「…っ、あ……っ!」
僕は大きく息を吸い込むと、熱い波が僕の身体を駆け巡った。「イ、、イクっ!」そして、ケンさんが僕のペニスからさっと唇を離した。まるで僕の限界を知っていたかのように、的確なタイミングだった。そして次の瞬間、僕のペニスの先から、熱い白い液体が、ピューッ、ピューッと弧を描くように、胸に向かって勢いよく飛び散った。ドロリとした粘り気のある精液が、ケンさんの顔の前を通過し、僕の胸板や腹部に降りかかる。
と、その途端、青木君も「ああ、もう、ダメですっ!」と叫んだ。ペニスを擦る右手の動きが、さらに速度を増す。そして、次の瞬間、彼は勢いよく立ち上がると、床に落ちていた自分のパンツを左手で拾い上げ、まるで受け皿のように構えた。そして彼の体が大きく痙攣し、彼のペニスの先端から勢いよく、ドバッ、ビュっ!とパンツの布地へとほとばしった。
僕はそれを横目で見ながら、自分に体に飛んだ自分の精液を拭いていた。そして僕はぐったりと横たわり、激しく乱れた呼吸を整える。青木君は、汚れたパンツを片手に持ちながら、放心状態のようだった
僕と青木君の同時絶頂の後も、ケンさんのペニスはまだ勃起していた。その姿を前に、青木君は、興奮冷めやらぬ様子でケンさんに言った。「あの…部長、俺、フェラしてみたいです」その言葉に、ケンさんは眉をひそめ、きっぱりと断った。「ダメだよ」彼の声には、僕に接する時のような甘さは一切なく、どこか秘書に対する返答のような事務的な響きがあった。しかし、青木君は引き下がらない。「じゃあ、触るだけでも…しごいてみたいです」ケンさんは、再びきっぱりと「お前バカか、ダメに決まってるだろ」と言い放った。「男に触られるなんて嫌だ」僕はその言葉を聞いて、頭の中にたくさんの疑問符が浮かんだ。男に触られるのが嫌?じゃあ僕は?僕にとっても消化できない一言だった。その言葉を聞いた青木くんも、やはり納得がいかない様子で、不満げに僕を指さした。「なんで、この子はいいんですか?男なのに」。彼の声には、まるで理不尽を訴える子供のようだった。ケンさんは一瞬、困ったような顔をして、そして小さく首を傾げた。彼の表情は、まるで自分自身にもその理由が分からない、と語っているようだった。「何でだろうな」
その時、青木君は、突然何かに気づいたかのように声を上げた。「もしかして、この子ってあの脱毛サロンの?」その言葉に、僕はハッと顔を上げた。そう言われれば、僕も彼をどこかで見たことあると思ったんだよな。青木君の言葉に、点と点が線で繋がるような感覚があった。そうか、そういうことか。要するに、彼がもともと僕が働く脱毛サロンの顧客で、そして、彼がケンさんに僕のサロンを紹介し、ケンさんが僕の予約を一番最初に取ったのだと。僕は彼を直接施術したことはなかったけれど、確かに店内で何度か見かけたことがあった。青木君は、どこか納得したかのように深く頷いた。その表情には、ある種の理解と、諦めにも似た落ち着きが見て取れた。そして彼はそのままリビングへと出ていった。
そして彼の電話の声が聞こえてきた。「はい、課長。お疲れ様です……あ、そうですか。分かりました」 電話を切ると、リビングからケンさんに、大きな声で、「折衝終わったみたいです。もう行かなくてもいいですよ。じゃあ、僕は先に会社に戻ります」。と言った。さっきとは打って変わって事務的な声色。秘書としての声だった。ほんの数分前まで、僕とケンさんの目の前で自身のペニスを露わにし、欲望のままにオナニーをしていた男とは、とても思えない。そのギャップに、僕は妙な現実感のなさを感じていた。彼はそう言うと、暫くして玄関のドアが「ガチャリ」と開き、「バタン」と閉まる音が聞こえた。青木君が帰ったようだ。部屋に再び訪れた静寂は、なんだか異質なものだった。そこには、予測不能な出来事が起こった後の、微妙な余韻が残されていた。
僕は、ぐったりと横たわったまま、ケンさんに言った。「青木君って人、面白いね」。ケンさんも僕の隣に横たわり、少し呆れたような眼差しを向けながら、「あいつは性に関しては奔放なところがあるからな」と答えた。どうやら、会社でも女性社員に好かれるプレイボーイらしい。ノンケって面白いなとつくづく思った。男同士の行為を目の前で見て興奮し、それでも女が好きって、僕にとって新鮮な驚きだった。
すると、ケンさんはトイレに行くと言って、ベッドを離れた。ふと床を見ると、青木君のパンツで受け止めきれなかった精液が、木の床に大きな白い水滴となって残っていた。時計を見ると、もう10時近かった。やばい、大学の講義がある。ケンさんがトイレから戻ってくるなり、僕は彼に事情を話し、彼の家を去る準備を始めた。家を出る直前、ケンさんは僕を優しく抱きしめ、そして唇にキスをくれた。その行動に僕は内心戸惑った。
僕は急いでマンションを降り、地下鉄の駅まで走った。地下鉄に揺られながら、僕はケンさんのことを考えていた。彼はノンケなのに、なぜ僕とこのような関係を持ったのか、不思議でならなかった。ただ性的な吐口として利用したのか、それとも何か違うものがあるのか、分からなかった。
それから2週間ほどが過ぎた。その間、僕とケンさんの間に一切の連絡はなかった。サロンの予約もなければ、彼からも私的な連絡が来ることもなかった。まるで、あの夜の出来事がなかったかのように、時間は流れていく。
その間彼のインスタグラムを見ると、楽しそうな笑顔で、見知らぬ女性と二人きりで食事をしている写真が複数投稿されている。親密な雰囲気から察するに、ああいう関係もあるんだろうなと思った。僕と過ごした夜の熱狂とは裏腹に、彼は日常に戻り、ごく普通に、女性との関係を謳歌しているようだった。そういう写真を見るたびに、胸の奥がチクリと痛んだ。
そんなある日のことだった。