約束の朝9時ごろ、私はこうじと合流し、そのまま裏山へと向かった。
空はどんよりとした曇り空。
山道の入り口を抜けて、木々の生い茂る斜面を登り始めてから、私たちの間に会話は一切なかった。
いつもなら、学校の愚痴を言ったり、テレビの話をしたりしながら歩く。けれどこの日は、お互いに一言も発しないまま、ただ黙々と足を動かしていた。
言葉が出なかった。何かを喋ろうとすれば、どうしても数日前の図書室のあの感触や、ブリーフの前開きに指をかけたときの記憶が呼び覚まされてしまう。
こうじも同じ気持ちだったのだろう。少し前を歩く彼の背中はどこか緊張で硬く、ただ自分の足元だけを見つめて歩みを進めていた。
カサカサと枯れ葉を踏みしめる音と、時折、風が木々を揺らす音だけが耳に届く。
沈黙が長引けば長引くほど、私たちの間で膨れ上がっていく期待と緊張感は、どんどん濃くなっていくようだった。
そうしてしばらく登った先にある、周囲の木々に遮られた、少し開けた場所に辿り着いた。
子供の頃から少しずつ手を加えて作った、秘密基地。
その空間に足を踏み入れた瞬間、どちらからともなく足を止めた。
大人たちは誰も来ない、本当の意味で私たち2人だけしか存在しない完全な死角。
どんよりとした曇り空の下、ひんやりとした山の空気に包まれたその秘密基地で、私たちはついに、誰にも邪魔されない時間を手にれた。