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けやき物語1 you 16/8/27(土) 22:59

けやき物語16 大前昇の場合1. you 17/1/29(日) 15:59
Re(1):けやき物語16 大前昇の場合1. you 17/1/29(日) 16:13
Re(1):けやき物語16 大前昇の場合1. しん 17/2/9(木) 19:08
Re(1):けやき物語16 大前昇の場合1. しん 17/2/20(月) 21:01
Re(2):けやき物語16 大前昇の場合1. you 17/2/23(木) 19:29
けやき物語17 大前昇の場合2. you 17/3/5(日) 18:12
Re(1):けやき物語17 大前昇の場合2. you 17/3/5(日) 23:40
Re(2):けやき物語17 大前昇の場合2. ひろと 17/3/5(日) 23:53
Re(3):けやき物語17 大前昇の場合2. you 17/3/7(火) 0:26
けやき物語18 大前昇の場合3. you 17/3/6(月) 23:09
けやき物語19 大前昇の場合4. you 17/3/7(火) 0:24
Re(1):けやき物語19 大前昇の場合4. しん 17/3/7(火) 20:34
Re(1):けやき物語19 大前昇の場合4. じゅん 17/3/7(火) 22:44
Re(2):けやき物語19 大前昇の場合4. you 17/3/16(木) 22:31
Re(1):けやき物語19 大前昇の場合4. しん 17/3/30(木) 16:57
けやき物語20 大前昇の場合5. you 17/4/9(日) 20:51
Re(1):けやき物語20 大前昇の場合5. じゅん 17/4/10(月) 19:43
Re(1):けやき物語20 大前昇の場合5. ひろと 17/4/14(金) 5:57
Re(2):けやき物語20 大前昇の場合5. you 17/4/17(月) 23:51
Re(3):けやき物語20 大前昇の場合5. たけ 17/5/2(火) 15:33
Re(4):けやき物語20 大前昇の場合5. you 17/5/7(日) 18:21
けやき物語21 大前昇の場合6 you 17/5/7(日) 20:01
Re(1):けやき物語21 大前昇の場合6 じゅん 17/5/8(月) 12:32
Re(2):けやき物語21 大前昇の場合6 you 17/5/14(日) 18:05
Re(3):けやき物語21 大前昇の場合6 しん 17/7/23(日) 22:37
Re(1):けやき物語21 大前昇の場合6 まさむね 17/6/12(月) 19:58
Re(1):けやき物語21 大前昇の場合6 タカ 17/9/16(土) 17:08
けやき物語 続編 you 18/1/2(火) 22:15

けやき物語16 大前昇の場合1.
 you  - 17/1/29(日) 15:59 -
〜まもなく京都、京都でございます〜


車内にアナウンスが流れ、俺はそっと目を閉じた。

「せっかくなら京都に寄りたかったですね、大前さん」

通路側の席に座っている部下である新人社員の小東智子(こひがし ともこ)が話しかけてきた。

さっきまで寝ていたのか、ちょうどよくこのアナウンスで起きたらしく、身をのりだし俺を押し切ると窓から京都駅のホームを覗き込む。

新人にしては肝が据わっており、良い意味でたくましい後輩が下についてくれた。


「なつかしいな、、、。」


「そっか、大前さんて大学が京都だったんですよね。うらやましいな〜。
どうでした、京都での大学生活。」


「楽しかったよ、いろんな思い出があるけど。」


「なんかすごい気になるんですけど〜。今度教えてくださいよ。」


それ以上きかない小東の態度に改めて空気が読める奴だと感心する。


4年間、大学生活をおくった京都。


楽しかったことも、悲しかったことも全てここにつまっている。


特に就職が決まった4回生の夏に、試験勉強のために通っていた大学院の図書館で、院生であった2つ上の滝本孝太さんに一目ぼれし、ひょんなことから仲良くなり、
そして恋に落ちた。


俺が就職で東京にいったことで遠距離恋愛になったが、お互い東京にいったり京都にいったりとそれなりに楽しく恋人関係を続けていた。


しかし、東京にきて1年が過ぎたころ孝太さんが一回目の司法試験に失敗した。


運悪く仕事の繁忙期の重なってしまい、落ち込んでいる孝太さんを支えてあげられなかった。


それがきっかけに徐々に溝ができてしまい、


孝太さんから
「昇、別れてほしい。」
と一言だけ告げられた。


俺は別れたくなかったが、孝太さんを説得することができず、
結局きれいな形で別れることはできなかった。


だからなのか、今でも思い出してしまうし、


悪いことだと分かっていても孝太さんのことをネットで探してしまったこともある。


しかし、SNSも含め孝太さんの消息がわかる情報を得られなかった。


一度、お酒で酔った勢いでラインを送ったことがあるが、

それも既読になることはなかった。


ふと、窓から京都駅の改札を見る。


遠距離していたとき、
東京に帰る際はいつもホームまで見送っていてくれた孝太さんの姿がぼやけて見える。


新幹線が発車すると、ずっと手を振っていてくれた。


周りの人もいるから少し恥ずかしかったが、


嬉しかった。


俺は一度、頭をふるとブリーフケースのなかからノートPCを出した。

「小東、最後にもう一度プレゼンの確認しよう。」

「またですか。すぐに大阪つきますよ」

「念には念を!」

「分かりました、この勝負、絶対に負けられませんもんね!」


俺らは大阪に到着するまで、何百回も修正したスライドを確認しはじめた。


新大阪につくと在来線にのりかえ天満橋にたどりつく。


ここは、東京でいう丸の内のようなビジネス街である。

ビル風が強く、小東も俺も下を向きながら風に向かって歩き、ようやく目的のビルについた。


総合で受付にいくと40階のオフィスまでいくよう案内され、
小東とともに高層エレベーターに乗り込んだ。


「あ、、、大前さん、髪に落ち葉ついてる。」


小東の華奢な右手が俺の頭についている落ち葉を丁寧にはじく。


彼女がいつもつけているDavid Offの香水がふわっと漂う。


「あれ、小東。前髪切った?」


「え、気づきました?
誰に言われなかったのに。
さすがですね、大前さん。
ちょっと自分で切ったんですよ。。。変ですかね」

と、右手を前髪にあてがい上目で確認する。


「そんなことないよ、似合ってるよ。器用だな、小東は。」


「もー、そんなこと言って。後輩まで誑かすのやめてくださいよ」


「どういう意味だよ。」


「そういう意味です。
松田さんに聞きましたよ、大前さん、今までいろんな女性社員を勘違いさせてきたって。お前も気をつけろよって。」


「あのバカ、変な事を。」


ゲイの人は感性が女性的と言われているが、自分もこういうところなのかもしれない。


新しいバッグ・靴、髪型やネイルの変化、なんとなく気づいてしまい男女問わずにそれを指摘してしまう。


相手も喜んでくれるので、特に女性は。
良かれと思って声をかけていたが、同僚の松田いわく
「それは勘違いさせるもと。私に気があるんだと思っちゃうよ。
普通の男は気にしている女性じゃないと、そんな変化気づかないし、気づいたとしても言葉には出さない。
さらに言うと、お前が出先帰りに買ってくるお菓子は毎回オシャレなんだよ。
お前のお土産楽しみにしてるファンが多いんだとよ。
全くどこまでもあざとい男だよ。」と散々の言われようである。


「でも、勘違いしてきた女性社員の気持ち、なんとなくわかります。」

「え」


「悪口です」

上目使いで俺を覗き、すぐにドアに視線をそらした。

どんな大事な会議でも堂々としていて『緊張』という概念が存在しない、そんな彼女の頬が赤くなっている気がした。


何か言い返そうと思ったと同時に目的の40階にエレベーターがついた。


ドアが開くとそこにはクライアントの担当者が立っていた。


「ようこそお越しいただきました。はるばる東京から本当にありがとうございます。」


「とんでもありません、この度は貴重な機会を設けていただきありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。」


事務的な会話をすますと、さっそく会議室に招かれ、助役たちの前でプロジェクターにスライドを写しプレゼンを行った。


スライドの操作は小東に任せており、何度も二人で会議室にこもって練習をしたかいもあり、
途中でクライアントから質問がでても、俺の回答にあわせスライドを該当のものに的確に切り替えるなど、息はピッタリであった。


質疑応答も入れて1時間半ほどのプレゼンは無事に終了し、
新たな商品を契約してくれることで話がまとまった。


帰りの支度をしていると、担当者から良かったら会社を紹介させてほしいと言われ、会社案内をしてもらうことになった。


「なんか、就活生になった気分だな。」

「ちょっと、大前さん失礼ですよ。」

担当者の後につきながら言うと、小東に小声で怒られた。


「こちらが、総務部になっております。」

「随分と人がいらっしゃいますね」

「はい、人事から調達・企画まである部署でして、大所帯になっております。」

そうなんですかーと、当たり障りのない返答をし、近くにいる社員に会釈をした。


いくつかのセクションを案内され、

「最後に、こちらが当社のリーガル部門になります。」


やっとこれでお辞儀地獄も終わると、

特に社員の顔をみずに会釈した。


ふと、6席あるデスクの一人に目が留まり、俺は固まった。


後姿であるが、一瞬で分かった。


「ちょ、ちょっと、大前さん!」


小東の声もきかずに、自然と足がその人のデスクに向かう。


その人の真後ろにつく。
肩に手をかけて確認しようと思うが、なかなか手が出ない。


そうしているうちに、背後の気配に気づいたのが、その人が振り向いた。


「僕に御用ですか、、の、のぼる!!」


「孝太さん、、、、、、、」


二人のなかで時間が止まる。


何も変わらない孝太さんの綺麗な瞳を、ただただ見つめる。


すかさず、横に小東がよってきて、固まっている俺に声をかけた。


「お知合いですか、大前さん。」


「え、、、、あ、うん。えっと、、」


「大学の先輩・後輩です。久しぶりだね、元気だった?」


「あ、はい、、、元気だったかな。」


すると、孝太さんはくすっと昔と変わらない笑みをした。


「こ、、こちらで、働いてたんですね、孝太さん。」


「うん、司法試験受かって、この会社の法務担当でお世話になっているんだよ。」


「司法試験なんて、すごいですね。大前さんにも、こんな立派な先輩いらっしゃったんですね。」
と、明らかに俺の様子がおかしいのに気づいた小東が場の空気を和ませようと、
精一杯のフォローをする。


ふと、孝太さんの左手の薬指に光るものがついているのに気づいた。


「ご結婚されたんですか。」


「あ、そうなんだ。」

と、右手で指輪を触り、俺から視線をそらす。


「いつ、、、いつですか。」


「去年だよ。先月、子供も生まれたんだ。男の子。」


「それはおめでとうございます、お名前はなんて言うんですか」
すかさず、小東が茫然としている俺の隣で質問をする。


孝太さんは少し考えると、思い切ったように話した。


「しょうごって言います。日が昇るに、五口と書いて『昇吾』です。」


「え、、、。」


「あら、大前さんの名前と同じ漢字じゃないですか。」


「ほんとだ、気づかなかったな。奇遇ですね。」
小東にそういうものの、こちらに目配せをする孝太さん。


俺のなかで、


悲しいんだか


嬉しいんだか


悔しいんだか


よくわからない気持ちがぐるぐる回っており、


急に吐き気を催し、口に手をやった。


「昇、顔色悪いけど大丈夫?」


「だ、大丈夫です。


プレゼン終わって気が抜けてしまったみたいで。

担当者の方が待ってるんで、僕ら行きますね。」

「え、もういいんですか。」
と小東が確認する。


「そっか、じゃあ気を付けて。」


「はい。」


何か言いたいが、今の感情じゃとてもじゃないが空回りしてしまう。


しかし、
担当者のいるところに戻らないといけないのに、足が動かない。


孝太さんも何か言おうとしているが、
俺と一緒で言葉を選んでいるようだった。


このなんとも言えない微妙な空気に小東が感づいたのか、
立ち去ることができない俺に
「大前さん、お名刺お渡ししたらどうですか。」
と話しかけた。


「こんなところでお会いできたのも何かのご縁ですし、せっかくですから。」


「あ、そうだな。」


名刺入れを探そうとバッグをごそごそとすると、小東が俺の名刺をすっと、俺に渡した。
自分の名刺のほかに、俺の名刺も常に持ち歩いと言っていたのを思い出し、小東に心の中で感謝した。


「孝太さん、どうぞ。」


「ありがとう。これは俺の名刺。

また、落ち着いたら連絡するね。」


「わかりました。それでは、失礼します。


お体には気を付けてください。」


「、、、、昇もね」


その場を後にした。


一度、孝太さんのほうを振り向くと、
孝太さんはこちらに背をむけ、仕事をしていた。


帰りの新幹線、大阪から東京までの道のりが本当にあっという間だった。


小東は、明らかに態度がおかしかった孝太さんとの再会について何も聞かず、
ひたすらノートPCで今日の議事録を作っていた。


まもなく東京駅につこうとしたころ、
隣でバシッとPCを閉じる音が聞こえ、ビックリし小東のほうを向く。


「大前さん、東京駅の地下にエビスビールの直営店あるらしいんですけど、
一杯飲んでいきませんか?!」

きりっとした顔で俺の方を見つめる。


つくづく良い後輩をもったと、改めて感じた。


「よし!!商談もうまくいったし、驕りだ!ぱーーっとやるか!!」


「やったー!高いビールしこたま飲もっと。」


「おい。笑」


お互いに笑いながらホームに降り立つと、クライアントの役員の容姿をネタにしながら軽やかに改札に向かった。

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Re(1):けやき物語16 大前昇の場合1.
 you  - 17/1/29(日) 16:13 -
としおさん、ひろとさん、しんさん、りょうたさん、暖かいコメントありがとうございます。


みなさん、お待たせしました。
とうとう「図書館での恋」の大前昇の登場です。

構想を練りに練って書いたのでアップが遅くなった挙句、
1話がすごく長くなってしまいました。汗

今後どうなるんでしょうね。
どこで拓斗と昇が出会うか楽しみにしていてください。


・「図書館での恋」を知らない皆さんへ
大前昇とは僕が前に書いていた「図書館での恋」の主人公です。
お時間あるようでしたら、こちらも読んでいただけると嬉しいです。

【図書館での恋】
http://www.coolboys.jp/bbs/c-board.cgi?cmd=one;no=13683;id=love#13683


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Re(1):けやき物語16 大前昇の場合1.
 しん  - 17/2/9(木) 19:08 -
やったー!孝太と昇が再開ですね
ずーっと待っててよかった
続きも楽しみです、頑張ってください

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Re(1):けやき物語16 大前昇の場合1.
 しん  - 17/2/20(月) 21:01 -
続きが気になります

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Re(2):けやき物語16 大前昇の場合1.
 you  - 17/2/23(木) 19:29 -
しんさん

コメントありがとうございます。毎回励みになっています。
そして、アップできてなくてすみません。
この土日でアップできるようにがんばります(⌒‐⌒)

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けやき物語17 大前昇の場合2.
 you  - 17/3/5(日) 18:12 -
大阪で偶然孝太さんと会ってから、2週間がたっていた。

何度かもらった名刺のアドレスにメールを送ろうとしたが、毎回書き出しまで打っては削除することを繰り返していた。

いっそ、この名刺捨ててしまおうか。
名刺を見つめながらそんなことを考えていると、タイミングよくスマホが鳴る。

画面を見るとショータからのラインであった。
ショータは、大学のサークルでよく可愛がっていた後輩で、俺がゲイとは知らずに告白した強者である。
そのときは孝太さんと付き合っていたし、そもそもそういう目でショータも見ていなかったので、丁重にお断りした。
何かの縁かショータも東京に就職になり、大学の頃とかわらない先輩・後輩の仲でよく飲んでいる。

「昇さん、大変です。」
それだけのライン。

いつも物事を大げさに言う奴なので、驚くことなく『なんだよ』と返信すると、すぐに既読になり、やり取りが続く。

「拓斗に彼氏ができました!!」

『マジか!』

拓斗は、大学が違うもののショータと京都で仲良かったゲイ友達。
ショータが俺に告白し振られた後、二人きりで飲むのが気まずかったのか、ふらっと連れてきてそこから俺が卒業するまで、よく三人で飲んでいた。

彼もまた東京で働くことになったため、彼らが東京に来てからはちょくちょく三人で飲んでいる。

「今夜三丁目のいつもの店で尋問するんで、先輩もきませんか?」

『OK!仕事終わり次第向かう!』

「待ってます。」

週の中日だが、幸いにも今日は定時退社の日なので、すぐに出れそうだ。
逆にいうと残業が出来ないため、なんとしても定時までに仕事を終わらせないと明日の朝、早めに出勤することになってしまう。

時計を見ると16時過ぎをさしていた。

「あと二時間、本気出すか。」


【18時40分】
「小東、俺もう帰るけど大丈夫?」

「大丈夫です。私もこれ片づけたら帰ります。」
と、こちらも向かずに鬼の形相をしながら、キーボードを叩いている。

「、、、。
小東、張り切ってる時に限ってタイプの人いなかったりするから、あんまり期待するなよ。」

「えっ!
なんで今日合コンて分かったんですか!?」

「普段履かない花柄のスカート。
そして、いつもよりアイラインが濃い。」

「え!うそ!!
私今日化粧濃い!?」

スマホの画面で顔を確認する。

「冗談だよ」

「も〜〜、そうやって後輩からかって〜。」

「じゃあ、お先に。」
そういうと、パソコンの電源を切り、コートを着る。

「お疲れ様でした」と小東。

デスクを離れて数歩のところで、ふと思い出し振り返った。

「でもそのスカート、男受けはいいと思うよ!!」

小東は視線をパソコンの画面に向けたまま、左手でガッツポーズをして返事をした。

オフィスから出ると、地下通路を歩き「西新宿」駅から丸の内線に乗り込む。

あっという間に新宿三丁目駅につくと、いつも俺らが飲んでいる店に向かう。
金曜日に比べたら三丁目の街も空いているものの、相変わらずどこの店も客がそれなりに入っていた。

目的の店に着くと、もうすでにショータと拓斗が飲み始めていた。

「ごめん、遅れた。」

「むしろ、いつもより早くないですか?」
と驚いたように、ショータがいう。

「昇さん、ビールでいいですか?」
と、俺のコートを受け取り、ハンガーにかける拓斗。
このさりげない気づかい、ぜひショータにも見習ってもらいたいものだといつも感じる。
「うん、生で。」

直ぐにビールが来て、乾杯する。

ドンとグラスを置くとショータが
「で、拓斗、彼氏のことみんなに紹介しな!!」

「お前、初っ端からぶっこむな〜。
ま、俺もこんだけ浮いた話がなかった拓斗に彼氏ができたなんて正直驚いたから教えてよ。」

「二人ともそうやってからかって〜」

「からかってないって、素直に聞きたいだけ。」

「まあまあ拓斗さん、お酒入ってないと話せないこともあるかと思いますし」
と、ショータが拓斗のグラスに並々と赤ワインを注いだ。

「おい、ショータやめろよ!!」

俺はその光景を見て笑いながらマルゲリータをつまみ、ビールを一気に飲み干した。

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Re(1):けやき物語17 大前昇の場合2.
 you  - 17/3/5(日) 23:40 -
みなさん

ずっとアップできず、すみませんでした!
本当は今夜もう一話あげるはずが、タイムオーバーで間に合わず、、、。

自分で言うのもなんですが、このあとの展開が面白いので、近日中にアップできるよう頑張ります!!

you

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Re(2):けやき物語17 大前昇の場合2.
 ひろと  - 17/3/5(日) 23:53 -
楽しみに待っていました!
今回の話は、これからに繋がる序章という感じがありますね。
どんな展開になるのか、期待しています。

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けやき物語18 大前昇の場合3.
 you  - 17/3/6(月) 23:09 -
ショータが事あるごとに話をへし折ったものの、拓斗のこの数か月の出来事の報告が無事に終了し、二本目のボトルがなくなろうとしていた。


俺もショータも拓斗に対しお祝いの言葉を改めてかけると、少しの沈黙が続いた。

自分の話ばかりで申し訳なくなったのか、拓斗が

「昇さんは最近どうなんですか。僕以上に色恋沙汰ないイメージですけど。笑」
「たしかに〜。先輩、恋愛のセカンドバージンですもんね。」
と酔ったショータも参戦してきた。

「お前ら、あからさまに馬鹿にしやがって。」
俺は、持っていたワイングラスを置くと、少し間を置き、グラスを見つめながら口をあけた。


「実は、この前、孝太さんに会ったんだ。」

二人とも飲みかけのワインを吹き出しそうになり
「え!?」
「どうゆうことですか!!??」
同時に同じ反応をしたにが、少し笑えた。

「2週間前、大阪に出張にいったとき、
訪問先の会社で働いていたみたいで、偶然会ったんだ。」

「どこの会社ですか!?俺が今から殴りにいきますから!!」
「おい、よせよ。」
と宥める拓斗。
「だって、あいつ最低野郎じゃん!昇さんのこと、あんなフリ方して。
どんだけ昇さんが辛い思いしたか。」
お酒のせいもあるのか完全に頭に血が登っているショータに拓斗が水をのませ、落ち着かすと
「それで、孝太さんは元気でしたか?」

「うん、昔と変わってなかったよ。
結婚してたけど。」

「え」

「子供も生まれたらしい。」

「、、、そうですか。」


三人ともグラスのなかの赤ワインを眺め、また沈黙が続く。


「ごめん、なんかしらけさせちゃったな。」

「いいえ、そんなことないです。」

「なんか、酔い冷めちゃったな。。。」

「よし!!二軒目いきましょう!!」
と、急に席を立つショータ。

「だから、お前少し静かにしてろって」
と、腕を引っ張る拓斗。

「いや、ショータの言うとおりだ!二軒目いこうぜ!!」

「そうこなくっちゃ、先輩!!テキーラぶっこみましょ!!」

「おう!!」

やれやれと拓斗がスタッフを呼びお会計をすますと、店をあとにした。


店を出ると、二丁目のクラブに行こうとショータが持ち掛けたが、今日は平日のど真ん中、客も少ないに決まっているのでその要望を却下し、近くのHUBに入った。


店に入ると、尿意を催した俺と拓斗は席の確保をショータに任せ、トイレに向かった。


隣同士で小便器に向かう。

「昇さん、正直、今、孝太さんのことどう思ってます。」

視線を前に向けたまま拓斗が話しかけてきた。

「正直、、、、分からない。
もう会わないほうが良いとは思っていても、この二週間何度も連絡しようとしたし。
でも、会って何したいかって言われたら、正直分からない。」

同時に用を足し終えると、チャックを閉め、洗面台でこれまた隣同士で手を洗う。

「僕は、昇さんのことが大好きだから、」

「え」

鏡越しで拓斗の顔を見る。
「い、いや、そう意味じゃなくて。」
と珍しく焦る拓斗。

俺から目をそらすと、必死に手を洗いながら
「僕もショータも昇さんのこと、尊敬してるし、信頼してる。
だから、昇さんのどんな行動しても僕らは賛成するし、応援する。

、、、だから、ぜひ自分の想ったように動いてください。」

顔を上げ、鏡越しに俺をしっかりと見つめる拓斗。

「ありがと、拓斗。」
と、俺は拓斗の頭を撫でた。

「ちょっと、濡れた手で触らないでくださいよ!」
「あ、わりー。」
と笑って、互いに何かを誤魔化した。


フロアに戻ると奥の方でショータが手招きした。
「遅いよ〜二人とも!」
「わりーわりー。って、おい、これ何?」
テーブルの上には6つのショットグラスが置いてあった。

「何って、テキーラとウォッカですよ。
どっちがいいかな〜って悩んだ挙句、どっちも買っときました。」

「お前、馬鹿なの。」

「はい。今気づきました?」

「開き直るな。
ま、久しぶりだし、時にはいっか。」

「そうこなくちゃ!!
かんぱ〜〜〜い!!」

俺らは高々と杯を交わした。


一軒目でもかなり飲んでいたこともあり、
結局、頼んだ当の本人が酔いつぶれてしまい、ものの1時間ほどで店を出ることになった。

「おい、ショータしっかりしろよ」
肩を貸し、何とか歩いているショータは目を瞑りながら、むにゃむにゃとしか言わない。

「昇さん、ショータ任せちゃってすみません。」

「いつものことだから大丈夫。」

「大通りでタクシー捕まえますね」
と、俺とショータの荷物をもった拓斗が向きをかえ小走りで走ろうとしたとき、
運悪く路地から出てきた人ぶつかってしまった。

思いのほか勢いがあり、また俺らの荷物を持っていたため、拓斗はバランスを崩しその場に尻もちをついてしまった。

「すみません!!大丈夫ですか」
拓斗を倒した相手は、すぐさま拓斗に手を差し伸べる。


「だ、大丈夫です。」
と、尻をさすりながら自力で立ちあがった。


「こちらこそ、すみませんでし、、、、、、、、、た、たいき?」

今まで見たこともない驚きの表情を見せた拓斗は、そのまま固まってしまった。

「拓斗!拓斗!?」

「たいき、、、、。」

「まさかこんなとこで会えるなんて。
会いたかったよ。」

と、たいきと呼ばれるスーツ姿の青年は拓斗の両手を伸ばした。


拓斗は拒絶するように一歩下がり、
「な、なんで日本にいるの。」

たいきと呼ばれる男性の腕がピタリと止まった。

「日本の企業で働くことになって、先月帰ってきたんだ。
、、、ごめん、ずっと連絡しようと思ってたんだけど、拓斗の連絡先が変わってて。」


「、、、3年。3年も連絡したなかったら、そりゃかわるよ」
下を向きながら、拓斗が小声で言う。


二人の間で沈黙が続く。


「拓斗、言い訳になるかもしれないけど、連絡しなかったのは理由があるんだよ。」

「き、きたくない。
俺は3年間ずっとあなたのことを想ってた。」

「、、、ごめん」


俺は一体何が起きているのか全然理解できず、
道の真ん中で繰り広げているこの状況をかえようと二人に声をかけようとしたとき、
それまで寝ていたショータがむくりと目をあげた。

「あれ、もう家?」

「んなわけ、ないだろ。」

小声でつぶやくと、ショータは目を擦りながら前を向く。
「あれ、拓斗何してるの、、、、あ!!!」

ショータは青年が視界に入った瞬間、
俺の肩をはじき、ズカズカとその青年に詰め寄り、胸ぐらを掴んだ。
「おまえ!!何しに来た!!」


「お、おいショータ!」
俺と拓斗は同時に、ショータの腕をつかみ取り押さえた。

「失礼だろ!お前、何してんだよ!!」
「離してください!!こいつだけは許せない!!
拓斗がずっとどんな思いしてたか!!」

「ショータ、お願いやめて!」
拓斗も半ば叫ぶように、ショータの腕を掴む。
俺らが静止させようとしても、聞く耳持たず、青年に殴りかかろうとしている。

ふと、周りを見渡すと明らかに通行人からの視線が俺らに刺さっている。


それは咄嗟の出来事だった。


「いいかげんにしろ!!!」
俺は、暴れるショータにおもいっきしビンタをした。

人生初のビンタだった。

ビンタされた頬に手をやり、驚いた顔で俺を見つめるショータ。
同じく目を潤まし、驚いた顔で俺を見つめる拓斗。

そして何よりもビンタした張本人の俺が、右手の震えを感じながら一番放心していた。


その時、新宿三丁目のほんの片隅で時間が止まった。


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けやき物語19 大前昇の場合4.
 you  - 17/3/7(火) 0:24 -
「おはようございます、大前さん。聞いてくださいよ、昨日の合コンの話!」


相当昨日の合コンがうまくいったのか、朝から上機嫌の小東が俺のデスクに報告しに来た。

「小東、お願いだから大声で喋らないで。頭に響く。」

「どうしたんですか、二日酔いでも、、、って、大前さん、めっちゃ顔色悪いですよ。」

「今、お辞儀したら吐く自信あるわ。」

「どんだけ飲んだんですか、全く。」


昨晩、俺がショータをビンタした後のこと。


ショータが正気に戻り、自ら立ち上がると青年に向かい
「すみませんでした」と一言だけいって頭を下げた。

そして、俺らに
「昇さん、拓斗、帰りましょ」と言い、フラフラと大通りに向かって早足で立ち去った。


ふと我に返り、
「おい、ショータ!」
と俺と拓斗は同時にショータを小走りで追った。

走り出した途端、俺は
「拓斗、ショータは俺から面倒みるから、お前は戻って、あの人の、、、」

そこまで言って、初めて拓斗が泣いていることに気づいた。

「拓斗、、、、。お前、、。」

「止まらないで、昇さん。お願い。
立ち止まったら振り向いちゃいそうだから、、、お願い。」

涙を必死に拭きながら前を見て走る拓斗に、
俺は「分かった」とだけ言って、二人でショータを追った。


そのあと、三人で同じタクシーに乗ったが、一言も喋らず各々解散した。

今朝になり、グループラインが数回鳴ったが、開く気になれず、そのままにして出社した。


と、頬に冷たい刺激がした。
「つめてっ!!」

そこには、冷えたポカリを俺の頬に押し付けている小東が立っていた。
「高いですよ。」

「お前、わざわざ買いに行ってくれたの?」

「当り前じゃないですか。そんな状態で仕事されたら、後輩の私が困りますから。」

「さんきゅー」
ポカリを受け取ると、その場で半分ほど一気に飲んだ。

冷たいポカリが体中に落ちていくのがわかる。


「ふーーー、生き返った。」
「へんなところ、おやじ臭いんだから。」

「悪かったな。でも、助かったよ、ありがと。」

そうお礼を言った直後、
「おーーい、皆。ちょっと前に集まってくれ!!」
と部長の声が聞こえた。

俺は椅子から立ち上がり、オフィスの前方に小東とともに近寄った。

「なんかあんの、今日。」
「え、知らないんですか。隣の国際戦略課に新しい人が来るんですよ。
その紹介タイムだと思います。」

「この時期に来るって珍しいな。てか、よく知ってるな、小東。」
「同期の吉田に聞きました。かなり優秀な方で、ヘッドハンティングだって話ですよ。
しかも、イケメンて聞いてるから、楽しみです。」
背伸びしながら、前の方をみつめる小東。

「小東って、ホントにイケメンに弱いよな〜」
「あら、やきもちですか。」
「じゃねーよ。」
「なんだ。でも、確か大前さんと年が近いはずですよ。」

「へー」と興味がないように返したが、興味ありありである。
しかも、イケメンと聞いたら、なおさら。
俺は「小東のために」と強調して一番前に場所を陣取った。


「えー、本日付けで我が部の国際戦略課に新たな仲間が着任したので、皆さんに紹介します。それでは、こちらへどうぞ。」

部長がすぐ隣の部長室に向かって声をかけ、皆の注目が集まる中、そこから一人の男が現れた。

「やだ、イケメン」と小声で呟く小東に、まったくと思いながら俺も期待を込めてドアから出てきた男性の顔を見た。


そして、俺は目を疑った。


紺色のスーツに身をまとった青年はスタスタと歩き、俺の目の前に立ち止まった。

この時、俺は下心で一番前に来た自分を心の中で思いっきり責めた。


青年は全員に一度お辞儀すると、
「今日からこちらでお世話になります、遠坂大輝と申します。
以前は海外の商社で働いていて、久しぶりに日本に戻ってきました。
皆さんの役にたてるよう頑張りますので、どうぞよろしくお願いします。」
と言って、もう一度深々とお辞儀をした。


顔をあげると、驚いて硬直している俺と完全に目があった。


俺は、表情一つ変えずにこちらを見ている彼から視線を外せなかった。


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Re(3):けやき物語17 大前昇の場合2.
 you  - 17/3/7(火) 0:26 -
ひろとさん

いつも暖かいコメントありがとうございます。
本当に書く励みになってます。
これからも感想でもなんでもいいので、コメントくれると嬉しいです。

you

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Re(1):けやき物語19 大前昇の場合4.
 しん  - 17/3/7(火) 20:34 -
youさん、こんばんわー(^∇^)

続きありがとうございます。

まさかまさかの展開にハラハラドキドキしてます。

次回も楽しみにしてます(о´∀`о)

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Re(1):けやき物語19 大前昇の場合4.
 じゅん  - 17/3/7(火) 22:44 -
孝太さんが今後どうなるのか気になります
続きが早く読みたいです

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Re(2):けやき物語19 大前昇の場合4.
 you  - 17/3/16(木) 22:31 -
しんさん
じゅんさん

コメントありがとうございます!!ほんとに励みになります!
じゅんさんも気にされてますが、このあと、しっかり孝太さんも出てきますので。笑

今週末に一話アップできるように頑張ります!

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Re(1):けやき物語19 大前昇の場合4.
 しん  - 17/3/30(木) 16:57 -
続きが気になります

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けやき物語20 大前昇の場合5.
 you  - 17/4/9(日) 20:51 -
転入者の紹介タイムが終わり、各自が仕事に戻る。


「やっぱり、噂どおりのイケメンだったな〜。しかも高身長だし、なんか優しそうだし、
あんな人の下で働きたいな〜〜〜。」

流し目で俺を見ながら言う小東。

「、、、、。」

「大前さん?ちょっと聞いてます?」

「え?あ、ごめんごめん。」

「もう、まだ気持ち悪いんですか。」

「大丈夫、小東のポカリで復活してきたら。ただ、まだ少し残ってるけど。」

「この後、すぐに会議なんだからシャキッとしてくださいよ。」


会議に出席したものの全く頭に入らないまま、午前中が過ぎていった。


会議を終わりトイレに入り、鏡をみて驚愕した。
「顔色わっる。」


それが昨日の飲みすぎなのか、今朝の出来事なのかは定かではなかった。


偶然会った拓斗の元恋人と新宿のど真ん中であんな事になってしまい、さらに、その翌日にその元恋人「遠坂大輝」がうちの職場に仲間入りするなんて、誰が想像できるだろうか。

鏡を見ながら昨日から今日にかけての出来事を振り返っていると、より気持ち悪くなってきたので、バシャバシャと蛇口から出る水で勢いよく顔を洗った。

「よし!さっぱりした!!」

顔を洗い終えるを目を瞑ったまま、ケツポケットに手をやると

「あれ。、、、まさか。」


しまった、急いで家からでてきたので、ハンカチを持ってくるのを忘れてしまった。
さすがにスーツで拭くことはできないので、個室にいってトイレットペーパーで拭くことを決心し、瞼についた水滴を手で拭おうとしたときだった。


「これ、使ってください。」
と、隣から声が聞こえた。


だれもいないと思っていたトイレで急に声が聞こえ、ビクッとしながらも目を開けると、洗面台の隣に青いタオル地のハンカチが置いてあった。


「いや、悪いんで、大丈夫です」
と目を擦り、濡れた手をスーツで拭き、失礼ながらハンカチを持って隣にいるであろう人に渡そうとし、
目を疑った。


そこに立っていたのは、拓斗の元恋人であり、今日からうちの会社に転職してきた「遠坂大輝」であった。


「どうぞ、そのままじゃオフィス戻れないでしょうし。」

「す、、、すみません。じゃあ、遠慮なく。」

海外の柔軟剤だろうか、日本では嗅いだことのない匂いがする。


「ありがとございました。」
と、ハンカチを返そうとすると

「今日一日困るでしょうし、使ってください。」

「いや、でも、、、。」


今まで表情をひとつかえずに喋っていたのに、困ったように笑うと
「ロッカーにかえのハンカチあるんで、大丈夫です。」

「わかりました。ありがとうございます。」


沈黙が流れる。


昨日の謝罪をしてもいいものか、それとも触れないほうがいいのか、正直分からなかった。

すると、遠坂のほうから口火を切った。

「昨晩はすみませんでした。僕と拓斗のことなのに、巻き込んでしまって。」

「いや、謝るほうはこっちなんです。ショータが大変失礼なことをしまってすみません。

普段は友達想いでいいやつなんです、どうか許してやってください。」

営業のくせか、そういうと俺は頭を深く下げた。


「頭をあげてください。謝らないといけないのはこっちなんで。
むしろ、大前さんたちには感謝していますから。」
え、と顔を上げると、黒縁眼鏡を外した遠坂はまっすぐとした眼差しで続けた。


「拓斗にこんな良い先輩がいてよかったです。
さぞかし信頼していると思いますよ、大前さんのこと。もちろん、ショータさんのことも。


今は難しいかもしれませんが、僕も大前さんたちと仲良くなれたらうれしいです。


それじゃあ。」

そういうと颯爽とトイレから消えていった。


大人だ。
そう思った。

自分とたいして年がかわらないはずなのに、性格や態度、身だしなみ、そして端整な顔立ち、全てに大人の魅力があった。
これは拓斗も惚れるはずだ。


俺は、なんとも言えない感覚を味わいながら、自席に戻った。
「なんだかな〜」
とため息とともに独り言が出ていた。

「え、なんか言いました?」
パソコンから目を離さずに隣の小東が聞いてきた。

「いや、独り言。」

「めずらしい。
そういえば、先ほどA社からメールで提案書が届いていたので、確認おねがいします。」

「おっけ。」


受信ボックスを確認すると、確かにA社からメールがきていた。


しかし、その下には
『滝本孝太』
と差出人からメールが来ていた。

心臓が張り裂けそうなくらい緊張して、そのメールをクリックする。


「昇、この前はあまり話せずにごめんね。
元気そうで何よりだったよ。

来月、出張で横浜にいきます。
時間が合えば、ご飯でも。」


不幸は同じタイミングで重なるというが、これは不幸なのかなんなのか
この二日間で起きたことが衝撃的すぎて、俺の処理範囲を大幅に超えてしまい、ショート寸前であった。

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Re(1):けやき物語20 大前昇の場合5.
 じゅん  - 17/4/10(月) 19:43 -
待ってました
続きが楽しみです

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Re(1):けやき物語20 大前昇の場合5.
 ひろと  - 17/4/14(金) 5:57 -
待ってました!

思わぬ刺客の登場に、この先の展開が読めなくなりましたw
大前と滝本の関係も、このあとどうなるのか気になります。
既婚者になった滝本は、ますます魅力を増したのかな?

この話を読んでるとすごくムラムラするので、
つい掲示板でやれる人を探しちゃいますw

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Re(2):けやき物語20 大前昇の場合5.
 you  - 17/4/17(月) 23:51 -
じゅんさん
ひろとさん

コメントいつもありがとうございます!
描いてる自分でもこの後どうなるか分からないです笑

ぜひ引き続き楽しんでいただければ幸いです。

you

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Re(3):けやき物語20 大前昇の場合5.
 たけ  - 17/5/2(火) 15:33 -
もう書くのやめちゃったの?
すごく続きが気になるんです

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Re(4):けやき物語20 大前昇の場合5.
 you  - 17/5/7(日) 18:21 -
たけさん

コメントありがとうございます。
お待たせしてすみません。
今ちょうど執筆しようとしていたところなので、今夜には一話アップしたいと思います。

you

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けやき物語21 大前昇の場合6
 you  - 17/5/7(日) 20:01 -
「大前さん、今日、やけにオシャレじゃないですか。」
そう言いながら俺にコーヒーを渡した。

「え、いや普通だよ。なんで。」

「だって、そんな色のスーツ持ってなかったし、靴も新調したやつですよね、それ。」

「お前よく見てるな〜。先週末買ったんだよ。
冬物のスーツあんまり持ってなかったから。」


「ふ〜〜ん。でも、それだけじゃないですよね。
大前さんには珍しく、香水つけてる。。。。しかも、この匂い、、、David offじゃないですか」
小東は目を瞑って、わざとらしく鼻を動かした。


「完敗だよ。お前には。」


「で、今日は誰とディナーなんですか。」
腕を組みながら、俺に問いかけてくる。本当にどっちが上司で部下か分からない構図になっている。


「いや、たいした相手じゃないよ。」


いや、「たいした相手」である。


そう、今夜は孝太さんと渋谷で会う約束をしている。


先月、社内メールに連絡がきて、会おうか悩んだ挙句、結局会うことにした。
もちろん、会うと決めるには葛藤があり、ショータや拓斗にも相談した。
二人からは「昇さんが会いたいんだったら」と背中を押してくれたものの、一点だけ約束してほしいと言われた。


それは、


絶対に泊まらないこと。


もちろんと俺は言ったものの、どこかで期待していて、それをあっさり破ってしまうのであろう自分がいた。


【午後7時過ぎ】
新宿駅から山手線に乗り、渋谷駅につくと道玄坂に向かう。
相変わらず渋谷は若者が多く、華金のわりにスーツをきたリーマンは少なく感じた。

今夜のお店は、渋谷駅から10分ほど歩き繁華街から離れたところにあるスペインバル。
苦手な渋谷だったため、この一週間様々なところから情報を得て決めた店である。


ふと空を見上げると、渋谷のビルの間から満月が見えた。


「しっかりしろ、自分。」
ボソリと呟き、店を目指した。


集合の10分前に店につき、席に案内されるとすでに孝太さんがおり、こちらに向かって右手を挙げた。

グレーのスーツが彼をより知的に見せる。
そういえば、孝太さんのスーツ姿ってあんまり見たことなかったなと、昔の記憶が走馬灯のように頭の中で繰り広げられた。
「すみません、孝太さん。待ちました?」

「そんなことないよ。俺もさっききたところだよ。仕事お疲れ様」
ニコッと笑う孝太さん。

俺は何度も見たことのある顔なはずなのに、メニューに視線を落とし、気持ちを落ち着かせた。
「なに、飲みます?」

「とりあえず泡頼んでから、赤にしようか。肉料理だしね。」

「オッケーです。孝太さんと食事いくと決めるの早いから助かります。」

「昇が、かなり優柔不断だからね。」
と、またさっき見せた笑顔を俺に放った。


せっかくだからとシャンパンをボトルで頼むと、すぐにウエイターがボトルを持ってきて、二つのグラスに注いでくれた。

「じゃ、再会に乾杯。」

「かんぱーい」
コツンとグラスを交わすと、お互い一口飲んだ。


そして、二人の目の前に鉄板が置かれ、様々な種類の肉がその上に置かれた。
「うまそうですね!」

「うん。昇、センスあるお店ありがとね!」

「とんでもないです。」
と二人して好きな肉を各々皿によそった。


ふと、肉を切っている孝太さんの手を見ると、左手の薬指に指輪がなかった。

「あれ、孝太さん。指輪は。」

「あ、うん。。。。たまたま家に忘れてきちゃって。」

「そんな大事な物忘れますか、ドジだな〜。」
と笑って返したものの、
心のなかで、、、、マッチの火が付くような、なんとも言えない感覚を感じた。


窓から外を見ると、高層ビルの間から満月が何か言いたげ俺を見つめていた。


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Re(1):けやき物語21 大前昇の場合6
 じゅん  - 17/5/8(月) 12:32 -
やっぱり面白いです
これからの展開楽しみです

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Re(2):けやき物語21 大前昇の場合6
 you  - 17/5/14(日) 18:05 -
じゅんさん

いつもコメントありがとございます。
この後、どうなるか、、、僕自身、手が震えながらキーボード叩いてます。

you

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Re(1):けやき物語21 大前昇の場合6
 まさむね  - 17/6/12(月) 19:58 -
表現、ストーリーとも、素晴らしい秀作だと思います。
今後の展開が楽しみです。
(図書館での恋も面白かったです。)
youさんのペースでいいので、これからも頑張ってください!

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Re(3):けやき物語21 大前昇の場合6
 しん  - 17/7/23(日) 22:37 -
こんばんは〜

youさんのペースでいいので次の話楽しみにしています。

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Re(1):けやき物語21 大前昇の場合6
 タカ  - 17/9/16(土) 17:08 -
読んでてすごい面白いです
その後が気になり楽しみです
もう続きは書かれないのですか?

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けやき物語 続編
 you  - 18/1/2(火) 22:15 -
私が怠慢している間にツリーがだいぶ下がってしまったので、新しいものを作りました。
まだ読んでいる方がいましたら、どうぞ↓
www.coolboys.jp/bbs/c-board.cgi?cmd=one;no=15459;id=love#15459


you

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