Page 2962 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 通常モードに戻る ┃ INDEX ┃ ≪前へ │ 次へ≫ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ▼合鍵 夢追い虫 06/7/14(金) 23:53 ┗合鍵2 夢追い虫 06/7/15(土) 0:15 ┗合鍵3 夢追い虫 06/7/15(土) 0:53 ┗合鍵4 夢追い虫 06/7/15(土) 0:55 ┗合鍵5 夢追い虫 06/7/15(土) 1:18 ─────────────────────────────────────── ■題名 : 合鍵 ■名前 : 夢追い虫 ■日付 : 06/7/14(金) 23:53 -------------------------------------------------------------------------
| 夏から一人暮らしを始めた。 母と父が離婚したからだ。 母は実家に帰ったのだが、僕は大学に合格したこともあり、家庭環境が変わってしまった現実を俄かに受け止めることが出来なかったのだ。 この土地はいい。 依然住んでいた時よりかずっと田舎だが海と川と山に囲まれた長閑でとても自然に溢れていた。 時がゆっくり流れたいるようだ。 ボロアパートを借り、引越しもひと段落し「あぢぃ〜、あぢぃ〜」と言いながら扇風機に当たっていた時「よぉ〜終わったか?」っと明るい声が聞こえてきた。 僕「ゆう、おせぇよ!手伝いに来てくれって行ったやん!」 と、扇風機に顔を当てたままゆうに向かって軍手を投げつけた。 ゆう「あぁわりぃ忘れてた(笑)でもここ学校から遠いなぁ〜しかも超辺ぴなとこのアパート借りたんやな〜迷ったし」 と、扇風機を僕から奪い取り本棚に漫画を1から順に詰める作業を始めた。 ゆうとは大学で知り合った友達だが昔から知ってるような親近感がある。性格は忘れっぽいが仕事に関しては几帳面だ。自分の役割を果たさないと気が済まないのだという。 |
| ゆう「なんでこんなとこに引っ越そうと思ったん?」 晩御飯に素麺をすすりながら、地べたに置きっぱなしのテレビに目をやりゆうが聞いた。 僕「あ〜安かったし、なんか〜田舎のほうがいいやん?・・・なんか長閑で」 とバイト求人雑誌を開けながらおぼろげに返事した。 ゆう「親離婚したから安いとこしか借りれんかったんやろ〜?なんで離婚したん?」 ・・・ ゆうは偶に人の傷を抉るような質問をする。 僕「知らん・・・親に聞けよ!」 っと雑誌をバタンと閉じ、食器を台所に持ってゆきガチャガチャと洗物を始めた。 ・・・僕だって離婚した理由を知りたい・・・ 親は離婚の理由を何一つ僕に教えずに突然僕を奈落の底に突き落とした。涙も出なかった。怒りさえも・・・だた“愛されてなかったんだ”という感情に駆られる。そのことを思い出すたび・・・ 皿を洗っているうちにゆうには悪いことしたなぁ〜という罪悪感を感じた。 ゆうは静かにテレビを見ている。 さすがに触れてはいけないと分ったのか背中に生気を感じなかった。 僕「お〜ぃ!?りんご食べる?」 と聞いてみたが返事はない。 10分間の沈黙の間ガランとした部屋に食器の擦れる音と水が滝のようにしぶきを上げる音がテレビの音さえも凌ぐ勢いで鳴り響いていた。 食器洗いを終えゆうの顔を覗くとゆうは案の定眠っていた。 |
| ゆうを横にしタオルケットをかけた。 「ん〜あ〜ありがと〜ぉ」と寝ぼけ眼で感謝の言葉を発しまた寝息をたて眠りについた。 僕「何時から寝てたんだよ〜結局独り言言ってたって訳か僕(笑)」 とゆうの汗をかいた前髪をいじりながらまだ独り言を続けていた。その時ふっと「かわいい顔」だな〜と思った。 僕「お前は気付いてんのかね〜僕の気持ちに〜・・・大学入った時にすぐに好きになったんやで〜それにお前はぁ〜・・・」 |
| 大学に入った時だ。 僕は極端に人見知りで、高校でも友達が出来るのに半年はかかった程だった。 特に大学では一人ひとりの授業が違うので友達が出来るのに一年要するのは覚悟の上だった。 入学案内当日、緑の冊子を片手にアリーナに向かっていた僕、「アリーナアリーナ」と言いながら人の流れに合わせて歩いていた。その時目の前に大きな扉が見えてきた「あ!アリーナやなあれが。」といった瞬間、急に便に行きたくなった。 「やべ〜またかぁ〜」 僕はいつも緊張すると催すのだ。「トイレはこっち?あっち?」とぼそぼそと次は人の波に逆らいながらトイレへ駆け込むと案の定、定員オーバー・・・とその時「一年生の皆さんはすぐに会場アリーナに集合してください。」とマイク放送が流れてきた。「マジカヨ〜」と言いながら他の一年生がぞろぞろとトイレを後にしていく。しかし僕は「トイレに行かないと絶対に途中で冷や汗を目がうつろになって倒れる。間違いない。間違いない」とトイレの四つの扉のどれが開いてもすぐに入れるように扉を睨み付ける・・・しかし一向に開かない。 ・・・ヤバイ・・・ 一瞬、右端の扉にノックをしようかと思ったが「今時ノック?ナイナイ・・・」と思い直しまた待ち続ける。 ・・・出てこない・・・ 「もしや空?」そう思った僕だがトイレの下から足を覗くことはやっぱり出来ない。上からなんて盲等出来ない。 さぁ〜・・・どうするか・・・ あれこれ考えていたら左端のトイレの扉が開いた。 「やっと開いた!」と扉に入ろうとすると出てきた人が「紙ないで?」と一言 ・・・せっかくのチャンスが・・・ 「あ〜ありがとう」と言って残り三つの扉の前で待っていると 「てか他のトイレは全部故障って入り口に書いてたで?」とトイレから出てきた人が僕を見て手の水を切りながら言った。「ホンマに?」っと入り口に走るとその張り紙は下に落ち足型が山ほど付いていた。 「あぁ〜落ちた見たいやな〜下のトイレ行ったら?」 「・・・下のトイレか〜」 |
| 僕「スッキリした〜はぁ〜あ!え〜アリーナは・・・」 「なげ〜便所(笑)てかもうアリーナは入れないよ!」 僕「えぇ〜マジかよ〜・・・ん!?ってかさっきの便所の!?なにしてんすかここで?」 便所の洗面台に腰を下ろしてさっきの男がニヤニヤしている彼に驚きの目を僕は向けた。 「アリーナ入れないからサボろっかなーっと。後、君に教えに来ただけじゃまた今度学校で!」っと洗面台から降りた彼が尻をはたいて出て行こうとしていた彼に、 「あぁ僕もサボる!」 っと口走っていた。自分でも驚いた。しかし、彼の自由な雰囲気に引かれつい付いて行ってしまった。 これがゆうとの友情の始まりになった。 その後2人は自分のことを話した。 かなりの話をしたが、今覚えているのは宮本雄治という名前で“トイレで眠るくらい”自由なやつと言うことだけだ。 |