「……そのまま続けて揉んで」
その言葉に弾かれたように、私は離しかけた手に再び力を込めていた。
どうしていいか分からないまま、言われた通りに、ただ夢中で揉み続けた。
手のひらから伝わってくるこうじの体温と、かすかな呼吸の乱れ。古い木造の床板を通して、お互いの心臓の鼓動が響き合っているかのようだった。ずっと知っているはずの図書室が、まるでどこか遠い別の空間になってしまったかのような錯覚に陥る。全員が顔見知りのこの学校で、誰かに見つかるかもしれないというスリルが、余計に指先の感覚を鋭くさせた。
どのくらいの時間が経ったのだろう。永遠のようにも、一瞬のようにも思えたその時間を切り裂くように、無機質なチャイムの音が鳴り響いた。
授業の始まりを告げるその音で、張り詰めていた空気が一気に弾けた。
私はハッとして手を離し、こうじも弾かれたように床から立ち上がった。お互いに顔を合わせることができず、気まずさと、言葉にできない興奮が入り混じった空気のまま、私たちは急ぎ足で教室へと戻った。
その後の授業の内容なんて、何一つ頭に入らなかった。教科書を見つめながらも、私の手のひらには、まだあの熱い感触がこびりついたままだった。
放課後になり、私たちはいつものようにサッカー部の練習に参加した。
小中と同じメンバーで泥にまみれ、ボールを追いかける。周囲から見れば、いつもと変わらない退屈で平穏な田舎の日常。けれど、私とこうじの間には、確実に昼間とは違う、見えない線が引かれていた。練習中、ふと視線が交わるたびに、胸の奥がざわついた。
部活が終わり、他の部員たちが帰り支度を始める頃、こうじが私のそばへ歩み寄ってきた。
誰にも聞こえないような低い声で、こうじは言った。
「……さっきの続き、この後しよう」
夕闇が迫る校庭の隅で、私はただ、小さく頷くことしかできなかった。