Page 1326 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 通常モードに戻る ┃ INDEX ┃ ≪前へ │ 次へ≫ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ▼俺が一番あこがれた人 一 玄 06/5/26(金) 0:27 ┣Re(1):俺が一番あこがれた人 一 香港人 06/5/26(金) 22:16 ┣俺が一番あこがれた人 二 玄 06/5/27(土) 14:02 ┃ ┗さいこ〜 シュン 06/5/27(土) 22:03 ┣俺が一番あこがれた人 三 玄 06/5/28(日) 4:43 ┣俺が一番あこがれた人 四 玄 06/5/30(火) 6:50 ┣俺が一番あこがれた人 五 玄 06/6/4(日) 3:20 ┗気になります アキト 06/6/9(金) 20:27 ─────────────────────────────────────── ■題名 : 俺が一番あこがれた人 一 ■名前 : 玄 ■日付 : 06/5/26(金) 0:27 -------------------------------------------------------------------------
| 高校生になってほぼ2ヶ月。一般的な高校では、そろそろ中間テストの時期だ。 高校初めての中間テスト、ということで俺は(普段真面目に勉強してないのに)妙に根性を出し、テスト期間のその日はいつもより一本早い電車で学校へ向かおうと思った。もちろん、教室で勉強する為だ。四月病みたいなもんだ。 自転車で最寄駅に着く。結構驚いたのは、一本電車を早めただけで、人がいつもより全然少ないということ。というよりほとんどいない。まあ、これなら確実に電車内で席に座れるから、良いんだけど・・・。 電車が止まる。扉が開く。人が乗る。扉が閉まる。電車が動く。 ・・・予想以上の人の少なさだった。マジで閑散としてる。この車両に乗ってる人、5人もいねーんじゃねーのって思うくらい。 とりあえず、扉に近い席に座る。鞄を開けて、教科書を開く。もちろん、テスト勉強しようという魂胆だ。学校の最寄り駅に着くまでの50分。 5分経過。・・・駄目だ、眠くなってきた。いかん、何の為に早い電車に乗ったんだ俺・・・。 そこで次の駅に着く。反対側のドアが開く。・・・誰も入ってこない。鳥の小さい鳴き声しか入ってこない。 その時点までで俺何故は気がつかなかったのか、反対側の座席に、制服から判断して同じ学校の人が、座りながら眠っていた。つけている赤いイヤフォンから、微かに、本当に微かに音が漏れている。 見るに、剣道部の人だろうか。傍に大きい道具袋のような荷物と、細長い布袋がおいてある(竹刀袋ってヤツ?)。あと、学年章の色を見るに、一つ上。先輩だ。 電車が動き出した。先輩と思しき人の体が少し揺れる。その振動が竹刀袋に伝わる。 ヤバイ!と小さく思ったのもつかの間、竹刀袋はあえなく『バターン!』と音をたてて倒れた。倒れた勢いでこっちに滑ってきた(人が少なくて本当に良かったと思う。周囲に人がいたらヒンシュクモノだ)。 その音でだろうか、その人は目覚めた。俺は竹刀袋を拾い上げて席を立って、『どうぞ』と差し出した。 『あ・・・ああ、ありがとう。どうもすみません』そういってその人は受け取った。そこで初めてちゃんと顔を見た。 カッコいい人だなと思った。 これが始まりだった。 二に続く。 |
| 期待しています!! |
| その日は何事もなく終えて家に帰り、次の日。 また俺は早い電車に乗った。あの先輩に会う為に!・・・という訳では残念ながら、ない。むしろこの時点ではやっぱり、早めに学校について勉強する為だったりする(よく一日目に嫌にならなかったな〜と思う。勉強、嫌いなのに) それにしても、朝早く出発するってのは、なかなか良いもんだ。家から駅までの一本道には全くと言って良いほど車がないから、自転車で道のド真ん中をカッ飛ばし放題だ。気持ち良過ぎる。 電車に乗って座った。ふと気づくと、また目の前にあの先輩が座ったまま眠っていた。昨日に同じく、赤いイヤフォンをつけていた。 見て思った事と言えば・・・今日は剣道道具持ってないなァとか、そんな事だ。まぁ考えてみれば当たり前の事だ、今はテスト期間中だから部活はないはずだし、昨日はただ単に学校に持っていっただけだったのかも知れない。 それにしても・・・と思う。普段の電車じゃあ見かけない人だけど、ということは毎日この電車で来てるんだろうか。それって結構・・・大変じゃない?と思う。時間にして現在、6時10分。いくら俺も早朝登校が気持ち良いと思ったとはいえ、毎日はちょっとキツイもんがある。 まあ、テスト期間が終われば、この人と顔を合わす回数もぐっと減るだろう、などということをぼんやりと考えていた。(ちなみに列車内での勉強は、数分と経たず眠くなることが判明したので昨日でやめた) そしてこの時も何事もなく学校に着いた。 問題は下校時。 俺は人間関係に関しては要領の良い方だ。入学して一ヶ月後には、クラスのほぼ全員とは仲良くなってたし、その中の真面目グループからチャラ系グループまで(それも男子女子問わず)色々と渡り歩きつつ、特定の何処かに属するということがなかった。他のクラスにもちらほら友人を作っていた。 しかしその中には何故か、帰り道が同じヤツがほとんどいなかった。学校の大抵の生徒は俺と反対方向の電車か、もしくは周辺に住んでるのだ。もちろんほんの数人、同じ方向に帰る奴らはいるんだけど・・・部活や何やらもあり、一緒に帰るという事は今までほとんどなかった(ちなみに俺はバスケ部)。 その日の放課後は、やっぱり性懲りもなく図書館で勉強していた・・・。といっても歴史だけは好きなので、勉強するのはそればっかだった。そしてあっという間に締め切り時刻に。 テスト期間ともなると、当然図書館の人は多いけど・・・締め切り時間が近くなると、さすがにまばらだった。俺は学校を出て駅に向かった。 ほどなく電車が来たので乗った。疲れた・・・。いくら歴史が好きだと言っても、やっぱり学問の一つとして扱うと疲れる。空席はないもんかとキョロキョロ探す。 一つだけ空いていた。扉近くの、2人用の席だ。既に1人が座っている。同じ制服だから同じ高校の人だ。テスト期間中だというのにどっか行ってたのか・・・。 声をかけてみた。 『あの、隣良いですか?』その人は顔をあげてこっちを見る。 『ああ、はい、どうぞ』と返答があった。・・・・・・・・・アレ・・・・・・? しばしお互いの間にただよう、マヌケな違和感。どっかで会ったような・・・でもどうでも良いような些細なことで、思い出さなければいけないって訳でもないけど思い出さなければ気持ち悪いっていう、あのすっきりしない感覚。 だけど、つけているイヤフォンのその色は。・・・あ、思い出した。 『——————あ・・・』向こうも思い出してくれたらしい。 2、3秒くらい見詰め合っていた。さらにマヌケな空気がただよう。俺は隣に座った。タイミングという点では完全に逃してたけど。 すると、向こうから話かけてくれた。 『昨日の朝は・・・ありがとう。すみませんでした』 『あっいえ・・・別に良いんですよあんなの』 正直、見た感じ無口なタイプだと思ってたので(いや、実際無口だったけど)、先輩の方から話かけてくれるとは思わなくて、びっくりした。 一度話しだすと俺は止まらない。駅までの50分間俺たちは話し続けた。というよりは、俺が話題を展開して、先輩に『うん』とか『そうだな』とか、基本的には相槌を促す感じに話して、たま〜に意見を求めたり。無口な人とコミュニケーションを取るにはこういう接し方がいい。 もっとも、この時点ではなんとなくだが、この人だったら二人尾で沈黙しててもあまり苦にはならなさそうだ、という感じがあった。独特の雰囲気があるのだ。 それは見た目も同様だ。落ち着いた目、整髪料とかつけてなさそうなベリーショートの黒髪、きっちり着た制服、手足のすらっとして背の高いスタイル・・・。あらゆる軟派なものを寄せ付けない硬派な雰囲気が、この人にはあった。思い返せば昨日の朝、剣道道具を従えていた姿も、実にキマっていた気がする。しかもよく見ると顔もカッコいい。今まで気付かなかったけど。 女にはモテなさそうだけど、男があこがれる男、って感じだ。ジャニーズ系とは対極のカッコよさっていうか。 先輩は名前を『陽原 修(ひのはら しゅう)』といった。名前までカッコいいんだなと思った。剣道部のキャプテンらしい。 三へ続く。 |
| 最高ですっ! なんか、僕と似てて(バスケ部とか、友達が固定されてないとか) 面白くなって楽しみになりました! 次も楽しみにしていますっ! |
| 早めに電車に乗るようになって、三日目。 我ながら、・・・よく続いているなと思う。繰り返すが俺は勉強が嫌いなのだ。けど、この日にもなると、電車に乗る理由は少しずつ変わっていた。『先輩に会えないかなぁ』と。ただし、正確に言うなら『勉強でわからないところ、教えてくれないかなぁ』だけど。 先輩の知り合いというのはさすがに俺もあまりいなかった。同じバスケ部の先輩にはよくしてもらっているけど、それ以外となるときっかけがあまりない。それに、やっぱり部活内の先輩後輩の関係だから、少し堅いところはあるし。その先輩とは言っても、バスケ部自体が弱小で人数が少ないから、先輩の数も10人ちょっとか・・・そんなもんだ(大体、各学年に10人超ほど)。 だから、帰る方向が同じという以外には何の接点も持たないという、部活内とかと比べるとある意味でとても自由なこの関係を、俺は面白いと感じていたのだと思う。 話がそれたが、やっぱり先輩は今日もいつもと同じ席にいた。ただし今日は眠っていない。本を読んでいる。教科書だろうか?ただ、イヤフォンは相変わらず・・・。もしかして何かを聞いてるんじゃなくて、耳栓だろうか。 俺は先輩に『おはようございます。修先輩』と挨拶をすると、先輩も俺に気付いて『ああ、おはよう』と返してくれた。 他に席が大量にあるにも関わらず、俺は修先輩の隣に座った。2人用の席だから、少し窮屈だったが。 『テスト勉強ですか?』『ああ、うん、・・・英語』そういって持っている教材を見せてくれた。ありえないくらいの書き込みの量。何だコレ。こんなもん、一年後の俺の手に負えるのか・・・?不安になってきた。 『・・・なんだ、英語は苦手か。・・・・・・ええと』先輩は無表情のまま言葉を詰まらせた。何だ?何を言いたいんだ? 『・・・・・・名前』先輩はボソッとつぶやいた。忘れてた。俺の名前言ってなかったっけ・・・。 『笹川 玄ですよ。ゲンって呼んで下さい。英語は・・・まあ、何とかなりそうです。それよりも・・・』 『俺、数学がすごい苦手なんですけど・・・修先輩の余裕があれば、いつか教えてもらえませんか?』思い切って聞いてみた。数学が苦手なのは本当だ。初歩的な問題は何とか分かるんだけど、応用問題から先がほとんどと言って良いほど分からない。 『・・・・・・数学か』先輩はあんまり感情を浮かべる事のない顔の上に、苦い表情を表した。・・・もしかして、先輩も苦手科目?そう思った時に返事が来た。 『俺、理系科目は一年で終わりにしたんだ。苦手だからな』ははぁ、そうですか。そりゃちょっと残念です。その後に『でも、』と間を置いて先輩が言った。 『テスト期間の放課後は、大体図書館のグループ学習室にいるから・・・困ったことがあれば来ると良い。理系の得意なやつもいるし、他にも色々教えられると思う』 『ほんとですか?ありがとうございます!もしかしたらずっとそこに居座っちゃうかも』そう言って俺はカラっと笑った。修先輩も・・・無表情だが、口元が笑った気がする。 同時に、先輩のテスト勉強がおろそかになってしまうんじゃないか・・・と思ったが、せっかく向こうから積極的に受け入れてくれたのだ、その言葉に甘えてみようと思った。 その後、メールアドレスを交換して、学校に着くまで話した。 授業中にふと考えることがあった。『(先輩の仲間って、どんな人だろう・・・?)』 類は友を呼ぶではないけど、さすがに全員修先輩みたいに無口だと、ちょっと俺も耐えられない気がするな・・・というのが一つ目の心配事項。 その仲間の中に俺と同じバスケ部の先輩がいたら、修先輩を含めて俺との関係がちょっと堅苦しくなっちゃうかも・・・というのが二つ目の心配事項。 まあ、それでも行かない手はないだろう。勉強を教えてもらいたいのは本当だし。 (あとちなみにいつの間に『修先輩』と下の名前で馴れ馴れしく呼ぶようになったのかというと、最初っから。だって『陽原先輩』って言うより遥かに言いやすいじゃないですか。それに、下の名前で呼んだ方が仲良くなれると思うし。クラスでも男子は全員、女子は数人、下の名前で呼んでた) 授業が終わり放課後になる。俺はゆっくりと荷物をまとめた後、先輩に【こんにちは。玄です。さっそくで申し訳ないんですけど、突入しても良いですか?(絵文字)】みたいなメール入れる。ほどなく返信がくる。 【グループ学習室3にいる】 ・・・・・・。たった一文のみ、あまりにも簡潔極まりない返事。まぁ、あの先輩らしーやと思った。思ったとたんに自然に苦笑が出た。俺は修先輩のいるグループ学習室3に向かった。 テスト期間中の図書館の空気は少し張り詰めている。だがそれは普通席(?)の話だ。グループ学習室はガラスや壁で隔てられている為、大きな声で話しても音が外に漏れにくいし、漏れたとしてもひどくこもった音になる。おかげで、中では結構騒ぐこともできる。扉をノックして、俺は中へ入った。 『こんにちはー・・・お邪魔しまーす』 中には修先輩と、3人の人がいた。・・・見覚えはない。バスケ部ではないってことか。一つ目の心配事項は解消された。 『よく来たな。座ってくれ』と修先輩は言って、手近な椅子に案内してくれた。 周りの人たちが『修ー早くー紹介ー!』みたいな事を言う。結構陽気な人もいるみたいだ。二つ目の心配事項も解消。 四へ続く。 |
| 『じゃあ、えーと・・・この子がさっき言った・・・・・・、・・・えーと・・・、・・・玄君。玄君な』 『おお〜』 ぱちぱちぱちぱち。何のためだか、意図のよく分からない拍手が入る。いや、それより修先輩、言葉に詰まったのってゼッタイ俺の苗字忘れたからでしょ・・・。 ま、良いけどね。 『で、玄君。あっちのチャラそうなのが、大羽 哲平。テッちゃんだ。で、その隣のチャラそうなのが綱島 正幸。ツナって呼んでやると良い』 『おい、チャラって何だよ、チャラって!』すかさず本人達から合いの手(?)が飛ぶ。 テッちゃん・・・改めテツ先輩は、底抜けに明るい人だ。ムードメーカー的存在で、爽やかな雰囲気の、茶髪のイケメン。ちょっと軽薄な雰囲気がするけど、そこがまた親しみやすそう。サッカー部所属らしい。言われてみればサッカー部っぽい(どうでも良いけど、あの修先輩が誰かを『ちゃん』の付いたあだ名で呼ぶのが笑えた)。 ツナ先輩はとにかくメチャクチャカッコいい!!ジャニーズに入っててもおかしくないくらい。しかも背も高い。髪はテツ先輩よりもちょっと暗い茶髪で、修先輩も所属する剣道部のエースらしい(キャプテンではない)。 この2人が揃うとそれだけで場が華やかになる。まさに盛り上げ役。 『それと、俺の隣のこいつが瀬田 慶時(よしとき)』 『よろしくね〜』 瀬田先輩(言いやすいので苗字呼び!)は、この4人の中では目立たない方だ。背はちょっと低めで、顔も割と平均的(どっちかというとカッコいいよりはカワイイ系)の、小動物的な感じの人。この中で修先輩と一番古い付き合いで、中学校からだそうだ。そういえば人畜無害な雰囲気が、修先輩とよく似てる気がする。 『ツナとテッちゃんが理系畑の人間だから、数学はもちろん生物も科学も教えて教えてもらうと良い』 『はい、ありがとうございます!』 早速俺は2人のいる方へ移動した。『じゃ、よろしくお願いします』『はいよ、数学担当は俺だから任せとけ!』テツ先輩が自分の胸を拳でトンと叩いた。それから俺はしばらくテツ先輩のお世話になった。 結果は・・・今まで出来なかったのが信じられないくらい、よく出来た。 『いやーすごいすごい。全然やれてんじゃん!頭良いんだなきっと』テツ先輩はそう言ってくれるがそんな事はない。単純に、テツ先輩の教え方が上手いのだ。現にそれまでの自分の数学の出来はクラスでもかなり下の方だったのだから。誰かがマンツーマンで見てくれると分かりやすいってことだろうか。 おかげで図書館の閉館まで一時間ほど時間が余った。 思うのは、この人達は、本当にテスト勉強をしているのだろうか?見たところ、雑談:勉強で2:1くらいの割合だ。余裕過ぎる。それとも普段から勉強しているから、焦る必要が無いんだろうか。多分そうだ。実際、失礼だが、テツ先輩なんてチャラそうで(本当にすいません)勉強なんて出来そうにないと思ったのに、ノートの内容といったらスゴイ。 最初は(先輩たちの勉強の時間を割いてまで教えてもらうなんて結構申し訳ないな〜)とか思ってたけど、そういう気も段々薄れてきた。 『つーかさぁ〜、ヒノが個人的に後輩の知り合い作るなんて、マジでビビったよな〜』とツナ先輩が言う。ヒノ?誰それ・・・? 『失礼だなお前はっホンット』と修先輩が返す。ああ、そうか。苗字が『ひのはら』ですもんね。そのままツナ先輩が俺に話しかけてきた。 『玄君だっけ?』『はい。あ、玄で良いですよ。呼び捨てで』 『ヒノからメールもらっただろー。スッゲェ無愛想なメールじゃなかった?ちょい見せて見せてー』 まあ、無愛想というかなんというか・・・簡潔ではありましたが。携帯の画面を開いて、表示して見せるとツナ先輩とテツ先輩が覗く。 『あれ、結構マトモなメールじゃね?』『そうだなー、ヒノにしては』 ・・・これでマトモなの?マジで?いや、別に、変なメールではないんだけど・・・とあえて口には出さなかったが。普段どんなメールしてんだ・・・?これに輪をかけて簡潔なのか。もしかして【3】の一文字だけとか。 あとは理科科目担当のツナ先輩にちょこっと生物教えてもらったりして・・・残りは雑談して、先輩達とメールアドレス交換してもらって、帰路についた。ツナ先輩とテツ先輩は周辺に1人暮らししてて、2人とは駅の前で別れた。修先輩と俺は同じ方向の電車だが、瀬田先輩も帰る方向が同じなようだ。 五へ続く。 |
| 電車が止まる。俺と修先輩と瀬田先輩の3人が乗る。 こっちの方面は比較的人が少ないカンジだが、さすがにこの時間(夕方)で3人座れるくらい少ないという訳じゃない。というよりそこそこに混んでいる。俺たちは電車内に立ったまま話をした。 『玄君はどこの駅で降りるの?』瀬戸先輩が俺に聞く。 『え、G駅ですけど・・・』『そうなの?俺たちD駅からなんだよ。結構近いよね』 D駅はG駅の隣駅で、遠いことは遠いが行こうと思えば自転車で行ける距離だ。まさかそんなに近かったとは・・・ 『先輩、中学校はどこなんです?一緒だったんですよね』 『Y中学校って・・・聞いたことないよね。県外の学校だし』 そーなの!?びっくりした。『県外だったんですか!?じゃあ今は・・・』 『今は、お互い1人暮らしだよ』と修先輩が答えた。そうだったのか・・・。もしかして下宿は一緒の部屋に住んでたりするのかと聞いた。 『いや、ごく近いけど別だよ。最初は同居も考えたけどな。時間さえあれば夕飯とか、一緒にどっちかの部屋で食うよ』 自分で言っててふと気付いた。そうだ、この2人は中学校から同じだったんだ。しかもずっとクラスが一緒だったらしいじゃないか。俺はなんとなく・・・修先輩の中学校時代の事が知りたくなった。 『先輩たちって、どーやって知り合ったんですか?』これはさっきから少し疑問に思ってた事だ。修先輩は寡黙だし、瀬田先輩も『友達作るぞー!』ってタイプでもないし。 二人はうーんと考え込む。考え込む。考え込む。・・・そんなに思い出せないか? それとも覚える必要すらないくらいに自然と仲良くなっていったんだろうか。もしそうなら・・・俺はそういう二人の関係を羨ましいと思った。友達はたくさんいる。親友もいるかもしれない。でも、波長が合うというのか・・・大親友と呼べる存在は多分俺には、いない。幼馴染とも呼べたはずのやつらは、ことごとくどっかへ引っ越していった。 その点、修先輩と瀬田先輩は、一見タイプの違う2人ではあるけど、互いに『大親友』といって全く差し支えないように思えた。この2人が一緒にいる時間に俺が接したのは未だ数時間にすら及ばないけど、そう思えてしまうのだ。 『・・・あ、思い出した』修先輩が無感情な声で言う。 『・・・数学か何だかの宿題忘れて・・・2人して教師に呼び出されたんじゃなかったか』 『ああー・・・そういえばそうかも』『マジっすか。あんまり名誉ある知り合い方じゃないっすねソレ』予想外の答えに俺は思わず吹き出した。 そんな事か。そりゃ、なかなか思い出せないのも分かる気がする。大体呼び出し食らうなんて不名誉、早々に忘れたいだろうに(ということは今俺は、余計な事を思い出させてしまったのか?) 『でもその時俺修のこと無口っていうよりはただの根暗だと思ってたよ』 ひどい!瀬田先輩ひどいよ!しかもニッコリ笑いながらしれっと言うのがまた恐ろしい。修先輩は少し苦い顔をした。 『でもそんなことなかったけどね。普通にやさしいやつだったし。慣れてきたら結構しゃべるようになったし』 まったく、さらっと毒舌を言ったり、かと思えば本人の前でほめたり、見かけによらず(?)瀬田先輩は意外に侮れない人だ。 『そーいやさ、バトルロワイヤルって知ってる?』瀬田先輩が俺に聞く。は?・・・何ですかいきなり?そりゃ知ってますけど。小説も映画も見たことあるし。 『国信慶時っていう、俺と同じ名前のヤツが出てたんだ。一番最初に死んじゃうんだけどさ。で、映画でそいつが死ぬシーンをよく修とふざけて「シュウヤー!」「ノブー!」とか言ってたよ』 うっ・・・。すみません、修先輩、笑うつもりはなかったんだけど・・・。 『じゃあ、テストが終わったら、学校帰りとか一度うちへ来てみませんか?自慢じゃないけど、そんなに狭くないですよ、俺んち』 『え、そんなの良いよ。家の人に悪いし』『良いですよ、気にしないで下さい』 テスト勉強のお礼もしたいし・・・ということで、誘ってみる。家が狭くないのは本当だ。父親は海外へ飛び回って営業マン、母親は雑誌編集者。めちゃめちゃ裕福ではないけど、それなりに余裕ある生活を俺はさせてもらっている(そんなに儲かるんだろうか、営業マンって、あるいは編集者って?)。さすがに学校からは遠い位置にあるので、学校周辺に住むテツ先輩とツナ先輩は呼んでも良いかどうか・・・。後で別にお礼をしよう。 『俺は土曜が部活空いてますよ。どーです?』都合の良い日にちを聞いてみる。 『俺も土曜は剣道はないな』『俺も大丈夫だよ。ありがとう』 ということで、テストの終わった来週の土曜日に決まった。そうだ、どうせ翌日は日曜日なんだから・・・ 『ついでに泊まっていったりしたらどうですか?うちは本当全然構わないですから』 『ええ?本当に良いの?』瀬田先輩が少し躊躇して聞く。『はい全然。ってゆーか、泊まってってください』 かくして来週の土曜日、2人はうちに泊まることになった。俺は、小さい頃によくやった『お泊り会』を待ち遠しむように、何故かワクワクした。 その土曜日が、俺にとって今までで最大のターニングポイントになる事を、当たり前だが誰も知りようがなかった。いやもしかしたら俺が感じた『ワクワク感』は、その前兆を感じていたのかもしれない。 |
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