「だったら、告白しちゃえばいいじゃない。」
「だ〜か〜ら〜、それができないんだから困ってるんだって、ママ〜〜」
「ホンっと、学生の恋って、くだらないわね。
そんなの悩んでるんだったら、違う男探して寝たほうが、ずっと時間の有効利用よ!!」
「うう・・・・。」
〜〜〜♪
〜〜♪〜〜〜♪〜〜
〜〜〜〜♪〜〜〜〜♪〜
踊る君を見て 恋が始まった
あなたの髪にふれ 私ができること
何だかわかった
〜〜♪〜〜〜〜♪〜〜〜〜
〜〜〜〜♪〜〜〜〜
〜♪〜〜〜〜
薄暗い店内で、globeのCan't Stop Fallin' In LoveがBGMとして流れている。
さっきから90年代の曲しか流れていない。
きっとママのチョイスで、ママが全盛期だったころの曲を流しているんだろう。
ショータには「過去のことなんか忘れて、次見つけなさい!!」的なことを言っているが、ママだって昔に浸っている。
きっとショータに言っていることは、ママも自分に言い聞かせるように言っているんじゃないか。
そう思ってしまったら、熱弁しているママの姿が可愛らしく見えた。
「ちょっと、拓斗。なに、あんた、人の顔見てニヤニヤ笑ってんのよ。
気色悪いわね〜〜。」
「いや、別に。ただの思い出し笑い。」
「大丈夫かね、この子は。ほら、ショータ!あんたも拓斗見習ってシャキっとしなさい!!」
「うーーー」
「駄目だわ、この子。しばらく放ってきましょう。
ところで、拓斗は最近なんかないの??」
踵を返すように、今度の標的は俺になったみたいだ。
「ないよ。俺は・・・。」
ジントニックをマドラーでカラカラとかき回す。
「あんた、前来た時も、なんにもないって言ってたけど。
学生なんだから、好きな人くらいはいるんじゃないの?」
すると、ショータがむくっと起き上がり
「ママ、こいつにその手の話振っても面白くないよ!
好きだった男にヤリ捨てされてから、恋愛恐怖症なんだって!!」
「ショータ、余計なこと言うな!!」
「あら、そんな面白そうな話題があったの!?なによ、聞かせてよ!」
ママが身を乗り出しながら、聞いてくる。
俺らはカウンター席に座っているのだが、あまりのママのハシャギぶりに他のお客さんもこちらを見ている。
「なんでもないよ。ただ、ショータが言ってるだけだから。」
それを聞いたショータは、はカウンターにうつ伏せになりながら
「恋愛恐怖症って言うけど、
ようするに、まだ前の人を忘れられないんでしょ・・・。」
と言って、眠りの世界に行ってしまった。
俺は、何も言えずに残ったジントニックを見つめた。
ママはそんな俺の表情を見ると、
「さ!今夜は久しぶりに拓斗が来てくれたんだから、歌うわよ〜〜。
ヒロキ、いつものあの曲いれてちょうだい!!」
と言って、話題をそらしてくれた。
結局、隣で寝てしまったショータを横目に、朝方までバーの人たちとカラオケなどで盛り上がってしまった。
翌朝5時、俺はショータをたたき起こして、店を後にした。
帰り道、ショータは
「なんで起こしてくれなかったんだよ〜〜。俺だけ除け者やんか〜〜。」
と、完全にふてくされていた。
でも、昨日 あれだけ喋って飲みつぶれたおかげで、どうやら少しは気が晴れたようだ。
「ママがまた遊びにおいで、だって。」
「あったりまえじゃん!!今度は、拓斗の話で盛り上がらなきゃな!!」
「俺の話はいいよ。。。」
すると、さっきまでヘラヘラしていたショータは急に
前を向いている俺の顔を覗いた。
「なー、まだ忘れられないのか・・・。あの人のこと。」
「・・・。なんだろうね・・・。こんなにも時間がたったのにな。」
「そんなに焦らなくていいんじゃね。ゆっくりさ。いい人、見つかるといいね。」
「そーだな。」
俺はまだタクシーしかいない朝方の静かな道路を見ながら、答えた。
すると、ショータは朝には似合わない大きい声で
「じゃあ、とりあえず腹減ったから、朝マック行こうぜ!!俺腹減ってしにそーー。」
相変わらず、テンションが読めない子だ。
そんなショータが、俺は好きなんだけど。
「お前って本当によく食うな〜〜〜(笑)」
と、いつもの調子で俺らはマックへと向かった。