「はぁ、はぁ、はぁ……っ!」
激しい脈動が収まるにつれ、真っ白になっていた視界がゆっくりと秘密基地の薄暗い景色に戻ってきた。
いま私たちが置かれている状態は、お互いに臍(へそ)の下から膝の上までの素肌だけが完全に曝け出され、そこから上と下は、それぞれ上着とズボンにしっかりと纏(まと)われたまま。だからこそ、その狭間に剥き出しになった境界線が、たまらなく生々しく、異常な空間に見えていた。
しかし、賢者タイムの冷徹な波が押し寄せてくると同時に、私の心に凄まじい焦りが湧き上がってきた。
(アカン……服、服にかかって汚れてもうたんちゃうか!?)
中学生の私たちにとって、服にこの「白い液体」がついて汚れることは、親にバレる決定的な証拠になる。絶対に避けなければならない最悪の事態だった。いく瞬間、私はあまりの羞恥心からギュッと目を閉じてしまっていたため、自分の先端から解き放たれた液体が一体どこまで、どの方向に飛んでいったのかを全く見ていなかったのだ。
恐る恐る自分の身体に意識を向けると、根元と、そこに薄らと生え始めたばかりの陰毛のあたりに、ぬるりとした独特の粘り気がある自覚はあった。
(ここ以外を、とりあえず早く拭かんと……!)
焦る私は、汚れているであろう他の場所を拭き取るために、手探りで床のハンドタオルを探した。しかし、さっきこうじに払い除けられたはずのハンドタオルが、いくら周りを床を這うように探しても、どこにも見当たらない。
不思議に思ってようやく目を開け、視線をこうじの方へと向けた。
「……あ」
そこにいたこうじは、さっきまで私のチンコを激しく扱いていた右手に、探していたハンドタオルをしっかりと握りしめていた。そして、自分の左手の手のひらを、暗がりの中でじっと不思議そうに眺めている。
その左手の手のひらには、ドロリとした大量の白い液体が、べっとりと付着していた。
ハッとして、私は寝そべったまま自分の上半身の服を見回した。
上着の胸元も、お腹のあたりも、どこにも液体が飛んだようなシミや汚れは一切ついていない。
その瞬間、すべての状況が頭の中で繋がった。
こうじは、右手で私の生肌を激しく扱きながら、私の先端から勢いよく飛び出してきた液体が、私の服や上半身を汚してしまわないように、とっさに自分の左手の手のひらを壁のように差し出して、飛沫をすべて受け止めて防いでくれていたのだ。
自分の手が汚れることなんてお構いなしに、ただ夢中で、私の身体から放たれる未知の液体をダイレクトにその手で受け止めた幼馴染。
「……こうじ……」
私の服が汚れずに済んだ安堵感と、ハンドタオルを握ったまま、自分の左手に残る熱くて白い塊をじっと見つめているこうじの横顔に、私は言葉を失ったまま、ただ激しく高鳴る胸を押さえることしかできなかった。「……これ、何?」
こうじは左手の手のひらに溜まった大量の白い液体をじっと見つめたまま、本当に不思議そうな、無垢な声を漏らした。オナニーの仕組みも、男の身体からこんなものが飛び出すことも知らないこうじにとって、それは人生で初めて目にする、正体不明の謎の液体でしかなかったのだ。
次の瞬間、こうじがその左手を、何なのかを確かめるように自分の鼻先へとゆっくり近づけようとした。
「っ、アカン!!」
その意図を察した瞬間、私の頭から賢者タイムの余韻なんて一気に吹き飛んだ。自分の身体から出たばかりの、あの独特の生臭い匂いを幼馴染に直接嗅がれるなんて、羞恥心で死んでしまう。
私は寝そべった状態のままガシッと腕を伸ばし、こうじの左手首を強烈な力で掴んでピタリと制止させた。
「な、何するん……」
驚いて目を見開くこうじの腕を掴んだまま、私は彼の右手に握られていたハンドタオルを力任せに奪い取ると、それをこうじの左手の手のひらへと強引に押し付けた。
「ええから! 早くそれ拭けって!」
焦りと羞恥心で声を荒らげながら、私はこうじの左手にべっとりとついた白い液体を、タオルの乾いた部分でゴシゴシと力任せに拭き取らせた。こうじのあまりの無知さと、底の知れない純粋な好奇心に、私は文字通り肝を冷やしていた。一歩間違えれば、中学生の男同士の境界線が完全に崩壊してしまうところだった。
しかし、一難去ってまた一難。タオルで手が綺麗になったこうじを見た瞬間、私は自分の股間の、まだ生々しく熱り立っている過敏な先端に意識が戻った。
2回も続けていったばかりのそこは、今は触れられることすら恐怖を感じるほどの極限の過敏さに包まれている。
(ここでこうじに主導権を握られたままにしたら、絶対にヤバい……!)
もしこうじが「次は俺が」と、またルールを無視してこの剥き出しの先端を弄り始めたら、私は快感と激痛で本当におかしくなってしまう。この危機的状況を脱するには、あの「ルール」の絶対的な枠組みの中に、こうじを無理やりにでも引き戻すしかなかった。
私はタオルを床に放り出すと、まだ激しく上下する胸を押さえながら、自分の右手をグッと握ってこうじの目の前に突き出した。
「おい、ジャンケンや! 次のジャンケンするぞ!」
それは、今の私にとって「絶対に負けが許されない」文字通りの命懸けの勝負だった。勝って主導権を取り戻し、この過敏になりきった身体を守らなければならない。
さっきまでの優越感はどこへやら、私はただひたすらに自分の右手に祈りを込めながら、無知ゆえに恐ろしい幼馴染の瞳を、必死の形相で見つめ返していた。