Page 3520 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 通常モードに戻る ┃ INDEX ┃ ≪前へ │ 次へ≫ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ▼今の自分も悪くない 淳平 07/3/25(日) 15:16 ┗今の自分も悪くない 2 淳平 07/3/31(土) 0:25 ┣Re(1):今の自分も悪くない 2 茉 07/3/31(土) 2:26 ┗今の自分も悪くない 3 淳平 07/4/1(日) 0:10 ┗Re(1):今の自分も悪くない 3 茉 07/4/1(日) 17:01 ─────────────────────────────────────── ■題名 : 今の自分も悪くない ■名前 : 淳平 ■日付 : 07/3/25(日) 15:16 -------------------------------------------------------------------------
| 校長の話が長々と続いた。春になっても体育館の底冷えは激しかった。息を吐くと白い息がでるかもしれないと思ったほどだった。今、体育館には俺を含めた新一年生全員と、保護者が席に座っている。その人数は体育館をうめつくすほどにも関わらずこの寒さは異常だった。 隣の母さんが俺の太股をたたいて、「シャキッとしなさい!」と小声でたしなめた。俺はパイプ椅子に浅く腰掛けて、今にもずれ落ちそうな勢いで座っていた。母さんに言われて一応姿勢を正した。周りを見わたした。俺は倒れそうになって嫌気がさした。ムサくるしい……その一言に尽きた。 今、入学式が行われているのだ。まだ中学生の制服を着ていて、バラバラでまとまりがなかった。入学式が終わった後に、必要なものを買い揃えるからだ。 それにしても、気分は憂鬱だった。なぜなら、どこを見わたしても女子がいないからだった。俺は私立の男子校に入学して、しまった、のだ。 それもこれも、中学のセンコーのせいだった。君ならこの公立高校に必ず行けるよ!と、押されて、結構有名な公立高校を受けることにしたのだ。だから、私立に行くつもりはさらさらなかった。だから、公立のひとすじでいこうと思ったのだが、一応滑り止めのために私立も受けることとなった。滑り止めだからこちらが落ちては元も子もない。だから、自分の実力より少しだけ下のこの男子校を選んだのである。 ……そして案の定、俺は公立に落ちて、この私立に来てしまった。俺にとって男子校はありえなかった。しかも、この男子校には俺の友だちがいない。俺の中学からも9人ほどきていたのだが、その人たちとは話の内容とかも全然違うし、まず認識のない人もいたくらいだった。もう絶望的だった。これからこの男子校で三年間を過ごすのかと思うと、過ごしきることができるのか?と疑問を抱きたくなる。 そんなこんなで憂鬱な入学式を終え、この高校に入学する事となるのだった。 |
| 入学式が終わって、俺は男子校に通うこととなった。しょうもない日々が続いた。俺は友だちもろくにつくることなく、教室の後ろで同じクラスの生徒たちを眺めていた。と、言うのも、俺の名前は永山淳平(ナガヤマジュンペイ)席替えをすることもなく、出席番号順に座っているので、俺の席は教室の真ん中の列の一番後ろだった。ここからは生徒全員を眺められるのだ。 そんな魂の抜けたような生活が一ヶ月ていど過ぎた。そんななか、体育の授業があった。はじめての実技授業だった。今までは入学のあれこれで、体育の授業が削られてホームルームになったり、体育の授業でも諸説明みたいなもので、実質の授業、体操服に着替えての授業は初めてだった。 しかも最初の授業ということで、サッカーをすることとなった。先生が二つのグループを作って、一つのグループはさらに二グループに分かれて試合をする。残ったグループはコートがないので、それぞれで組みを作ってサッカーの練習をやっておけとのことだった。俺は練習組に入っていた。グラウンドの端っこで、ほかの練習組の生徒がそれぞれ二人組み、ないし三人組をつくっていく。 俺はそれに加わる気も、練習をするつもりもさらさらなかった。かったるい。ただそれだけの理由だった。俺は先生の目を盗んで、裏庭に回った。グラウンドからすぐ裏庭に続いているのだ。その校舎の陰に隠れて居眠りをしようと、腕を頭の後ろに組んで横になった。遠くでほかの生徒たちのはしゃぐ声が聞こえた。それだけで嫌気がさした。しばらく目をつぶっていると、本当に眠たくなってきた。日向ぼっこをしているように日が当たって気持ちよかった。そのとき、自分の顔に陰が落ちるのを、目をつぶっていても感じ取った。 目を開けると、逆光で誰だかわからなかったが、俺の顔を見下ろしていたのだ。俺は驚いてすぐに上体を起こした。そのとき、あまりの勢いで校舎の壁に後頭部を打ち付けてしまったのだ。 「いってぇー」 俺は声にならない声で後頭部を抑えてうずくまった。もう誰が見ていたか関係なかった。すると、あわてた声が聞こえたのだ。 「だ、だいじょうぶ?」 その声でどうやら先生でないことだけはわかった。すると、無性に腹が立ってきて、そいつに荒々しく言った。 「この状況が大丈夫にみえっかよ!?」 「ご、ごめん」 やがて顔を上げて、俺に話しかけてきたヤツの顔を見た。もちろん俺と一緒のクラスのヤツだった。 後頭部に回した手を確認した。てのひらにいっぱい血がついていた。それを見てあわてたのはむしろ今俺の隣にいる人物だった。 「血が出てる!大丈夫!?すぐ保健室行こう?俺、先生に言ってくる!」 そういうと走って去っていった。俺は、面倒なことになったなとうんざりした。 腰を上げてグランドに戻った。先生に話して、俺に怪我を負わせたヤツと一緒に保健室に向かった。 「こんなの、軽いかすり傷よ。頭は大げさに血が出るものよ。それよりもタンコブのほうがひどいわね。氷わたしとくから冷やしときなさい」 保健室の先生が手当てをしながら言ってくれた。包帯を巻いて、氷をくれた。それで後頭部を冷やしながら、保健室をあとにした。 怪我を負わせたヤツは、ずっとごめんごめん言って、後ろに付きまとってくる。もういいからと言っても、一向に離れようとはしなかった。 グラウンドに戻って先生に報告すると、陰で休んでなさいと言われた。俺は裏庭に直行して、さっき寝転んでいた場所に腰を下ろした。ふと見ると、俺の目の前にまだヤツが立っていた。申しわけなさそうに小さくなって。 「もういいって。さっさと授業に戻れよ」 「うん……でも、きみは?」 「俺は先生に休んでろって言われたから」 「ここで休むの?」 「なんか文句あんの?」 「いや、ないけど……なんでわざわざ人気(ヒトケ)のないとこに行くの?」 「べつに。こっちのほうが静かでゆっくり休めるから」 「そっか……じゃあ、俺、邪魔?」 「……べつに」 俺はそっぽを向いて、ほおづえをついた。しばらくしてから、 「練習やりに行けよ」 と、俺が言うと、正面のヤツははにかみながらこめかみをかいた。 「……練習する相手がいないんだ」 その言葉で、俺とおんなじか、と心の中で思った。さらにしばらくして、 「ボールもってこいよ、相手になってやるからさ」 そういうと、正面のヤツはあわてて、 「いや、いいよ。怪我してるし、それにさ……」 「つべこべ言うな!もってこいって言ったらもってくるんだよ!」 俺が言葉をさえぎって言うと、少々渋った後、うんとうなずいて走っていった。俺はそのあいだにグラウンドへ戻って、空いているスペースを探した。ちょうど移動した時に、ヤツがボールを持って現れ、俺と向かい合って立った。それからパスのし合いをやった。俺はボールを浮かせてパスをすると、すぐに怖がって避けてしまう。 「だめだよ、それは。そんなときは胸で受け取らなきゃ」 「ごめん、でも、ちょっと怖い、かな」 「ほら、もっかい。痛くもなんともないから」 パスがこちらに回ってきて、また浮かせてパスを送った。今度は胸でキャッチした。 「そうそう」 そんなやりとりで数分時間をつぶした。だんだん俺も疲れてきたから、息があがる前にやめた。そして、さっきの裏庭に戻った。やっぱりヤツはついてきて、俺の前に立った。 「……隣に座れよ」 俺がそう言ってやると、ヤツは喜んでうなずいた。 「永山君はサッカーうまいんだね。前にやってたの?」 俺はその問いより、永山君と呼ばれたことに驚いた。少し遅れて、 「あ?あ、ああ、うん、中学のころ、ちょっと。中途退部したけど。それよりなんで名前知ってんの?」 「何でって、うしろにみんなの名前張ってあるじゃん」 「ああ、そっか」 「まだ半分も覚えてないけどね」 そう言ってはにかんだ。 「俺の名前は……」 相手が自分の名前を言おうとしたから、俺は遮った。 「しってるよ。山口宏平(ヤマグチコウヘイ)だろ?」 「しっててくれたんだ。嬉しいな。永山君、人の名前なんて関係ないってタイプだと思ってたから」 「その通りだよ。おまえは……面白いヤツだったから名前はなんだって気になっただけさ。あとの人なんて全然わかんねえ。わかってもニ、三人かな」 「面白いヤツ?俺が?」 俺は思わず思い出して吹き出した。 「なんでっておまえ、授業中の八割は寝てんぞ?よく眠るなあーってずっと観察してると、たまにほおづえからずれて、おもいきりあわてて起きるんだもんな?たまに机からも落ちそうになって、あの時は相当焦っただろ?」 俺はそのときの光景を思い出してつい夢中で笑った。宏平は顔を真っ赤にしてはずかしそうにしていた。 「そっか、永山君、一番後ろの席だったから、全部見られてるんだ?」 「そうさ、しょうもないときはおまえ見て、ハプニングが起こるのをずっと待ってんだよ」 その言葉で宏平も笑った。笑いの余韻が残りながら、俺が言った。 「それより、あんなに寝て大丈夫なのか?あさってから中間テスト一週間前だし、次々とノート提出くんぞ?あさって早速英語のノート提出だしな」 それを聞くまで余裕の顔をしていた宏平だったが、いきなり血相を変えて叫んだ。 「えぇっ!!あさって英語のノート提出!?聞いてないし!」 「寝てたからだ」 「そりゃそうだけど……まだ三ページぐらいしか書いてない」 「ほぉーそりゃ大変だ。俺なんかもうノート一冊終わりそうだったぜ?あと五ページくらいしか残っていなかったんじゃないかな……?」 「どうしよう……」 少しのあいだ途方に暮れていた宏平だったが、上目遣いで俺のほうを見ると、 「見せてください」と、頼んできた。俺はすぐにそっぽを向いた。 「いやだ」 「そんなこと言わずに、お願いします」 「だいたいてめえが授業中に寝るから悪いんだろうが」 「それはそうですけど、もう過ぎたことは仕方がないっしょ?今後一睡もしないから」 「ホントかよ」 「ホントだって!」 俺はもうとう信じてなかった。 「本当にお願いします。……あ、じゃあ、今日のお昼おごるから」 「……二ページ」 「え?」 「だから昼飯おごるぐらいだったら二ページ見せてやるってことだよ」 「ええ!?じゃ、じゃあ、肩もみしましょうか?」 「プラス一ページ」 「あーもう、こんなんじゃ埒があかない。なんでも言う事聞きますから!お願いします!見せてください!」 宏平はどこまでも下手に回るつもりらしい。 「ほぉー、何でもね」 「はい、何でもしますから」 「じゃあ、テストまでの一週間ちょっと、俺の下僕ということで」 「げ、ゲボク……。もうなんでもいっすよ」 宏平もとうとうあきらめたようだった。 「そのかわり、全部のノート写さしてくれる?」 「ああ、いいよ」 「じゃあ、約束」 俺は小さく笑った。 「おまえ、本当に下僕とかでいいのかよ?」 「べつにいいよ。ノート写してないのも全部俺のせいだし、しかたない」 「あきらめがはえーな」 宏平と俺は顔を見合わせて小さく笑った。 そのとき、グッドタイミングでホイッスルが聞こえた。体育の授業終わりで、集合させる合図である。俺たちもすぐに立って向かった。 |
| 続き楽しみにしてます! (・∀・〇) |
| こんな俺の投稿でも読んでくれる人がいて光栄です。がんばります。 もう絶対に授業中に眠らないって言ったのに……俺は机にほおづえをつきながら、授業中にも関わらず、熟睡している宏平を遠くで眺めていた。机にべったりとくっついて眠っている。今は四時間目で古典の授業だった。途中、先生が「山口、山口!」と怒鳴って起こそうとしたが、それでも宏平は根気よく眠り続けた。とうとう先生もあきらめて授業を進める始末。俺はそれを見て呆れて小さく笑った。 四時間目が終わった。みんなグループを作って昼食の準備を始めた。俺はこのクラスに居辛かったので、席を立って出て行こうとした。そして、ふと思い出して、宏平の机のほうをかえりみた。まだ寝てやがる。宏平の机まで行った。 そして、机を揺らした。ガタガタと激しく揺らしたら宏平が驚いてすっとんで起きた。 「なになに!?ああ、永山君か……」 「昼飯だ、おごれよ」 「ああ、うん、約束だったよね、はい」 すると、宏平はさっと立ち上がって、クラスを出て行った。俺もそれについていった。 学食はもう生徒で満員だった。そこをかきわけて販売部までたどりついた。ここには、コンビニで売っているようなパンやおにぎり、学食で作ったパンなどが置いてある。もうほとんど買われていて、残り少なかった。 「永山君はどれがいい?」 「どれでも。てかそんなの聞いてるまになくなるぞ」 「そうだね」 そう言うと宏平は手ごろなパンを二個つかんでさっさと代金を払って人込みを出た。宏平が買ったのは、学食で作った、定番のヤキソバパンだった。外の自販機でジュースもおごってくれた。 「で、どこで食べる?」宏平が聞いてきた。 「こっち」 俺は人気の少ないほうへ歩いて行った。行き着いた場所は水泳部の部室裏だった。プールは高校の敷地の片隅にあって、用事がない限り人がこない。俺は段差に座った。宏平がものめずらしそうに辺りを見回した。 「へぇー、こんなトコでいつもメシくってるの?」 「ああ」 「なんで?」 「人が来ないからだよ」 「人が嫌いなの?」 「嫌いっていうより、面倒くさい」 そういうと、宏平はへぇー、と関心したようにうなずいた。そして、パンと缶ジュースを一つくれた。 「ありがと」 俺がそういうと、宏平は笑った。 「へぇー、一応礼は言うんだ?」 俺はジュースを開けて飲んでいたときにそういわれて、思わず咳き込んだ。その後、 「あのなぁ、俺そんなに非常識な人間じゃねえっての!」 すると、宏平はまた関心したように、へぇー、と言った。 「その、へぇーってやめろ。ハラが立つ」 宏平は余裕の顔で笑って、俺の隣に座った。 その後、なにげない会話のやりとりをした。不思議な事に宏平との会話は途切れなかった。ひと段落ついたとき、俺が言った。 「じゃあ、今日残れよ。ノート写さなきゃなんねえんだからな」 「はーい……それよりさー、……」 すぐに話を逸らしてくる。こいつホントに大丈夫か?と思いつつも、まんまと宏平のペースにのせられてしゃべっている自分がいるのだ。なんだか調子くるうなあー、とぼんやり思ったが、それが嫌ではなかった。いつも自分が引っ張っていくタイプ……というか、自分でいうのもなんだけど、ガンコだから、俺についていかざるをえなくなるのだが、宏平の場合は俺を丸くまるめて、うまいように誘導してくるのだ。こんな変な感覚は久しぶりだった。 そうこうしているうちに五時間目が始まる五分前のチャイムが鳴って、俺たちは腰を上げてクラスへと戻ることにした。 |
| ゆっくりでいいんで、 更新お願いします(*'-') |