若い男性の声だ。秘書さんなんだろう。家に入ってきた。僕がビクビクしてケンさんの胸元に顔を埋める間も、彼は全く動揺を見せず、僕を抱きしめ直すと、僕の頬にキスをしてきた。すると、事もあろうに、寝室の扉がいきなり開いた。
「えっ!」
僕は驚いてケンさんを突き放そうとしたが、彼は逆に僕を強くホールドし、逃がさない。そして一人の若い男性が部屋の中に踏み込んできた。彼はケンさんの秘書で、青木といい、大卒2年目の22歳。秘書の青木は僕たちの姿を見て、一瞬にして顔色を変えた。朝日が差し込む部屋の中、僕たちはただ全裸のまま抱き合っていた。秘書は目を真ん丸にして「あっ」と小さく声を漏らすと、呆然と立ち尽くす。
「おい、入ってくんなって」
ケンさんの低い声が響く。秘書は扉の近くまで戻ると、見てはいけないものを見るように、こちらに背を向けて、困惑した声で言った。
「あの、部長。今日のクライアントさんとの打ち合わせ、9時からなんで、そろそろ出ないと…」
ケンさんは僕を抱きしめたまま、こともなげに答えた。
「今日は課長が行ってくれるよ」
「またそんなこと言って。今日の案件は課長じゃ無理ですって!」
秘書の焦りが伝わってくる。
「大丈夫だって」
「大丈夫じゃないですよ! ちょっとだけでも顔出さないと…」
「じゃあ、午前中だけ顔出せばいいかな」
「早くしてくださいよ、全く…。僕、リビングで待ってますんで、急いでくださいね!」
投げやりな秘書の言葉に、僕は思わず身を縮めた。
彼は部屋を出てリビングのソファに腰を下ろし、大きくため息をつく音が、開いたままの扉の隙間から聞こえてくる。完全に閉められていない扉が、僕たちの状況をさらに際立たせる。混乱と戸惑いで僕は完全に固まっていたが、ケンさんは僕をぎゅっと抱きしめ、耳元に顔を寄せて囁いた。
「大丈夫だって。見られちゃったもんは仕方ないでしょ」
そして、僕の顔を覗き込み、ニッと笑った。
「ここで俺が動揺してる方が、おかしいって」
確かに、そうなのかもしれない。この修羅場とも言える状況で、ケンさんはまるで動じていない。僕を抱きしめる腕の力強さも、その声も、微塵も揺るがない。彼の底知れない堂々とした態度に、僕はただただ呆然とするしかなかった。
わずかに開いた寝室の扉の隙間から、リビングで待つ秘書の青木君のわずかな衣擦れの音や、ため息が聞こえてくる。僕はまだ混乱の中にいたけれど、ケンさんは僕を抱きしめたまま、微動だにしない。そしてケンさんが、僕の耳元で「今日は仕事より、ユウセイのほうが大事」
その言葉に、僕は思わず顔を上げた。秘書がすぐそこにいるのに、何を言ってるんだろう。僕は彼の胸を軽く押し返そうとした。「でも…ケンさん、仕事は…」僕は慌てて彼を説得しようと身じろぎしたが、ケンさんは僕の背中を撫で、動じることなく囁き続けた。「大丈夫だよ。俺が決めたことだ」彼の声には、一切の迷いが感じられない。僕の言葉は、まるで彼の耳には届いていないかのようだった。僕は何を言っても無駄だと悟った。僕は観念したように、彼に身を委ねた。僕の腕が自然と彼の首に回され、その背中に触れる。
ケンさんは僕の額に、そして頬に優しくキスをした。次いで、彼の唇がゆっくりと僕の唇に吸い付く。そして彼の舌が少しづつ僕の中へ入っていく。互いの舌が絡み合い、息が重なる。そしてさっきのことがまるでなかったかのように、深く、深く、キスを交わした。彼の舌が僕の口内を深く探り、互いの唾液が絡み合う。キスの音がピチャピチャと部屋の中に響いた。
そして、ケンさんはゆっくりと口を離すと、彼の唇は僕の首筋を這うように移動し、熱い吐息をかけながら鎖骨へとたどり着いた。熱い舌がそのくぼみを舐め上げ、ゾクッとした快感が背筋を駆け上がる。そのままさらに下へと進み、僕の胸元で止まる。そして、僕の敏感になった乳首を、舌先で優しく転がしたり、甘く吸い上げたりを繰り返す。吸い上げられるたびに、僕の体はびくりと震え、小さい喘ぎ声が漏れる。僕は彼の湿った髪を指で梳きながら、感じていると、彼は再び顔を上げ僕を見つめ、また僕の唇に吸い付いてきた。
ケンさんの身体は僕にぴったりと密着し、僕の硬くなったそこが、彼のそれに生々しく擦れ合った。互いの体温が混じり合い、汗ばんだ肌がピタピタと粘質な音を立てる。僕の頭の中はまだ混乱の余地を残していたが、それ以上に、彼の熱と存在、そして彼が引き起こす快楽に支配されていくのを感じた。
そして、彼は唇を僕の口から離すと、また舌が僕の首筋を再び這い始め、ゆっくりと、下へと移動していく。。そしてとうとう僕のチンコにたどり着いた。咥えるのかと身構えたその時、彼は再び上に這い上がってきて、少し恥ずかしそうに小声で言った。「男のチンコは流石に咥えたことない」さすがノンケだ。やはり抵抗はあるのだろう。