秘密基地に到着すると、私たちはどちらからともなく、その場に並んで地面に座り込んだ。
周囲の木々が曇り空を遮り、ひんやりとした山の空気が肌を刺す。
お互いに、頭の中は図書室のあの続きのことで一杯だった。ジャージの上から、ブリーフの上から、あの時お互いに確かめ合った熱い硬さの余韻が、今この瞬間も脳裏に焼き付いている。
いつでも、何でもできる空間。それなのに、どちらも手を出すことができないまま、静かな時間が流れていった。
沈黙の重みに耐えるように、ただじっと目の前の地面や木々を見つめる。意識すればするほど、身体が強張って、自分から動くきっかけが見つけられなかった。
そんな張り詰めた空気を動かしたのは、こうじの方だった。
「んーー……」と、おもむろに声を漏らしながら、こうじが両手を上に上げて大きく背伸びをした。
緊張をほぐすための、どこか不自然なほどわざとらしい背伸び。私は横目で、その彼の動きをじっと見つめていた。
グッと上に伸ばした両手を、こうじはゆっくりと下ろしていった。
そして、下ろした彼の右手は、そのまま自然な重みで落とされるようにして――私のジャージの股間の上へと、まっすぐに着地した。
トスン、と軽い衝撃が私の熱の上に伝わる。
偶然なんかじゃないことは、お互いに分かっていた。
こうじの手のひらは、着地した瞬間から、私の衣服の奥でピクピクと脈打ち始めている硬い膨らみを、しっかりと捉えていた。
図書室では、私がしかけた愛撫に頭を真っ白にして、ただ手を置いたまま固まっていたこうじ。その彼が、今度は自らの意思で、この裏山の静寂の中で私に触れてきたのだ。
私のジャージの奥の熱が一気に跳ね上がり、ドクドクと激しい拍動がこうじの手のひらへと伝わっていく。
こうじは手を下ろした姿勢のまま、顔を少し俯かせ、じっと手のひらから伝わる私の変化を確かめていた。私たちの間で、誰も邪魔できない「あの日の続き」が、ついに静かに動き出した瞬間だった。
すぐさま私もこうじの塊目指して手を伸ばしそれを覆う。
お互いの手が、それぞれのジャージの上から完全に硬くなった熱を捉え、いよいよ図書室の続きが始まるという、息が詰まるような緊迫感が満ちた、まさにその時だった。
それまで俯いていたこうじが、ふっと顔を上げて、私の目をまっすぐに見つめてきた。
そして、股間に置いていた右手をすっと上に掲げると、突拍子もないことを言い出した。
「……なぁ、ジャンケンしようぜ」
「え?」
あまりにもその場の空気に似合わない言葉に、私は思わず拍子抜けして声を漏らした。
しかし、こうじの目は真剣そのものだった。
「ジャンケンで負けた方が、……な?」
その一言で、私はすべてを察した。
図書室から今日に至るまでの、この息が詰まるような生々しい空気を、こうじは「ジャンケンの罰ゲーム」という、男同士のいつもの悪ふざけのノリに、一瞬で塗り替えようとしたのだ。
言葉でごちゃごちゃと言い訳をするのではない。
ただの勝負、ただのノリ、ただのふざけ合い。その体裁さえ整えれば、この先どんなに破廉恥な一線を越えたって、明日からも学校で「いつもの幼馴染」の顔のままでいられる。それが、こうじがこの先へ進むために、本能的にひねり出したルールだった。
「……おう、分かった。ジャンケンな」
私がそう応じると、こうじの口元に、いつもの悪戯っぽい、けれどどこか強張った笑みが浮かんだ。
裏山の秘密基地、どんよりとした曇り空の下。
お互いに片方の手で相手の硬い棒を意識したまま、もう片方の手を前に突き出す。
「最初はグー、ジャンケン――」
静かな山の中に、私たちの拳が突き出される。この勝負の行く末によって、ここからの「悪ふざけ」の主導権がどちらに渡るのかが決まる。心臓が破裂しそうなほどの緊張感の中で、私たちは手を開いた。