Page 3085 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 通常モードに戻る ┃ INDEX ┃ ≪前へ │ 次へ≫ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ▼幼なじみ 夢追い虫 06/8/23(水) 6:19 ┗幼なじみ 2 夢追い虫 06/8/23(水) 6:22 ┗幼なじみ 3 夢追い虫 06/8/23(水) 6:24 ┗幼なじみ 4 夢追い虫 06/8/23(水) 6:26 ┗幼なじみ 5 夢追い虫 06/8/23(水) 6:27 ┗幼なじみ 6 夢追い虫 06/8/23(水) 8:11 ┗幼なじみ 7 夢追い虫 06/8/23(水) 8:14 ┣Re(1):幼なじみ 7 ・・・ 06/8/23(水) 10:33 ┣Re(1):幼なじみ 7 ばく 06/8/23(水) 13:45 ┣Re(1):幼なじみ 7 名無し 06/8/24(木) 10:24 ┗幼なじみ 感想 夢追い虫 06/8/25(金) 1:56 ┗幼なじみ 8 夢追い虫 06/8/25(金) 1:57 ┗幼なじみ 9 夢追い虫 06/8/25(金) 1:59 ┗幼なじみ 10 夢追い虫 06/8/25(金) 2:22 ┗幼なじみ 11 夢追い虫 06/8/25(金) 2:48 ┗幼なじみ 12 夢追い虫 06/8/25(金) 3:32 ┗Re(1):幼なじみ 12 貴久 06/8/26(土) 12:38 ─────────────────────────────────────── ■題名 : 幼なじみ ■名前 : 夢追い虫 ■日付 : 06/8/23(水) 6:19 -------------------------------------------------------------------------
| 大手電気会社の下請企業に勤める父と一度も働きに出たことのない根っからの主婦をする母を持つ山上裕也と、父を早くに亡くし祖父母と母と四人で暮らす三島孝則通称ゆうくんとたっくんは幼稚園では有名な名コンビとして名だかかった。裕也は手に負えないやんちゃ坊主で他の子供のおもちゃを取って泣かしたかと思うとそのおもちゃにつまずき自分までも泣いている子供の中でも一段と子供を楽しんでいた。一方孝則はお絵かきが好きで裕也の隣で裕也の作る作品を絵にして楽しんでいた。裕也が他の子いじめると止める事が出来るのは孝則しか居らず、また泣きだした裕也をなだめる事が出来るもの孝則した居なかったため裕也は孝則を頼り、また友達の少なかった孝則もまた裕也から離れようとしない凸凹コンビが保母さんよ保護者の間でかなり話題になっていたのだ。 しかし、小学校に上がると区域が違う為、離れ離れになってしまい、次第に相手の存在を薄っすらとした記憶でしか残さなくなっていた。 |
| 小学校に上がると裕也は地元のサッカークラブに入り、毎日サッカーに明け暮れていた。学校から旅行にも、ボールを蹴れるスペースさえあればボールを足の上で転がしていた。その為か、裕也の所属するクラブは徐々に少年サッカー強豪チームとして名を連ね、県でも1、2を争うクラブチームに発展していき、裕也は学校ないでも少しは名の通った子であった。それによくしゃべり、子供っぽい顔立ちの裕也は仲間内からも好かれ、女子からの人気も高かった。 小学校6年生の夏休み明け、地元野球クラブに所属していた奴らが前回の練習試合の事を休み時間に話していたのだが、その中に聞き覚えのある名前が出てきた。裕也はその話にそっと耳をそばたてた 「この前のエースはやっぱ凄かったよな〜」 「あぁ。ピッチャー、4番のハーフだろ?」 「あいつ日本人らしいぜ?顔整ってるよなぁ〜名前は確か・・・み・・・」 「三島だろ?三島タカヨシかタケノリ言う。」 「それそれ!」 たっくん?たっくんだ!! そぉ言えば野球やってるって聞いてたっけ、へぇ〜すげーなー有名なんだ。 「あいつ−−−受験−−−−−よ?」 「そーなんや?−−−−−からな・・・・・」 ん?聞こえない・・・受験がどうとか・・・中学受験でもするのか? 野球で中学行くのか〜。お金があるといいな・・・。 裕也は中学受験にとても興味があった。なぜなら自分もサッカークラブのコーチからいい中学を紹介してやる!とパンフレットをもらったのだが、家にはお金そんなないから。と母、静子にたしなめられ仕方なくこのまま地域の中学校に上がっていくのをコーチがかなり残念がっていたからだ。 中学からいいとこ行けばサッカーももっと上手くなるんだろうな〜・・・ |
| 高校の入学式当日、裕也はいつものように昨日の夜気が張りすぎて眠れず、静子に車で中学校まで送ってもらっていた。 「あんた昨日10時に布団に入ってなんで寝坊なんかすんのよ!?何回起こしても起きなかったんだから!忘れもんない?」 食パンを生のままかじりながら裕也がミラー越しに答えた 「あぁ〜へむへなはった!・・ゴク・・眠れなかった!緊張したら寝れなかった。」 「バカ・・・あんたいつもそうなんだから・・・ハイ!着いたよ。忘れもんしないでよ」 「ぉう! 行ってきます!!」 裕也が講堂に入った瞬間突然上から何か降ってきた 「イテッ!」 頭を抱えながら見上げるとそこに拳を振り下ろしたスーツ姿の妙に似合わない男が裕也を見下ろしていた。 「名前!」 「は?」わけも分からず答えた後にまたげんこつを食らった。 「イッテェェ・・・!!」 「名前は!!!?」 「ッツ〜山上 山上裕也っす!」 「・・・7組!一番左!」 名簿らしきもので確認した後そう言うと俺の尻をその名簿で一発叩き、仁王立ちで校長の方を睨んでいた。 「イテェなぁ〜あいつ・・・てかオレ初日でいきなり遅刻はまずかったな・・・校長も話し出してるし・・・」 裕也は一番左端の列の後ろに立つ先生に小さくお辞儀をすると一発のげんこつをまた食らい、列の最後尾に並ばされた。その教師が「ベストは?」と聞かれ裕也が不思議そうな顔をしているとまたげんこつを食らわせ「バカやろう!学校指定のベストを着ろ!」と言われ慌てて裕也は自分の服を見ると制服の下に着なくてはいけないベストを着ていなかった。恐る恐る「・・・忘れました」と言うと隣の先生から借りベストを受け取ると「これを着ろ」と言い、ベストを俺の頭の上に載せると同時にもう一発げんこつをお見舞いしてきた。 ここは暴力学校か!? |
| 裕也の入った高校はサッカー会では少しは名の知れた公立高校で部費や学費が安価なのに部活動の盛んな高校として人気のある学校だった。 裕也のサッカーの実力をこよなく誇りに思っていたクラブチームのコーチがこの高校を紹介してくれたのだ。 「あの高校にはええ先生いっぱいおるで!サッカーの堀北先生は怖いけどな」 「あの筋モリが顧問やったらやべぇな〜」など一人でボソボソ言いながら「今日は最高の入学日和・・・」と飾り栄えのない話をする校長の話を右から左に聞き流しながら裕也は今日の部紹介の事を考えていた。 やっとサッカー部に入れるわ。と気持ちを高ぶらせていた。 裕也が進学した地元の中学は人が少なかったため部活が極端に少なく、バスケ部と野球部、テニス部とバレー部と二つ競技で一つの部としか成り立っておらず、サッカーに関しては多人数を要するため存在さえしなかった。 校長の長話が終わり、やっと部紹介へと題目が移り部活の主将たちが今までの盾やトロフィーなどの功績を手に続々と現れたので一年生からは「おぉ〜」とどよめきの声が響き渡った。 この高校は生徒の数か結構多くしかもそのほとんどが部活動目的でこの学校に来ているため部活の方も自分の部活によりいい選手を獲得するためにかなりのアピールをしてくるのである。この時初めて裕也はこの学校がサッカー以外も盛んな学校だっだ事を知り、ずっとサッカー一筋だった裕也でさえもラグビー部に少し興味をそそられる程部活のアピールは凄く心を打つものがあった。 |
| その日裕也は部活見学をし、先輩に「サッカー部入りますからヨロシクお願いします。」とさっそく自分を売っておいた。 夕食の時間に静子に「何組?先生は?サッカーはよさげ?」などの質問攻めにあい、答えるのが面倒になった裕也は今日もらったプリントを全部預けてテレビを見ていた「もぉまた・・・」と愚痴りながらも静子はプリントに目を通しながら連絡網のところで「明智さんとこから来て〜田辺さんとこね〜これアイウエオ順じゃないのねないのね分かりにくいわよね?・・・」と質問に近い独り言を言っていた。すると突然静子が歓声に近い嘆声を上げたので、何事かとばかりに耳を押さえながら振り返ると連絡網を指差しながら「たっくんいるじゃない?たっくん!幼稚園以来ね〜三島孝則くん。おな・・・」と同時だろう「たっくん同じクラスなの?」っと言いながら裕也が連絡網を静子の手からもぎ取り紙の上に目を走らせた。「あら〜気づかなかったの?出席番号ならあなたの次よ?」と静子の声がしたのが聞こえたが裕也はそれどころじゃなかった。確かに1年7組連絡網と書されたそれには右下の方に三島孝則と書いてあった。間違いなくたっくんである。裕也は何か背筋にすーっと水か垂れるような感情を受け、言葉が出なかった。 静子が「三島さんとこ電話しよ〜長いこと話してないわ〜確か裕也が小学校3、4年の時以来かしら〜」といいながら裕也の手中の紙から番号を電話に移そうとした時に 「やめて!」っと喉の奥の方が詰まったような声が出た。 静子は驚きながら「何よ?あんたにも後でたっくんとかわってもらうように言ったげるじゃない。」と静子が言葉を続ける前に 「やめて!・・・俺まだたっくんと話してないから!」と静子の子機電話に手をかけた。 |
| サッカー部の顧問は案の定講堂で裕也に突然げんこつをかましてきた男だった。名前は堀北。学校の中でも1、2を争う程の暴力教師で言葉で分からないやつはとりあえず殴るという性分らしい。部活中も堀北は自分の指導通り動かない生徒にとび蹴りやラリアットなんかもかまし、それが一年だろうがなんだろうがおかまいなし。 しかも裕也が困っていることはもう一つあり、学内で1、2を争う暴力教師の片割れが担任で野球部の顧問でもある南原なのだ。野球とサッカー、南と北ということもあり二人の仲は見るからに悪く、しかも裕也がサッカー部であることで担任南原からは目を付けられ、7組であることからサッカー部顧問堀北からも目を付けられ裕也が何か失敗を仕出かすと「担任の指導が行き届いていない」だの「顧問の教育がなってない」だのと罵られ肩身の狭い思いをしている。 しかし、クラスの中では一際目立ちたがりの裕也は風紀委員に立候補するなどクラスからはチビヤマというあだ名で人気があった。一方孝則も図書委員に立候補し、勉強も真面目にしていることから人望が厚く名前で呼ぶものは誰も居らず、みんな三島君と呼び頼りとされていた。 しかし裕也はまだ孝則と一言も話をしていなかった。一度話しかけようと近くを通りかかったのだがなぜか緊張してしまいそんまま通り過ぎてしまった。しかも出席番号が前後なのにも関わらず席が孝則が一番後ろに座り、裕也が前になってしまい。出席番号が近くても話す機会がほとんどなかった。そのため二人の間には妙な隙間風が流れお互いが変に意識し避けるようになってしまった。 |
| 部活にもようやく慣れだした頃毎日サッカーに明け暮れていた裕也は色恋には全く興味がなく、たまに部室に届く手紙はなぜか妙に憤りを感じ、読まずに捨ててしまうことも少なくなかった。一方で女子の間ではベビーフェイスでかわいい感じの裕也の人気は治まることはなくファンクラブが発足しているという。しかしどこにでもライバルはいるもので、野球一本の孝則にもファンクラブは当に存在しており、ポーカーフェイスの爽やかボーイの孝則の人気は先輩女子からの支持も多く獲得していた。「北のユウ、南のタカ」と女子はグループを作り、それでクラス内にも派閥が出来るほどであった。 そんな派閥を生んだもの自分のせいだと裕也はかなり落ち込み、何とか孝則と話す機会はないかと日々伺っていたそんなある日のこと、雨のため部活が中止になり、することのなくなった裕也は時間をもてあましたあまり図書室に本を読みに行くことにした。 自分で本を買ったことなどない。読む時間が惜しいとも思っていたし、お金も無駄に思えた。しかし現代国語の授業中に裕也は授業とは違う単元を読みふけっているところを先生に何度かしかられたことがある。現代国語では教科書に書かれている話全てに目を通すわけではなく、そこから教師が自分の好きな話や説明のしやすい話をピックアップして授業を進める方針だ。裕也はこの考えに否定的で現代国語は学ぶより慣れろだと思っていた。それこからたまにサッカーの出来ない時には母の読む文庫本に目を通すこともあった。 図書室に入るとそこには裕也と同じ考えを持つ学生たちで溢れていたため図書室で読むことは諦め、本を借りることにした。なんでも良かったのでとりあえず「特集」と全面的に押されている本を一冊取り 図書室の奥に位置する貸し出し所のまで行こうとするとその席には孝則が座っていた。 |
| 続き楽しみでーす!!! |
| すっげ‐楽しい!! |
| 読みやすいし楽しいっす♪ 続き書いてください。 |
| 楽しんでいただいているようで何より感謝です。ありがとうございます。 今分は目に余る長文となってしまい、一時不評との声もありましたが、 僕はどんな人間であるかを詳細に書きたかったのです。 あたなの身の回りの人間で「こんなヤツ居る。」って人を浮かばせるような情景描写で想像するよりか、僕の思い描いたものを皆さんに届けたいと思っています。 これからもよろしくおねがいします。 また感想待ってます。 |
| 裕也は極度の緊張状態に陥っていた。まさかこんなところで遭遇するとは思ってもいなかったからだ。 何故だ?なんであの席に孝則が? 裕也は脳をフルスロットルで回転させた。こんなに頭を回転させたのは中学時代の地元サッカーチームがあと一勝で県大会に進めるかという大会以来だ。 あの時は前半戦に相手チームがハーフライン辺りから蹴り上げたボールがキーパーの手をかすめ、超ミラクルシュートをかまされ、そこから何とか1点を奪い返せたものの、相手チームは1‐1の引き分け以上であれば県大会に出場出来るという条件と、こちらはこの試合に勝利しなくては県大会に出場できない条件下にあった。その為、相手チームはオフェンスを極端に減らし、ディフェンスを固めた2・3・5の形で完全防御姿勢で臨んできたのだ。チームの悪戦苦闘も虚しく前半戦は終了し、後半戦に向けチーム内でモチベーションを上げ、なんとしても1店を取りに行こう!と意気込んでいる最中にコーチが思わぬことを言い出した。 「うちもやつら同様2・3・5の形を取る!」 |
| チーム内からどよめきや反対の声が上がり意気込んでいたリーダーがコーチに血走った目を向けた。 「何故ですか?ここは勢いよくいかなくては!相手にはもう余裕が伺えるんですよ?」 リーダーがコーチに歩み寄るとコーチは水の蓋を開けそれを歩み寄るリーダーの頭に垂らしだした。 「冷静になれ!今俺たちが勢いよく攻め入っても相手の思う壺だ!5人壁を破るには最低4人は上げなくちゃならん。その時ディフェンスがガラ空きになってみろ。相手はそこを突いてゴールをまた狙ってくる。」 「何故ですか?相手はもう県大会に行けたも同然・・・」 「違う。確実に勝つためにはお前たちの冷静さを奪うことにある。点差が開きお前たちがより前へ進むことによりすきは多くなり、確実な勝利をモノに出来る。」 「そうか・・・」チーム内の人間は少しづつコーチの言っていることに納得しだした。しかし裕也はまだしがみついた。 「でもそれじゃぁ相手がかっちまいますよ!?」 「そこでだ。お前たちは相手に出来るだけ上がらせろ!お前たちは押さえに専念するんだ。初めのうち相手もそうそう簡単に上がってはこないだろう。しかし、終盤となると相手側のやつらも目の前に羊ちゃんが居れば確実に噛み付いてくる。その噛み付く瞬間にお前たちは羊の皮を脱ぎ捨てるんだ。実はすばしっこい狐でしたってとこだ。チャンスはそうそうにない。一度騙した相手を騙すことは出来ん。全力でオフェンスへと転換し、血相かいている狼たちの尻尾を巻いてやるんだ!」 コーチの力説の後の休憩室はとても白熱した試合を繰り広げている選手達の部屋とは思えないほどの静かで冷たい空気が流れていた。その静けさをリーダーがそっと払った。 「田島、鎌野、鈴木、保坂、山上、お前達に任せた。」 その時の緊張感と脳の回転速度はまさに今この状況に近かった。 |
| 右手に“天と地の狭間”という有名作家が書いたと思われる特集の本を持つ手が震えた。しかしここでつったっていては何も始まらない。 勇気を出しあそこまで行こう!そしたらなんとかなるだろう 自分にそう言い聞かせながら棒のような足を引きずりながら一歩づつカウンターへと近づいていく。 カウンターに座る孝則は椅子を横にしながら肘を着き本を読んでいる。 「・・・あの・・・これ借りたいんやけど。」 と自分の本に目を落としながら呟くと孝則の方も自分の本から目を離さずに 「学生証」 とだけ言い払った。 「そかそか・・・えぇ〜ガクセーショーは・・・あったあった!ハイ」 とやや変なテンションで学生証を差し出すと、読んでいた本をパタンと閉じそれをさっと取り素早い慣れた手つきで事務作業を終わらし 「二週間後の木曜日までです。延滞した場合はその倍の期間借り本できませんご注意ください。」 と言い残しまた自分の本を持ち上げそちらに目を向けた。 「はい。ありがとう」 と言ったものの事務的な反応だけをされたことに腹が立ち、本をぐっと引き寄せると足音も大きく図書室を後にした。 自分が緊張していたことにも、相手に何か優しい言葉をかけてもえるかもという期待にも、腹が立ち、本を自分のかばんの中にストンと投げ入れ適当な教室に入り教卓の上にほうり投げた。 「はぁ〜・・・ダル!」 |
| 今日でもう4週間になる。裕也はまだ期限を過ぎた図書の本を返しに来ていなかった。自分が当番の時以外の時間に返しに来てるのではと何度も確認したが依然として無返却リストに山上裕也の名前は虚しく残っていた。 「期限のことちゃんと言ったのにな〜・・・声ちっちゃかったかな。わからんと思ってちゃんと注意までしたのに聞きまちごうたんかな。」 自分のあの日の言葉を一字一句思い出しながら孝則は考えた。いつもなら学生証を出された後は本を渡すだけだが、裕也はカウンターの上に貼ってある張り紙に気づくまいと思いわざわざ二週間が期限だと伝えておいたはずだったのだがおかしい。忘れているのかまだ読み足りないのか。 お昼の放送かなんかで言うべきかな〜・・・ と本のリストと保管場所の点検をしながら考えているとふと裕也が借りたのと同じ本が目に留まった。 しかしまた渋い本を借りて行ったな〜あんな本知ってたことに驚きやな〜 図書室の奥のほうにあったその本は最近ではめずらしいノンフィクションであった。薬物中毒の男が癌を宣告され、薬物を絶ち写真家として新たな人生を歩もうとする上で薬物の後遺症やフラッシュバック、抗がん剤の副作用などと戦いながら小さな幸せを見つけていくという、孝則の好きな構成の本だ。 今日部活の後に教えたるか。 と裕也が借りた本を手に取り、図書室を後に部活へ向かった。 |
| 完全にあの時は冷静になれていなかった。 コーチの言葉を思い返したまでは良かったのだが今回はサッカーの様にはいかなかった。守りも攻めもしない相手であったからだろう。自分でも驚くほどテンパりあたふたしたのが目に見えた。 あの試合では右から上がってきた相手選手がフロントにオーバーを蹴り上げようとした瞬間に今だ!と思い裕也がヘッドでボールを奪いサイドから上がろうとした時鎌野と保坂が反対サイドを駆け上がるのが見えそこまでパスを投げ出した。保坂がボールをキープし鎌野がすかさずセンターに滑り込み田島が鎌野の後ろに着いた。敵が攻めてきたからとは言ってもまだ5人のディフェンスが居ることには変わりは無く保坂目掛けて二人の選手が突っ込んできた。一人をひらりとかわした保坂だが滑り込んできた選手に足を掬われボールがコロコロと転がりだした。その時猛スピードで鈴木が走り出してきたかと思うとセンターの鎌野にパスを上げた。繋げてはなるまいと一人の選手が鎌野の前に立ちはだかりヘディングを阻止しに来たのだがボールはその二人の頭上よりやや奥手に上がっていた。鎌野にピッタリ着いている選手は鎌野のせいで後ろに下がることができず、その着弾点に田島がさっと入りゴール目指して走り出した。前方にはまだ二人居る。一人が田島の前に立ちはだかる。一瞬空気が止まった次の瞬間田島のボールが相手の股をスルリと抜け出した。しかしそのボールはすり抜けたというよりかはまたの下に転げているように見えた。一瞬裕也はやられたかと思ったが相手がそのボールが後ろに出たと思い体をよじった瞬間田島がボールをさっと引き寄せくるりと反転し裕也にパスを繋げた。そのパスをしっかり受け止めると裕也は残りの一人に向かって走り出した。真っ向勝負しかない、田島はフットワークがあるが俺は直感で動くしかないと思い相手の行動にかけた。スライディングしてくるだろうかそれともフットワークで止めてくるだろうか、迷ったが相手の目だけを見続けた。分からない。もうすぐそこに敵が迫っている同時にそこにはゴールが。裕也はこいつを抜けばゴールを入れる自信があった。このキーパーの動きが前半でなんとなく読めた気がしていたからだ。しかしこいつを抜けるか・・・もう一か八かだ。裕也はボールをバックからさっと上げた。相手はスライディングはしてこなかった。このままでは抜けない!とっさに左足でボールを右に転がし小さい体でスルリと相手の腕の中を透り抜けそのままシュートした。 その時の事を思い出しフッと心が緩んだ。 |
| 続き楽しみに待ってます〜! |