)
時計の針を進めるように、私は今日一番の、最高の快感を幼馴染の肉体に注ぎ込み始めた。強めては緩める生殺しはもう終わりだ。これが今日最後のジャンケンにする――そんな決意を込めて、溢れ出る滑りを潤滑油にしながら、一気呵成に手の上下運動を加速させていく。
こうじの呼吸が「はーっ、はーっ」と浅く激しくなり、身体が小刻みに震えだす。オナニーのやり方も、いった先の景色も何も知らない幼馴染が、今、人生で初めての未体験ゾーンへと突き進んでいる。さっき私の左手の上で見た、あの熱くて白い液体を、今度は自分がこの暗闇の中に解き放つことになるのだ。
塊の熱量が極限に達し、ドクドクと狂ったような脈動が私の右手にダイレクトに伝わってくる。よし、最後の仕上げにかかろう――そう思った、まさにその瞬間だった。
ウーーー、と薄暗い秘密基地の壁を震わせるようにして、大音量のチャイムが響き渡った。
正午を告げる、地域の有線放送のサイレン。
「え……っ!?」
私は動きを止めずに、思わず目を見開いた。
朝の9時過ぎに家を出て裏山に向かったはずなのに、気がつけばもう12時。ほんの1時間足らず、短い休み時間の延長くらいにしか感じていなかったこの濃厚な時間が、実際には3時間も経過していたのだ。
「ちょっと裏山で遊んでくる」とだけ親に告げて家を出てから3時間。お昼時になり、そろそろ親が心配して探し始めてもおかしくない時間帯だった。
あの始まりの日、図書室の床で初めて触れ合った時も、終わりの合図は授業開始のチャイムだった。そして今、この秘密基地でのいけない遊びを終わらせるのも、やはり山に響き渡るチャイムの音。
けれど、こんな極限まで硬り立って、いまにも弾け飛びそうな状態のこうじを、ここで「時間切れだから」と放置して終わらせることなんて、男として絶対にできなかった。そんなことをすれば、こうじの身体はおかしくなってしまう。
(慌てるな……大丈夫や、すぐに終わらせる……っ!)
私は声には出さず、心の中でそう自分に言い聞かせながら、無言のまま右手の作業をさらに激しくスピードアップさせた。制限時間のないはずのゲームに、突如として現実のタイムリミットが迫る。その焦燥感が、私の手の動きを限界を超えて鋭くさせた。
「ひ、あ、あぐっ……! アカン、なんか、なんか出る……ッ!!」
生の擦過音が高まる中、こうじが顔を真っ赤にして、生まれて初めて迎える絶頂の恐怖と快感に声を枯らす。
いく寸前、私はこうじの上着を汚さないよう、床から引ったくったハンドタオルを彼の胸元からお腹の上にかけてバサッと広く覆い被せた。
「っ、うあああああぁぁぁーーーッッ!!」
次の瞬間、こうじの身体が激しくのけぞり、何も隠すもののない開けた空間の中で、中学生の幼馴染の包皮に包まれた先端から、生まれて初めての白く熱い命の飛沫が、勢いよく夜明けのように解き放たれた。
すべては私の被せたハンドタオルの上に、ドロドロと、けれど眩しいほどの質量を持って、激しく叩きつけられていった。「……はぁ、はぁ、はぁ……」
秘密基地の薄暗い空気の中に、こうじの激しい呼吸の音だけが、まるで嵐の後のようになおも響き渡っていた。
図書室の休み時間から、私の手で「扱かれること」自体はすでに何度も経験していたこうじ。けれど、その激しい刺激の向こう側に待っている肉体の劇的な変化――すべてを撃ち放ち、全身の血が引いていくような感覚を味わうのは、彼にとって人生で本当にこれが最初の出来事だった。
つまり、いま彼を襲っているこの激しい「賢者タイム」の波も、すべてが完全な初体験。
初めての大きな役目を終えたこうじの塊は、先ほどまでのカチカチとした凶暴な硬さが嘘のように、みるみるうちに熱を失い、静かに萎んでいった。マックスに張り詰めていた皮膚は弛み、先端をすっぽりと覆い隠し少し弛んだ陰茎。
その、皮に覆われた窄(すぼ)まりの先には、いま放たれたばかりの白い残液が、とろりと未練がましく残っていた。
私は、こうじの上着の上に被せて飛沫を受け止めていたハンドタオルをそっと手に取ると、その乾いた部分を使って、彼の先端を優しく包み込んだ。
「……動くなよ」
そう小さく声をかけながら、包皮の先に残るぬるりとした粘り気を、一枚の布越しに、本当に丁寧な手つきで拭き取ってやる。
さっきまでの激しい絶頂の余韻に浸っているのか、それとも初めて経験する賢者タイムの圧倒的な脱力感のせいなのか、こうじは地面に寝転がったた姿勢のまま、ピクリとも動かない。ただ、焦点の定まらない目で、ぼんやりと暗がりを見つめているだけだった。
拭き取りの最後、私は仕上げとして、皮の内側にほんの少しだけ残った水分を外へ押し出すように、きゅっと窄まった敏感な先端を、親指と人差し指で少し強めに摘んで絞り出した。
「ッ……あ、んぅっ……!」
その瞬間、完全に大人しくなっていたはずのこうじの身体が、ビクッと電気でも流されたかのように大きく跳ね上がり、切なげに腰をのけぞらせた。
いってしまった直後の、あの狂おしいほどの過敏さ。いくら萎んで小さくなったとはいえ、生の神経がむき出しになったその先端をピンポイントで刺激され、初めて味わう「賢者タイムの痛がゆさ」に、こうじの眉がキュッと切なげに寄せられる。
私たちは素肌のままたがいの熱を感じながら、静かに現実の時間へと引き戻されようとしていた。「……はぁ、はぁ」
お互いの荒い吐息だけが、狭い秘密基地の空間に小さく弾けては消えていく。
そこには、すべてを出し切ってすっかり小さく萎んだ2つの塊があった。まだ中学生という成長期の途中にいる私たちのそれは、大きさの違いに多少の差こそあれど、どちらもまだ幼さの残る、生白い無防備な姿のまま、山の冷たい空気に晒されていた。
どちらからともなく、そのお互いのすべてを曝け出した姿をじっと見つめ合う。
つい数分前まで、ルールという建前の中で狂ったように貪り合っていたはずなのに、視線が交わった瞬間、急激に冷徹な現実が押し寄せてきた。
「……あ」
誰が言葉を発したわけでもない。けれど、お互いに弾かれたように視線を逸らすと、そこからは言葉通り「そそくさと」下ろしていたブリーフを掴み、一気に上へと引き上げた。続いてジャージのズボンを上げ、衣服の固い布地の中に、さっきまで狂熱の中心にあった互いのすべてを隠すようにして閉じ込める。
衣服を纏い、元の「中学生の男友達」の姿に戻った瞬間、秘密基地の空気は、それまでの興奮とは全く質の違う、張り詰めた、どうしようもない「気まぐれな気まずさ」に完全に支配されてしまった。
何を喋ればいいのか、全くわからない。
あんなことまでしておいて、「じゃあ帰ろうか」なんて普通のトーンで言えるはずもなかった。
私たちは一度も言葉を交わすことなく、ただ無言のまま秘密基地を後にし、薄暗い茂みを抜けて下山を始めた。行き道であれほど弾んでいた足取りは重く、ただ足元の土を踏みしめる靴の音だけが、不自然なほど大きく山に響いていた。こうじは少し俯き加減に私の後ろを歩き、私もまた、振り返って彼の顔を見る勇気が出ないまま、ただひたすらに坂道を下っていった。
昼過ぎ、ようやく見慣れた街並みが見え、私の家の近くまで戻ってきたときだった。
「あ……」
パッと視線を上げると、我が家の前の道路に、腕を組んでソワソワと辺りを見回している母親の姿があった。その表情には、明らかに心配そうな色が浮かんでいる。9時過ぎに「ちょっと裏山へ行ってくる」と言い残したきり、お昼を過ぎても戻らない息子たちを、今か今かと待っていたのだ。
私たちの姿を見つけるや否や、母は目をごそっと釣り上げて、足早にこちらへと近づいてきた。
「あんたたち、一体全体こんな時間まで何してたん?」
懐疑的な、どこか探るような強い問いかけが私たちに突き刺さる。その言葉に、私の心臓がドクンと跳ね上がった。まさか山の奥の暗がりで、お互いにズボンを下ろしてジャンケンをしながら、あんな破廉恥な行為に耽っていたなんて、天地がひっくり返っても言えるはずがない。
「……いや、ちょっと山の中で秘密基地の片付けとか、色々してたら時間が分からんようになって……」
私は必死に、声が上擦るのを堪えながら、それらしい言い訳を口にした。隣に立つこうじは、完全に気圧されたように黙ってコクコクと頷いている。
母はなおもジロジロと私たちの服や様子を観察していたが、やがて小さくため息をつくと、表情を少し和らげてこうじに視線を向けた。
「まぁ、お腹空いたでしょう。こうじくんも、もうお昼ご飯食べていき。今から焼きそば作るところやから」
いつもの、近所の幼馴染を気軽に誘う母親のトーン。そのあまりの日常感に、私は心の底からホッと胸をなでおろした。こうじも、母の優しい誘いに「あ、じゃあ……」と、少し遠慮がちに靴を脱ごうと玄関へ一歩足を踏み入れた、まさにその時だった。
プルルルルルッ、プルルルルルッ――!
静かな玄関口に、固定電話のけたたましいベルの音が鳴り響いた。
「あら、ちょっと待ってね」
母はそう言い残すと、すたすたと奥のリビングへと向かい、受話器を取り上げた。
「はい、〇〇(我が家の苗字)ですが……あぁ、こうじくんのお母さん?」
その言葉に、私とこうじは思わず顔を見合わせた。
「ええ、今ちょうど2人で帰ってきたところで、お昼ご飯に誘ったんやけど……あ、そうなの? わかりました、じゃあ今すぐ帰らせるね」
ガチャリ、と受話器が置かれる。
リビングから戻ってきた母は、こうじの顔を見て苦笑いを浮かべながら言った。
「こうじくん、ごめんね。お母さんから電話で、これから家族ですぐお出かけするから、お昼ご飯はいいから今すぐ急いで帰ってきなさいって」
「あ、はい……じゃあ、俺帰るわ」
こうじは、どこか救われたような、けれど少し名残惜しそうな複雑な表情を見せながら、すぐに踵を返した。
玄関のドアが閉まり、彼の足音が遠ざかっていく。
さっきまで、あの山の秘密基地で2人きり、生の皮膚を擦り合わせて限界まで上り詰めていたあの狂おしい時間が、まるで最初から幻だったかのように、冷たい現実の日常の中に、完全に押し流されて消えていこうとしていた。


引用なし

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